峠でもしっかり開けて楽しめる新たなパニガーレ|DUCATI・Panigale V2S試乗記

“パニガーレ”=“ツナギを着てサーキットを攻めるバイク”。そう思っていたけれど、最近こんなウワサを耳にした。「新しいパニガーレはツーリングも楽しめるらしい……」それなら確かめるしかない、と編集部ヤマキが試乗会に参加。跨って、走ってみると新たなパニガーレに込められた。ドゥカティの“狙い”が見えてきた……

見た目はガチだが親しみやすい

ネイキッドばかり乗ってきた僕にとって、スーパースポーツは少し〝身構える〞存在だ。

特に「パニガーレ」と聞くと、ツナギに身を包んだ猛者たちがサーキットを全開で走らせている――そんなイメージがどうしても浮かぶ。しかし最近、「新型パニガーレは乗りやすくなった」という話を聞いた。ならば、自分の感覚で確かめたいと思い、試乗会に参加してきた。

まず跨ってみて最初に感じたのは、思ったよりも「自然」なポジションだったこと。ハンドルはやや高めで、ステップ位置も極端に窮屈ではない。見た目は〝いかにもサーキット向け〞なルックスだが、ポジションは意外と優しい。サーキットで20分×2本、全力で走ったあとも「もう限界!」というような疲労感はなく、これはツーリングを見据えた設計の表れだと感じた。

走り出してすぐ、さらに驚いたのがその軽快さ。180㎏を切るこの車体は、まさに「軽さは正義」を体現している。取り回しのしやすさに始まり、走行中も重さを感じる瞬間がない。コーナーでは「頑張って曲げる」という感覚はまるでなく、車体を傾ければ自然にインへと向かっていく。その素直さに「僕ってこんなに上手かったっけ?」と一瞬錯覚してしまうほどだった。

エンジンも、ただ穏やかというわけではない。スロットルを開けたぶん、僕には充分過ぎるくらいしっかり加速する。けれどそこに〝暴力性〞はない。「ハイパワーで怖くて開けられない」なんてことはなく、ワインディングでもしっかりとスロットルを開けて楽しめるだろう。

前モデルから-9.5㎏の新型エンジン
前モデルから17㎏軽くなっている新型パニガーレV2S。なかでもエンジンは-9.5㎏の軽量化を実現。また、出力を120psに抑え、低中回転域からしっかりとトルクが立ち上がる特性に。前モデルよりも扱いやすくツーリストにもフレンドリーな仕様に仕上がっている

ツーリングにおいて外せない快適性という観点からは、熱対策も特筆すべきポイントだ。大変失礼ながら「ドゥカティ=夏場は地獄!」という先入観を持っていた僕。試乗会当日の気温は30℃を超えていたが、走行を終えてみて、「足元が熱い!」という感覚はまったくなかった。サイドカウルにベンチレーションダクトが設けられ、走行風をライダーに当てて熱さを軽減する構造になっているとのこと。夏場でもこれなら心強い。

新たなパニガーレは“熱くない”!
排熱ガイドとベンチレーション・ダクトにより熱の不快感を大幅に軽減。ハイマウントのハンドルや形状を工夫したタンクが自然なライディングポジションを生んでいる。837㎜のシート高も数値ほど高く感じず、街乗りやツーリングでも快適に乗れそうだ

SSに不慣れな僕からすると、乗る前はちょっぴり不安さえ感じていた新型パニガーレV2Sの試乗会。乗ってみてその印象はひっくり返ったのだが、それでも、ここまで軽快で扱いやすいのには正直驚いた。

パニガーレV2Sは、スポーツ走行を気軽に楽しみたい人や、ワインディング主体のライダーが「いつかサーキットも」と思ったときにも応えてくれる、そんな懐の深い1台だった。そんなSSを探している人に、ぜひ一度体感してみてほしい。

見やすく使いやすいハンドル周りとディスプレイ
5インチのフルTFTメーターパネルを採用し視認性もバッチリ。ティスプレイの表示形式は3種類から選べる。スイッチ周りはシンプルで直感的に操作が可能。クルーズコントロール、ライドモード、グリップヒーターの操作が手元で行なえる

ツーリングを楽しく快適にする足周り
オーリンズ製サスは荒れた路面でも快適な乗り心地を提供し、DQS(ドゥカティ・クイック・シフト)2.0は、クラッチ操作なしでスムーズな変速が可能だ。ワインディングや長距離ツーリングでも疲れにくく、操る楽しさを引き出してくれる

Panigale V2 S

価格:240万8000円~
エンジン:水冷4st.V型2気筒 890㏄
最高出力:120ps/10750rpm
最大トルク:9.5㎏-m/8250rpm
車重 : 177.6㎏(燃料90%搭載時)
シート高:837㎜
燃料タンク容量:15L
タイヤサイズ:F=120/70 ZR17 R=190/55 ZR17

Panigale V2 S ツーリング仕様

パニガーレV2Sはクルーズコントロール、ターン・バイ・ターン・ナビゲーション、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)、USBポートといったさまざまなエレクトロニクスアクセサリーを用意。タンクバッグやスライダーと合わせてツーリングの快適性・安全性を向上させる

Multistrada V2 S 

価格:230万7000円~
エンジン:水冷4st.V型2気筒 890㏄
最高出力:115.6ps/10750rpm
最大トルク:9.4kg-m/8250rpm
車重:202㎏(燃料90%搭載時)
シート高:830-850㎜
燃料タンク容量:19L
タイヤサイズ:F=120/70 ZR19 R=170/60 ZR17

こいつも乗ってみた!
試乗会ではパニガーレV2Sと同型エンジンを搭載したムルティストラーダV2Sにも試乗。ハンドリングは軽快だったが、コーナー、直線での安定感はしっかりあり、長距離ツーリング、ワインディングを存分に楽しめる予感がした

この記事を書いた人

編集部 ヤマキ
ワインディングが大好きでよく走りに行くのは伊豆・箱根エリア。いままで所有してきたバイクはネイキッドばかりでSSはちょっと不慣れ。最近はサーキット走行にも興味アリ

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