ツーリングに合ったエンジンオイルを選ぶ

用品店などでは数多くのエンジンオイルが並んでいるのを目にするが、正直、どのオイルを使ったらいいのか分からないライダーは少なくないだろう。しかし、ツーリングに向いているオイルというものは存在する。ここではその見つけ方と、旅にベストマッチなエンジンオイルをご紹介

文/淺倉恵介、編集部 取材協力/ジェイシーディプロダクツ
http://www.jcd-products.com/

ベストな旅オイルの条件は劣化のしづらさ!

バイクのコンディションとエンジンオイルが切っても切れない関係なのは誰もがご存じだろう。純正オイルを入れておけば、まず間違いない。だが、ツーリングに有効なエンジンオイルがあるなら、試したくはならないだろうか?

そもそもエンジンオイルの役割は、エンジンが本来持つ性能を発揮させることと、エンジンを保護しトラブルから守ることだが、劣化が進むとその役割を十分に果たせなくなる。そして悲しいことにオイルの劣化は避けられない。

エンジンオイルは走った分だけ劣化する!

放っておいても水分が混入
エンジンオイルは、水分が混ざると性能が落ちる。トラブルにより外部から水分が侵入する場合もあるが、正常に動いていてもエンジン内部には水分が発生する。エンジンは稼働中に何百度という高温になり、停止中は外気温近くまで温度が下がる。その温度変化により、内部で結露が発生するからだ。水分の混入が酷いと、オイルが乳化し固まってしまう

走ると未燃焼ガスで薄まる
バイクに搭載されるレシプロエンジンは、ガソリンを燃やして動いている。だが、どうしても燃えきれないガソリンが発生し、これを未燃焼ガスと呼ぶ。未燃焼ガスはピストンとシリンダーの間をすり抜け、エンジンオイルに混入することがあり、エンジンオイルを希釈してしまう。薄まったエンジンオイルは粘度が低下するため、潤滑性や密閉性を損なうのだ

スラッジの発生で性能が低下
エンジンオイルの担う役割のひとつに、エンジン内の洗浄がある。ガソリンの燃焼によって生まれるカーボンや、部品が擦れ合って出る金属片。エンジンオイルの成分が変化したものなどが主な原因となり、“スラッジ”と呼ばれる汚れが発生する。内部に余計な汚れを残さないための洗浄効果だが、スラッジを取り込むとエンジンオイルが汚れ劣化が進む

エンジンオイルの劣化度合いは、使用状態や保管時の環境、バイクの車種によって異なるので、普遍的な交換サイクルを示すのは難しい。ただし、完調が保たれている現代のバイクに、信頼のおけるメーカー製のエンジンオイルを使用すれば、概ね5千㎞毎に交換しておけば、問題が起きることはほとんどないと考えていいだろう。ただし、バイクが不調であったり、改造車や旧車の場合はその限りではないので、信頼のおけるプロと相談しよう。なんにせよ、エンジンオイルは新鮮であるほど、バイクには良いと考えて間違いない。

劣化すると起きる症状として挙げられるのは、主にシフトフィーリングの悪化や、パワーダウンといった不具合だ。ツーリング中にこれらの現象が起きれば万全の状態で走りや景色を楽しめなくなってしまうだろう。

エンジンオイルが劣化すると……

①エンジン保護性能の低下
②パワーフィーリングの悪化
③パワー&トルクの低下
④シフトフィーリングの悪化

etc…

そうならないためにも、こまめなオイル交換を行うことは大前提だが、交換することに縛られて旅の予定を先送りにしていては本末転倒だ。そんな時は〝劣化しづらい〞オイルを選ぶのもひとつの手。

劣化しづらいオイルの筆頭条件として挙げられるのが、オイル劣化の原因となる「ポリマー」が使われていないこと。ポリマーが使われていないオイルには長い寿命も期待できる。

劣化しないエンジンオイルはないが“劣化しにくい”エンジンオイルはある!

エンジンオイルが劣化した時、大きな問題のひとつが『粘度』の低下。粘度とは液体の粘り気や流れにくさの度合いを数値化したもの。簡単に言えば、新品のエンジンオイルは必要な粘り気があり、劣化するとサラサラと流れやすくなる。エンジン本来の性能を発揮させ壊さず稼働させるためには、エンジンオイルの適正な粘度が必要なのだ。エンジンオイルはベースとなるオイルに、様々な添加剤を配合して作られるが、粘度を高めるために『ポリマー』と呼ばれる添加物が使われることがある。ポリマーは安価に粘度を向上させることが可能だが、一旦高熱にさらされると“せん断”という現象を起こし、粘度を維持できなくなり、温度が下がっても粘度は回復しない。つまり寿命が短い。逆に、ポリマーを使用していないエンジンオイルは、より長く粘度を維持できる長寿命が期待できるエンジンオイルだということ。今後、成分に着目するのも面白い

必要十分な性能と、コスパを満たしたオイルとして挙げられるのがA.S.Hが展開しているMOTO SPECシリーズのPSEとVSEグレードだ。ノンポリマーなので劣化しにくく、長い距離を走るツーリングライダーにはピッタリのオイル。

快適に旅を楽しむためにも、こまめにエンジンオイルを変えることと、なるべくロングライフのオイルを使うことが、ツーリングライダーとしての最適解といえる。

ロングツーリング前にはエンジンオイルを交換しよう

ロングツーリングを計画し、走行距離がルートの半ばでエンジンオイルの交換サイクルに達してしまうとする。そんな時は、迷わず出かける前に交換してしまおう。ツーリング中にエンジンオイル交換を行うのは時間の無駄だし、都合よく交換可能な環境が揃うとも限らない。なによりエンジンオイルは、新鮮であるほど状態がいいので、快適に走りを楽しめる

A.S.H.のエンジンオイルはノンポリマー!

VSE MOTO-SPEC
10W-40,10W-50
参考価格 :3234円/1L

高性能ベースオイルの代名詞であるポリアルファオレフィンとエステル、VHVI を配合したノンポリマー100%化学合成油。高い油膜保持性能を有しながら、コストパフォーマンスにも優れる。走りにこだわるツーリングライダーなら、一度使用したいエンジンオイル

PSE MOTO-SPEC
10W-40,10W-50
参考価格 :2739円/1L

A.S.H.のバイク用エンジンオイルのスタンダードグレード。高性能ベースオイルとして知られるエステルと鉱物油を配合。日常使用やツーリングといった用途に気軽に使えるリーズナブルな価格ながら、スポーツ走行までカバーする高性能 とワイドレンジがポイント

今回、エンジンオイルに関するアドバイスをもらったのが、高性能オイルブランド“A.S.H.”を展開するジェイシーディプロダクツの代表、岸野修さん(右)と、同社スタッフの岸野鉄平さん(左)。お二人とも、オイルの専門家だ

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