
元ワークスライダーが今も走り続ける理由|【バイク日和・76歳ライダー荘利光】
76歳にして現役ライダーの荘利光さん。ワークスライダーとして輝かしい戦歴を持ちながら、今も林道ツーリングに情熱を注ぐそのバイク人生に迫ります
好々爺然とした雰囲気だが熱い走りは健在
雨が降ろうが雪が降ろうが毎月のようにツーリングに出かける荘利光さんは、1949年生まれの御年76歳。押しも押されもしない後期高齢者である。縁側で日向ぼっこしながらお茶をすする……そんな過ごし方が似合うお年頃なのだが、荘さんは精力的にバイクにかかわる生活を送っている。

MCFAJ主催のレースでは毎回サーキットに顔を出すし、5、6年前まではアマチュアレースにも参戦していた。ここ数年はすっかり林道ツーリングにはまり、自らが立ち上げたSRT荘レーシングチームのチームメンバーや、盟友でもある忠さんこと鈴木忠男氏や西山俊樹氏らと毎月のように関東周辺の林道を走り回っている。とはいえ、さすがに冬はツーリングしないのだろうと尋ねてみたら、「いやぁ、冬も関係なくツーリングに行ってますよ。雪道でなかなかうまく進めないなんてときもあるけど、みんなで協力して走破しちゃったよ」と目を細めながらそう語る。
現在の愛車はヤマハセロー250とホンダXLR125改。どちらも林道走行に適した仕様になっている。
ツーリングで無茶な走り方をすることはないが、それでも一般のライダーに比べ安定して速い。そんな姿からは76歳とはとても思えない。60年以上ものライディング経験と、それに基づいた確かな技術がツーリングにもしっかりと生かされているのだ。

荘利光さんがバイクに乗り始めたのは16歳のとき。免許取得後にホンダCB450を手に入れ、仲間とツーリングを楽しんだりしていた。同時に北野元氏が率いるチーム北野に所属し、カワサキF21などでモトクロス競技に参戦。4年ほどモトクロスを続けたがケガのため競技を離れた。
「16歳からモトクロスを始めて、チーム北野で本格的にレース参戦を開始して、結果も出せるようになっていたんだけど、練習中の転倒で腰を強打しちゃってね、それでモトクロスをやめたんだ」
だがレースへの情熱が冷めたわけではなかった。1972年からロードレースへ転向し、チーム北野、スポーツライダースから参戦を開始した。マシンはヤマハTR3。エンジンのかけ方もよく分からないまま筑波のレースに参戦。初のロードレースだったにもかかわらず2位以下を周回遅れにするというブッチギリで優勝したのである。しかもラップタイムは当時のセニア(国際A級)と同等だった。その後、富士スピードウェイで開催されたヤマハフェスティバルにおいても優勝し、その驚異的な速さから異例の3階級特進でその年のうちにノービスからセニアへと昇格してしまったのである。そして11月に行われた富士での最終戦でも優勝し、小嶋松久氏ら居合わせたスズキの関係者から声がかかり、翌73年からスズキのワークスライダーとなった。

荘利光さん
1949年、東京生まれ。16歳でバイクに乗り始め、その後はモトクロスにのめり込む。72年にロードレースに転向。出場するレースすべてに優勝し、74年以後、スズキ、モリワキ、ホンダの契約ライダーとして活躍した