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【KTM 390DUKE/TRIUMPH SCRAMBLER 400X/SPEED 400】 外車400㏄ クラス群雄割拠の時代

【左:中野真矢】
全日本GP250チャンピオンを経て、WGP250、WGP500、MotoGP、SBKで活躍。ライフスタイルブランド56design代表。本誌メインテスター
【右:原田哲也】
参戦1年目の1993年にWGP250王者となり、その後もWGP500で活躍。現在はスクールやレース解説などで活動。本誌エグゼク ティブアドバイザー

外車400ccの世界を切り開いたKTMの390デュークに、最後発となるトライアンフのスピード400とスクランブラー400X。奇しくも全車水冷単気筒でボア&ストロークも同じ。かたや10年を超える熟成を経たモデルに対し、トライアンフは完全ブランニュー。外車400ccモデルの構図を凝縮したようなモデルに、原田哲也さんと中野真矢さんはどんな見解を示すのか?

PHOTO/H.ORIHARA, S.MAYUMI TEXT/H.YATAGAI
取材協力/トライアンフモーターサイクルズジャパン 
TEL03-6809-5233 https://www.triumphmotorcycles.jp/
KTMジャパン TEL03-3527-8885 https://www.ktm.com/

’23年に一気に増殖外車400㏄スポーツ

 ’23年は海外メーカーの400㏄クラススポーツモデルが一気に増えた年だった。従来からあったKTMの390シリーズや、ハスクバーナの401シリーズ、BMWのG310シリーズのラインナップに加え、なんとハーレーダビッドソンやトライアンフまでこのクラスに新型スポーツモデルを投入したのだ。 

排出ガス規制への対応やABSの装着義務などの影響で、立て続けにCB400SFやSR400といった主力モデルが消えていく日本の状況とはまったく逆。気がつけば国内4メーカーが擁する400㏄のスポーツモデルの数を超えているのだ。 

なぜここまで海外メーカーはモデルのラインナップが増えたのか? もちろん日本のマーケットというよりはインド、アセアン地域でのバイクブームを受けての大増殖となっているのは疑う余地がないが、ユーザーとしてはマシンの選択肢が増えることは大いに嬉しいこと。 

そこで今回は、このクラス最後発であるトライアンフのスピード400とスクランブラー400X、10年以上前にこのクラスに先鞭をつけたKTMの390デュークを揃え、原田哲也さんと中野真矢さんに筑波サーキット・コース1000で試乗してもらい、キャラクターの違いを考察してもらうことにした。

Impression about ENGINE
ボア×ストロークは同じだがキャラクターは全く違う

編集部:今回の企画では、盛り上がる外車400ccモデルから3台をチョイスしました。まず’13年に初代が登場した、現代の外車400ccモデルの草分け的存在であるKTMの390デューク。こちらは’24年モデルでエンジンと車体のフルモデルチェンジを受けて、ライディングモード(エンジンマップ)切り替え機能などが追加されています。
一方、’23年末に登場したばかりのトライアンフのスピード400とスクランブラー400X。こちらは復活後のトライアンフとしては初のミドルクラスモデルです。両車とも同社ではモダンクラシックのカテゴリーに属しますが、スピード400はロードスター、スクランブラー400Xはその名の通りオフロードも視野に入れています。
この3台、おもしろいことにボア×ストロークが89×64mmと同じなのですが、まずはエンジンの話から伺いたいと思います。お2人は試乗してどう感じました?

【サーキットでも楽しめるKTM、パルス感が心地よいトライアンフ】
スポーツバイクのエンジンとして熟成を重ねているKTM。対して、トライアンフは低中速でのトルクが楽しいテイスト系のエンジンで、レブリミッターの介入も早い
【サーキットでも楽しめるKTM、パルス感が心地よいトライアンフ】
スポーツバイクのエンジンとして熟成を重ねているKTM。対して、トライアンフは低中速でのトルクが楽しいテイスト系のエンジンで、レブリミッターの介入も早い
【サーキットでも楽しめるKTM、パルス感が心地よいトライアンフ】
スポーツバイクのエンジンとして熟成を重ねているKTM。対して、トライアンフは低中速でのトルクが楽しいテイスト系のエンジンで、レブリミッターの介入も早い
【サーキットでも楽しめるKTM、パルス感が心地よいトライアンフ】
スポーツバイクのエンジンとして熟成を重ねているKTM。対して、トライアンフは低中速でのトルクが楽しいテイスト系のエンジンで、レブリミッターの介入も早い

中野:試乗したのが筑波サーキットのコース1000だったもので、トライアンフの2台に乗って、いきなり高い回転域の方を使って走っちゃったんだけど、〝あれ、なんか違うな?〞って思いました(笑)。

原田:そういうバイクじゃない(笑)。

中野:そう(笑)。だから一度仕切り直して、ゼロ発進からの加速とか、一般公道で使う状況をイメージしながら走ってみたら、このトライアンフのエンジンが心地いいのは、低中速域にあって、ストリート向けに作られているってことが分かりました。
トルクがあってスロットルをそれほど開けなくても進んでくれるところとか、低めの速度からスロットルを開けた時に感じる心地よいパルス感とか。とにかく低中速が気持ちいいバイクになっている。

原田:そうだよね。だから僕は意地悪な使い方をしてみた(笑)。ものすごい低速、40kmぐらいで6速に入れてみたり、そこからスロットル開けた時にきちんと加速するか? とかを試した。今まで……というか、ひと昔前の400ccのエンジンだったら、こんな意地悪な操作をしたら走らなかった。でも、このエンジンはトルクがあって、しっかり加速してくれるね。低中速域重視の街中で使いやすいモデルになっている。 
これまで僕の400ccモデルのイメージって、とにかくエンジンを回さないと走らないって感じなんだよね。特に直列4気筒モデルなんかはその傾向が強いんだけど、同じ400ccなのにこんなに走るんだって驚いたよ。確かにエンジン回転数は上の方は回らないけど、下道から高速道路まで、一般道を走るんだったらこれで十分じゃないかな? 
ちゃんと一番よく使う領域でもっとも気持ちいいフィーリングが得られるようになっている。乗っていて排気量が足りないとも思うことはなかったしね。

TRIUMPH SPEED 400
TRIUMPH SPEED 400

中野:低速域のパルス感がすごく気持ちいいですよね。かといって大きな排気量のバイクのように、スロットルをラフに扱ったときの急激なトルク変化で〝ドキッ〞とするところがないのもいい。おかげですごく自然に乗ることができます。

原田:公道を走るのにちょうどいいよね。スロットルをラフに扱ってもドンッと加速することがないから、初心者やリターンライダーにもおすすめ。トライアンフのエンジンは常用域にトルクがあるから乗りやすいし、本当に不満を感じない。

中野:KTMとはキャラクターが全然違いますよね。狙っているところが違うというか。390デュークに乗って感心するのは、よく作り込んでいるってところですよね。もちろん価格もビッグバイクとは全然違うので単純には比べられないところはありますけど、400ccクラスのバイクってどこかしらに隙が見えちゃう。だけど、サーキットレンジの走りをしてみてもこの390デュークはよくできていて、気になる隙がまったくない。クイックシフターの入りもいいので、高回転をキープして走るとものすごく速い。2ストロークみたいな感じ(笑)。

KTM 390 DUKE
KTM 390 DUKE

原田:レーシングスーツで乗りたくなったよね(笑)。そのくらいスポーツ性が高いエンジンだと感じた。ただ、一般道に持っていったときにどっちが気持ちいいのか? となると話は変わってくる。 
一般道はゆっくり走りたい僕の好みを言えばトライアンフを選ぶかな。KTMの390デュークのエンジンはサーキットで走るにはすごくいいけど、一般道だとバイクにちょっと急かされる感じがある。

中野:そうそう! それっ(笑)。

原田:その分、サーキットという限られた環境で走るのにはものすごく速くていいんだけどね。

TRIUMPH SCRAMBLER 400 X
TRIUMPH SCRAMBLER 400 X

次ページ:Impression about HANDLING

Impression about HANDLING
トライアンフは車体とサスペンションでハンドリングを作り分ける

RC:次はハンドリングについてお伺いします。スピード400とスクランブラー400Xはエンジンを共用しているものの、メインフレームやトリプルツリーの仕様が違っていたりして、思いの外キャラクターが作り分けられていますが、この辺りはなにか感じました?

【車体特性に合わせてネックの長さも異なるトライアンフ】スクランブラー400Xとスピード400はただの着せ替えモデルにあらず。スクランブラー400Xはフロント19インチ化に合わせ、ネック部を延ばしてホイールベースを延長。乗り味はスクランブラー400Xの方がおっとり傾向
【車体特性に合わせてネックの長さも異なるトライアンフ】スクランブラー400Xとスピード400はただの着せ替えモデルにあらず。スクランブラー400Xはフロント19インチ化に合わせ、ネック部を延ばしてホイールベースを延長。乗り味はスクランブラー400Xの方がおっとり傾向

原田:トライアンフの2台を乗り比べてみたらスクランブラー400Xの方が好みだった。ホイールベースが長いということが大きいんだと思うけど、直進安定性がいい。車体の動きもこちらの方がサスペンションのピッチングが大きくて乗り心地がいいよね。スピード400は、動きがクイックで足つき性もいいんだけど、スクランブラー400Xくらいゆるいというか、許容範囲が広いバイクのほうが一般道をツーリングするなら面白いかな。

TRIUMPH SCRAMBLER 400 X

中野:僕は今回、スピード400から試乗を始めたんです。ちょと思ったのは、もっと優しい感じのネイキッド的なハンドリングを予想してたんですよね。

原田:意外と前傾姿勢が強いしね。

中野:そうなんですよ。スポーツ感があって、これはこれで面白いなと思った。次にスクランブラー400Xに乗ったらまったくポジションが違う。確かにシートは高いんだけど、原田さんの言う通りサスペンションがよくストロークするので前後荷重が分かりやすい。タイヤがブロックタイヤ気味なので、最初はどうかな? と思いながら乗っていたけど、ピッチングをきっかけけバイクを操ると意外とスムーズに走らせることができて、こうなると面白い。トライアンフの2台は、似た雰囲気ですが車体とサスペンションでハンドリングの性格がまったく違っていて面白いです。

TRIUMPH SPEED 400
TRIUMPH SPEED 400

原田:スクランブラー400Xはロングツーリングに行けるバイクだよね。疲れづらいキャラクターになっている。かと言って曲がらないのかと言うと、そういうわけではない。気持ちよく自然に曲がることができる。確かにシート高だけ見るとこの中で一番足つきは不利だけど、これだけ軽かったら気にならないしね。

中野:軽さは重要ですよね。レーシングマシンってみんな軽いじゃないですか? 僕らが市販車に乗って一番気になるのは、重さとか抵抗、フリクションの多さ。400㏄クラスは車体が軽いっていうだけで、色々な心配から解放されますよね。

原田:スクランブラー400Xの場合、サスペンションが柔らかくて操いやすいから、これはまずは出荷状態のままで乗ってみてもらいたいよね。足つき性が悪くて重いモデルだとなかなか大変だけど、これくらいの軽さだったら、それほど苦にならず乗れるだろうしね。せっかくいい乗り味になっているから、いじらずに乗ってみてほしい。

RC:トライアンフの2台は、同じエンジンを使ったバイクではありますが、ハンドリングがまったく違うんですね。よくわかりました。では390デュークはどうでしょう? KTMはやっぱりレディ・トゥ・レースという雰囲気ですか?

KTM 390 DUKE
KTM 390 DUKE

原田:さっきエンジンのところでバイクに急かされる感じと表現したけど、車体も同じで、良くできているし鋭く曲がっていけるから、ついついペースが上がってしまう。サーキットで走ったりするスポーツライティングに重きを置くなら、390デュークの方が断然速く走ることができるのは間違いないね。

中野:390デュークはサスペンションも秀逸で、サーキットでペースを上げて走ってもなんの不満もないですよ。スポーツとしてバイクを楽しむための装備と言えますね。

次ページ:Impression about BRAKE & SUSPENSION

Impression about BRAKE & SUSPENSION
ブレーキの性能もキャラクターに合致する

原田:僕は、スクランブラー400Xはもうちょっとブレーキが効いてくれるといいかな? と思った。効力が抜けちゃう感じではないけど、絶対的な制動力が足りない印象。

RC:フロントブレーキは、スピード400よりスクランブラー400Xの方がディスク径は20mm大きいんですが、フィーリングはスピード400の方がいいんですね。

中野:スクランブラー400Xのブレーキがすごく不満かと聞かれたらそこまでのことではないんですけど、もう少しだけ握った分だけ効いてくれたらいいかなとは思います。

原田:僕はセローを持っているんだけど、初めて乗った時に「250㏄のオフ車ってこんなにブレーキ効かないんだ!」と思った。そんな感じ。乗っているうちに慣れたけどさ(笑)。

RC:390デュークもトライアンフと同じバイブレ製ですがキャリパー形状が違い、ディスクはアウターローターを直接ホイールにマウントして軽量化しています。

中野:サスペンションとの兼ね合いもあるでしょうが、こちらの方がサーキットでもしっかりコントロールできる印象でしたね。ペースを上げていっても制動力にまったく問題はありません。エンジンやハンドリングなどと同様に、やる気にさせてくれます。いいですね!

TRIUMPH SPEED 400

1:φ43mmビッグピストン倒立フォークは、ストローク量140mm。試乗車のタイヤはピレリ・ディアブロロッソⅡ 2:バイブレ製キャリパーにφ300mmディスクをセット。スクランブラー400Xよりも小径だが、こちらの方が効く印象 3:プリロード調整機能付きモノショックを装備し、ストロークは130mm
1:φ43mmビッグピストン倒立フォークは、ストローク量140mm。試乗車のタイヤはピレリ・ディアブロロッソⅡ 2:バイブレ製キャリパーにφ300mmディスクをセット。スクランブラー400Xよりも小径だが、こちらの方が効く印象 3:プリロード調整機能付きモノショックを装備し、ストロークは130mm
1:φ43mmビッグピストン倒立フォークは、ストローク量140mm。試乗車のタイヤはピレリ・ディアブロロッソⅡ 2:バイブレ製キャリパーにφ300mmディスクをセット。スクランブラー400Xよりも小径だが、こちらの方が効く印象 3:プリロード調整機能付きモノショックを装備し、ストロークは130mm
1:φ43mmビッグピストン倒立フォークは、ストローク量140mm。試乗車のタイヤはピレリ・ディアブロロッソⅡ 2:バイブレ製キャリパーにφ300mmディスクをセット。スクランブラー400Xよりも小径だが、こちらの方が効く印象 3:プリロード調整機能付きモノショックを装備し、ストロークは130mm

TRIUMPH SCRAMBLER 400 X

1:アクスルの位置を前方にオフセットし、ダート走行向けにストロークは150mmに拡大。ブレーキディスクは19インチ化に合わせてφ320mmに。タイヤはメッツラー・カルーストリート2:ブレーキの効きはキャラクターに合わせてややソフト寄り 3:リアショックもフロント同様、150mmのストロークを確保
1:アクスルの位置を前方にオフセットし、ダート走行向けにストロークは150mmに拡大。ブレーキディスクは19インチ化に合わせてφ320mmに。タイヤはメッツラー・カルーストリート2:ブレーキの効きはキャラクターに合わせてややソフト寄り 3:リアショックもフロント同様、150mmのストロークを確保
1:アクスルの位置を前方にオフセットし、ダート走行向けにストロークは150mmに拡大。ブレーキディスクは19インチ化に合わせてφ320mmに。タイヤはメッツラー・カルーストリート2:ブレーキの効きはキャラクターに合わせてややソフト寄り 3:リアショックもフロント同様、150mmのストロークを確保
1:アクスルの位置を前方にオフセットし、ダート走行向けにストロークは150mmに拡大。ブレーキディスクは19インチ化に合わせてφ320mmに。タイヤはメッツラー・カルーストリート2:ブレーキの効きはキャラクターに合わせてややソフト寄り 3:リアショックもフロント同様、150mmのストロークを確保

KTM 390 DUKE

1:WP製φ43mm倒立フォーク、バイブレ製ラジアルマウントキャリパー+φ320mmディスクを採用。コーナリングABS、リア制御をカットする「スーパーモト」モードも搭載。タイヤはミシュラン・ロード6 2:伸び圧の減衰調整が可能 3:プリロードと伸減衰の調整が可能。ストロークはF/Rともに150mm
1:WP製φ43mm倒立フォーク、バイブレ製ラジアルマウントキャリパー+φ320mmディスクを採用。コーナリングABS、リア制御をカットする「スーパーモト」モードも搭載。タイヤはミシュラン・ロード6 2:伸び圧の減衰調整が可能 3:プリロードと伸減衰の調整が可能。ストロークはF/Rともに150mm
1:WP製φ43mm倒立フォーク、バイブレ製ラジアルマウントキャリパー+φ320mmディスクを採用。コーナリングABS、リア制御をカットする「スーパーモト」モードも搭載。タイヤはミシュラン・ロード6 2:伸び圧の減衰調整が可能 3:プリロードと伸減衰の調整が可能。ストロークはF/Rともに150mm
1:WP製φ43mm倒立フォーク、バイブレ製ラジアルマウントキャリパー+φ320mmディスクを採用。コーナリングABS、リア制御をカットする「スーパーモト」モードも搭載。タイヤはミシュラン・ロード6 2:伸び圧の減衰調整が可能 3:プリロードと伸減衰の調整が可能。ストロークはF/Rともに150mm

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Impression about OVERALL
レンジが広がった外車400㏄モデル

原田:トライアンフは、やっぱりツーリングや街乗りメインのライダーにオススメだね。特にスクランブラー400Xの方は、ロングツーリングに使ってみるのも面白いだろうしね。390デュークはよりスポーティに走りたい人向け。サーキットを元気よく走りたいということであれば、絶対390デュークを選んだ方が幸せなれる(笑)。

中野:390デュークは「速く!エンジンを回してっ!」ってバイクが求めてきますからね(笑)。

原田:同じ400㏄モデルなのにキャラクターが立っていて、その対比が面白いよね。トライアンフはトコトコとエンジンパルスを楽しみながら走るのが面白い。

中野:今日乗った3台なら、どれも初めての外車として選んでも申し分ない、いやむしろ1台目のバイクに選んだっていいくらい乗りやすい。特にスクランブラー400Xは久しぶりにバイクに乗る人や、大きなバイクはちょっと疲れたな、なんていうベテランが選ぶのもありだと思います。ただスポーツ走行が好きならやっぱり390デュークでしょうね。

KTM 390 DUKE
KTM 390 DUKE

RC:今回の3台はインド生産ですが、気になる点はありますか?

中野:当然トライアンフならイギリスで作っていて欲しいし、KTMならオーストリアで……なんて思いはありますが、3台ともきちんとメーカーらしさが出ているのがすばらしいと思いますよね。スピード400とスクランブラー400Xは、タンクの形だとかエンジンの造形にしっかりトライアンフらしさが現れてますし、ここまでクオリティを上げてきたのかと驚きましたね。

原田:トライアンフにしてもKTMにしても、400㏄クラスとは思えない出来だよね。エンジンだけ見ても、特に390デュークはひと昔前の600㏄クラスくらいの雰囲気。ピークパワーなどは排出ガス規制などで絞られているのだろうけど、使う領域、使いたいエンジン回転数でしっかり力が出るようになっているところに技術の凄さを感じる。最近、バイクショップでよく聞くのは、1000㏄と400㏄クラスを2台持ちして、普段は小さいバイクで、気候のいい時期だけ大きいのに乗る人が増えてるらしい。

TRIUMPH SCRAMBLER 400 X
TRIUMPH SCRAMBLER 400 X

中野:大きなバイクで所有感を満たして、普段は軽いバイクに乗る。それ、一番幸せじゃないですか(笑)。

原田:そんな流れで400㏄クラスながら所有感もある外車の400㏄モデルが注目されていると思うんだよね。

中野:なるほど! メーターにしても電子制御にしても、KTMなんかは今どきのビッグバイクと変わらないような雰囲気ですしね。

TRIUMPH SPEED 400
TRIUMPH SPEED 400

原田:お得感はやっぱり390デュークの方があるよね。

中野:トライアンフは思ったより車格が大きくてびっくりしました。高速道路のパーキングとかでバイクを停めた時に、ビッグバイクと並んでも遜色が無いですよね。

原田:そうそう。400㏄の感じがしないんだよ。車格があるからだろうね。ちゃんとトライアンフとしての貫禄があるんだよ。だからより大きく見える。それに細部を見ても、3台ともこのクラスにありがちな、コストとの兼ね合いで妥協している点がない。こういうモデルが出てくるから、外車400㏄クラスは盛り上がってきているんだろうね。

次ページ:Detail

KTM 390 DUKE

シート高は820mm。前後セパレートで着座位置も前寄り。シートフレームはもちろん、メインフレームやスイングアームも新設計だ
シート高は820mm。前後セパレートで着座位置も前寄り。シートフレームはもちろん、メインフレームやスイングアームも新設計だ
“前輪に乗る”ような前めのポジションは、いかにもKTM的でアグレッシブな印象。4ウェイのハンドルスイッチも使いやすい
“前輪に乗る”ような前めのポジションは、いかにもKTM的でアグレッシブな印象。4ウェイのハンドルスイッチも使いやすい
スタイリングにも大幅なアップデートが施され、フロントマスクをはじめとするデザインは、1290デュークにより近くなった
スタイリングにも大幅なアップデートが施され、フロントマスクをはじめとするデザインは、1290デュークにより近くなった
走行モード「トラック」は出力特性は「ストリート」と同じだが、メーター表示が変わりラップタイマーが使用可能に。「レイン」も用意
走行モード「トラック」は出力特性は「ストリート」と同じだが、メーター表示が変わりラップタイマーが使用可能に。「レイン」も用意
コンパクトでレーシーなマフラーを採用。3速以上のギア比はトライアンフと一緒ながら圧縮比は0.59高く設定されてパワフルに
コンパクトでレーシーなマフラーを採用。3速以上のギア比はトライアンフと一緒ながら圧縮比は0.59高く設定されてパワフルに
上下対応クイックシフターをオプションで用意。他にも「トラック」モードでローンチコントロールが使用できるなど電子制御も充実
上下対応クイックシフターをオプションで用意。他にも「トラック」モードでローンチコントロールが使用できるなど電子制御も充実

TRIUMPH SPEED 400

同社のモダンクラシックシリーズらしく、丸目1灯でDRLも採用している。光源はライセンスプレートライトを含めすべてLEDだ
同社のモダンクラシックシリーズらしく、丸目1灯でDRLも採用している。光源はライセンスプレートライトを含めすべてLEDだ
スピード400は390デュークほどではないが、若干前傾になって前輪荷重を稼ぐようなスポーティなポジションに設定されている
スピード400は390デュークほどではないが、若干前傾になって前輪荷重を稼ぐようなスポーティなポジションに設定されている
790mmと低めに設定されたシートはワンピース構造。フロント側の横幅が絞り込まれているので足つき性もかなり良好だ
790mmと低めに設定されたシートはワンピース構造。フロント側の横幅が絞り込まれているので足つき性もかなり良好だ
指針式速度計とデジタルの組み合わせはスクランブラー400Xも同様。マップの切り替えはないが、トラコンのON/OFFが可能
指針式速度計とデジタルの組み合わせはスクランブラー400Xも同様。マップの切り替えはないが、トラコンのON/OFFが可能
スピード400とスクランブラー400Xでサイレンサーのデザインを変えるこだわりも。チェーンは520サイズでRスプロケットは43T
スピード400とスクランブラー400Xでサイレンサーのデザインを変えるこだわりも。チェーンは520サイズでRスプロケットは43T
電子制御スロットルは装備するものの、クイックシフターの装備はなし。ステップはスクランブラー400Xよりやや後方に装備される
電子制御スロットルは装備するものの、クイックシフターの装備はなし。ステップはスクランブラー400Xよりやや後方に装備される

TRIUMPH SCRAMBLER 400 X

丸目のヘッドライトデザインはシリーズ共通だが、ガードが装着されているだけでなく、ステーやトリプルツリーもオリジナル設計
丸目のヘッドライトデザインはシリーズ共通だが、ガードが装着されているだけでなく、ステーやトリプルツリーもオリジナル設計
ハンドル幅はスピード400の810mmに対し、901mmとワイドでブレース付き。フォークオフセットもしっかり変更されている
ハンドル幅はスピード400の810mmに対し、901mmとワイドでブレース付き。フォークオフセットもしっかり変更されている
セパレートタイプのシートは、835mmとやや高めに設定。左サイドにはゼッケンプレート風デザインのサイドカバーを装備
セパレートタイプのシートは、835mmとやや高めに設定。左サイドにはゼッケンプレート風デザインのサイドカバーを装備
メーターはスピード400と共通だが、ダート走行も視野に入れるため、ABSとトラコンをカットする「オフロードモード」を搭載
メーターはスピード400と共通だが、ダート走行も視野に入れるため、ABSとトラコンをカットする「オフロードモード」を搭載
オフロード走行のために、ワイドで食いつきのいいデザインのステップを採用。ラバーパッドは工具なしで簡単に取り外せる
1次減速、ギア比はスピード400と共通だが、Fスプロケットは1T小さい14T。チェーンを2コマ長くしてホイールベースを稼いでいる
オフロード走行のために、ワイドで食いつきのいいデザインのステップを採用。ラバーパッドは工具なしで簡単に取り外せる
オフロード走行のために、ワイドで食いつきのいいデザインのステップを採用。ラバーパッドは工具なしで簡単に取り外せる