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その時銘品は生まれた(Vol.4)

[ 今回の逸品 ]
Arai RX-7X

安全性を重視する世界中のライダーに愛されるアライのヘルメット
中でもRX-7シリーズは技術の粋を集めた最高峰モデルだ
この逸品は半世紀もの間、蓄積してきたノウハウと知恵
そして職人のワザから生み出されていた

アイデアと膨大な“手”の
経験で無理難題を実現!

 明治35年。今から120年前に帽子店から出発し、昭和12年(1937年)に保護帽の製造を開始し、日本初のヘルメットメーカーとなったアライ。

その後、1950年代にバイク用乗車ヘルメットを国内で初めて生み出し、68年には日本初のフルフェイス「RX‐7」を世に送り出した。アライの歴史初物尽くし。日本のヘルメット業界をリードしてきた存在だ。

 その最高峰モデルの最新版こそ、15年に登場したRX‐7Xだ。

「開発が始まったのは12年。社長の一声がきっかけでした」と帽体形状を担当した鈴木さんは話す。

 22年で84歳を迎えるアライの新井理夫社長は、現役のライダー。

「転倒時の安全性をより高めたいとの声から、“シールドベース取り付け位置を下げる” “コンパクトさ” をテーマに掲げた。


 アライは、丸く滑らかな帽体で、転倒時の衝撃を滑らせて「かわす性能」を全作で追求している。前モデルのRX‐7RR5は、現行の7Xより24㎜高い位置にシールドベースがあり、転倒した際ホルダーが当たる事例が多かった。

この位置を下げ、滑らかな面積を増やせば、かわす性能を向上できる。「そんな無理難題が可能なのかなと思いました」とシールド開発を担当した大野さんは話す。

従来のシステムで位置を下げるとシールドが開閉できず、開閉させようとすると理論的にはベース部がヘルメットの帽体を飛び出してしまう。まさに無理難題だったのだ。


20回ほど試行錯誤を繰り返すうち、「クルマのダッシュボードや電子レンジなど、さまざまな開閉機構を見ていて閃いたんです」という。

フタが前に出ながら回る動きを取り入れ、従来はシールド側のみだったレールをベース側にも設置。

このダブルピボット機能を組み合わせ、ついにベース部の位置を下げつつ、シールド開閉できるVASシールドシステムが生まれた。


 そして帽体はコンパクトなほどかわす性能につながり、空力でも有利。従来型から帽体の大きさを変えずに安全性の向上を狙った。


 人間は、転倒時に首をかしげる傾向があり、斜めにぶつかりやすい。しかし事故は1件ごとに全部違う。

膨大なデータを元に、曲率半径75㎜以上の連続面で構成した「R75シェイプ」をアライは採用する。ところが0.5㎜ほどの微妙な曲率の違いや歪みでも安全性に大きく影響するという。


 ここで重視しているのが「手でさわった感触」というから驚く。

「帽体の設計者は、人命が助かったヘルメットと、そうではなかったヘルメットを見てさわることで違いが身体に染み付いている。その蓄積で安全な帽体は手でさわれば分かるのです」(鈴木さん)


 7Xでも試験データを基に微妙に曲率を変えながら、金型を何度も修正して安全性を高めた。もちろんスキャナーなどの機械も使うが、「まず手でさわって弱点を洗い出すのが第一」という。

鈴木さんはアライに入社して30年。まさしく職人の技と呼ぶほかない。


 形状においても「さわって痛くない感触」を重視する。「エッジを立てた方が空力性能はいい」と言われるが、安全性を最も重視するアライとしては、丸く滑らかなフォルムにこだわる。

アライが提唱するエッグドシェイプフォルムもその一環で、命を護る卵の殻をイメージした。

「初代ヘルメットから人間の感覚を重視している」と鈴木さんが話すように、自然の摂理に適った形状と言えるだろう。


 外側の帽体を固く、ヘルメット内部の衝撃吸収体=ライナを柔らかくするというアライの思想も卵のようだ。

欧州メーカーなどは逆に、帽体が壊れても分厚く固いライナで護るという考え。アライの方式は高度な技術や多大なコストを要するものの、安全性と被り心地に優れるのがメリットだ。


 空力性能に関しては、社内に風洞施設を導入したことから、コストと時間が短縮可能に。さらに7Xではオプションでレーシングスポイラーを発売し、反響を呼んだ。

これはモトGPなどの新規格に対応したもの。サポートするダニ・ペドロサ選手から「パーフェクト」とのお墨付きも得た。


 スポイラーの開発に際し、ヘルメット自体をエッジの立った新型にする案もあった。だが、滑ってかわす丸いフォルムにこだわり、実施しなかった。

「転倒時に外れる付加パーツで空力性能を生み出すのがアライ」と鈴木さん。


「実際、今のヘルメットはエッジが主流の時代です。確かにデザインが優れていれば売れるかもしれませんが、アライは『売れるモノより、安全なモノをつくる』のがポリシーなんです」


 この言葉にハッとした。頑固一徹に「安全」という信念を貫き、逆に顧客が共感してファンになってしまう。

これぞアライが逸品を生み出し続ける理由だろう。

RX-7X

価格 :6 万1600円〜
カラー:ソリッドモデル、グラフィックモデル
サイズ:(54)(55-56)(57-58)(59-60)(61-62)

BikeJIN2022年3月(Vol.229)掲載

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