
【BIMOTA KB4 RC】独自の思想を突き詰めた車体。職人の拘りを具現化した走る宝石【中野真矢×平嶋夏海インプレッション】
フレームビルダーとして、マシンコンストラクターとして確固たる評価を持つビモータ。カワサキとのコラボレーションで新たに生み出された、新世代ビモータのプレミアムネイキッドKB4RCを、中野真矢さんと平嶋夏海さんの二人が、サーキットを走り込んでインプレッション。
PHOTO/H.ORIHARA TEXT/K.ASAKURA
取材協力/カワサキモータースジャパン 70120-400819
https://www.kawasaki-motors.com/
ビモータが作り上げたプレミアムネイキッド
中野 今回はスペシャルなバイクです。なんというか、プレミアム感が凄い。ビモータのKB4RC! カワサキニンジャ1000系のエンジンを、イタリアの職人魂が生み出したオリジナルの車体に搭載した、特別な1台を走らせます。
平嶋 緊張します! こういうメーカーって、フレームビルダーって呼べばいいんですかね?
中野 昔のヨーロッパでは、本当に〝フレームだけ〞作って売っているメーカーが結構あったんだよね。
平嶋 MotoGPのMoto2マシンのフレームを生産しているメーカーみたいな感じですか?
中野 そうそう、そんな感じ。ビモータはエンジンこそ作っていないけど、完成車をデリバリーしているわけだし、少量生産のメーカーと言っていいんじゃないかと思うけど。

平嶋 なるほど。
中野 ビモータは独自の設計思想で作り上げたフレームで高い評価を得て、WGPとかでも走っていたんだよね。生まれはサーキットなんだけど、ストリートマシンの世界でもプレミアムブランドとしての価値を築き上げてきたメーカー。
平嶋 何か力が入ってますね(笑)。
中野 そりゃあそうだよ。僕ら世代にとっては憧れのメーカーだから盛り上がっちゃうね。細かいパーツの作り込みを見てよ。いちいちカッコ良くない? 平嶋さんはビモータに乗ったことはある?
平嶋 初めてです。KB4に跨ったことがあるだけですね。
中野 どうだった? って、跨っただけじゃ、どうもこうもないか?
平嶋 足着きが厳しい! って思いました(笑)。それまでビモータは名前くらいしか知らなかったんです。居合わせた皆さんが慎重に扱っているのを見て〝特別なバイクなんだっ〞て感じましたね。あと、跨っている写真をSNSに上げたら〝身の丈にあったバイクに乗れ〞ってプチ炎上(笑)。買うとか言ってないのにぃ……。
中野 それは災難だったね(笑)。まあ、それほど熱烈なファンがいるくらい、特別なバイクだと思って許してください。今回走らせたのは、そのKB4のネイキッドモデル的存在のKB4RCです。
平嶋 エンジンはニンジャ1000系なんですよね? あまりにも形が違うので、とてもそうと思えません。
中野 だよね。同じエンジンを積んでるようには見えない。
平嶋 どんな走りをするのかが楽しみです!
ライダーを鼓舞するようなソリッドなハンドリング
中野 僕はベースモデルになっている、カウル付きのKB4にも乗った経験があるんだけど、凄く軽くてサスペンションの設定はハードで、サーキットで育った人間としては馴染みがある乗り味だなって感じたんだよね。
平嶋 スパルタン?
中野 そうそう。乗り手が積極的に操る必要があるけど、アクションとマシンが決まった時の切れ味の鋭さが堪らないという……。
平嶋 レーシーなんですね。
中野 このKB4RCにも、8月号(R/C616)で少し乗らせてもらっているんだよね。
平嶋 どう感じました?
中野 その時は公道だけだったけど、ハンドリングに一体感があって、細かい情報もよく伝えてくれる感じだった。キャスター角がしっかりしてるのかなって思ったよ。

平嶋 フロントが落ち着かない?
中野 車体の重心がかなり前寄りで、独特なバランス感覚が味わえるバイクだね。前輪の接地感も新鮮で、慣れるほどに操る楽しさが深まっていくと思う。
平嶋 エンジンが車体前方にあるんですよね?
中野 そうするために、ラジエターの位置をシート下に持ってきているからね。
平嶋 フロントフォークのすぐ後ろにエンジンがあるから、ラジエターはどこ? って思いました。
中野 エンジンパーツで一番重いクランクシャフトが、一般的なバイクより前側にある。独特のハンドリングは、その影響が大きいんだと思う。で、神経質なハンドリングだなあって感じていたんだけど、高速道路に入ってペースを上げていったら、走りがまとまってきたんだよね。色々な要素が噛み合ってきたというか……。コレは速く走るためのバイクだって思ったから、サーキットを走らせるのが楽しみだったんだ。

平嶋 今日は待望のサーキット走行でしたけど、どうでした?
中野 速度域を上げると、思った通りにイイね! 車体の各部がハイスピードでバランスするように作られている。とにかくコーナリングがイイよね。スゴく曲がる。二次旋回が強力で、グイッと曲がる。思ったより曲がり過ぎるものだから、イン側の縁石に乗っかっちゃったことがあったくらいだし。
平嶋 攻めてましたよね!
中野 バイクが〝曲がろう曲がろう〞とする。ステアリングが切れたがるから、イン側のハンドルを押すというか、ハンドルを支える感じ。
平嶋 わかります。ステアリングがスゴく切れたがりますよね。それも、ダラーっとじゃなくて、クイックに切れる。バイクが自分で曲がりたがるというか……。バイク任せに走っていると、思ったラインを通れないので、乗り手がしっかりコントロールしなきゃって思いました。
中野 でも、走っていて怖さはなかったでしょ?
平嶋 そうですね。
中野 車体の軽さが効いているよね。重いバイクでこのハンドリングだと、安定性が足りないと感じちゃう。KB4RCは、実重量もハンドリングも軽いから楽しめる。
平嶋 Rの大きい、速度の高いコーナーで、自分からハンドルを操作するとキレイなラインで曲がっていけるんです。気持ちよかったですね。バイク任せに走るのではなく、乗り手が積極的に入力した方が走りやすいですし、楽しいです!

中野 バイクがクイックに曲がろうとする瞬間を捉えて、コントロールできた時の感覚がいいよね。操る喜びが大きい。乗り手に優しくはないし、乗り味にクセがあるのは事実。でも、そのクセを活かした走りが楽しいんだよね。バイクを活かすも殺すもライダー次第という。チャレンジする喜びがある。
平嶋 このキャラクターって、やっぱり独特な車体設計によるものなんでしょうか?
中野 それはあるだろうね。エンジンが前にあることは大きいよ。
平嶋 私でも、なんとなく感じます。重心っていうのかな? バイクの車体のセンターって、大概はお尻の下あたりにあると思うんですよ。でも、KB4RCは両膝の間に挟み込んでいる感じです。ボール1個分、前側にあるというか。

中野 僕はフロントタイヤの上にそのまま乗っかっているように感じたな。フロントの接地感は、あり過ぎるくらいあるよね。それでいて、リアタイヤがおざなりになっているわけでもない。ちゃんと接地感が伝わってくる。
平嶋 そうですね。リアタイヤからの情報量もしっかりありました。
中野 サスペンションは全体的にハイスピードに合わせたセッティングだよね。リアサスペンションもスピードを上げれば上げるほど、良い仕事をしてくれる。あと、あらためてエンジンの良さを感じたよ。トラクションコントロールが絶妙に介入してくれた。
平嶋 かなり介入してましたよね。立ち上がりで、排気音が〝ババババッ〞っていってました(笑)。
中野 経験があって、スムーズに開けられると確信しているニンジャ1000のエンジンだからね。車体がかなり特異なものでしょ? これでエンジンも未知な設計だと、やっぱり警戒しちゃう。その点、開けやすくて安定しているカワサキのエンジンを搭載していることは大きい。思い切って開けていける。
平嶋 私の場合、使い切れるパワーではないんですけど、それでも開ける楽しさを感じられました。
中野 楽しいよね。バイクが好きな人が作ってるって感じたよ。自分達の信じる、最良のものを作ろうとして出来たバイクなんだと思う。乗り味も形も個性に溢れてるし、ビモータはそうあるべきだと思う。
平嶋 手に入れられる状況が思い浮かばないんですけど、こんなスゴいバイクをサラッと乗りなせる大人になれたら欲しい1台かも? です。
中野 憧れのブランドだもの。ホント〝乗ってヨシ眺めてヨシ〞だね。
BIMOTA KB4RC









1:KB4RC の車体で、最も特徴的であるシート下に設けられたラジエター 2:一般的にエンジン前方に設置されるラジエターが存在しないため、エンジンとフロントタイヤの位置関係はかなり近い。独特のクイックなハンドリングの実現に、大きく寄与している部分3:前方に大きく口を開けたダクトが、後部のラジエターまでダイレクトに新気を導入する。フレームはクロモリ製トレリス形状
エンジン | 水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ |
総排気量 | 1043cc |
ボア×ストローク | 77.0mm×56.0mm |
圧縮比 | 11.8:1 |
最高出力 | 142ps/10000rpm |
最大トルク | 11.3kgf・m/8000rpm |
変速機 | 6段 |
クラッチ | 湿式多板 |
フレーム | トレリス |
キャスター/トレール | 24.0°/100.8mm |
サスペンション | F=オーリンズ製 FG R&T 43 NIX30 R=オーリンズ製 TTX36 |
ブレーキ | F=φ320mmダブルディスク+ブレンボ製4ポットラジアルマウントキャリパー R=φ220mmシングルディスク+2ポットキャリパー |
タイヤサイズ | F=120/70ZR17 R=190/50ZR17 |
全長×全幅×全高 | 2040mm×774mm×1160mm |
ホイールベース | 1390mm |
シート高 | 810(±8)mm |
車両重量 | 194kg |
燃料タンク容量 | 19.5ℓ |
価格 | 473万円 |