
【Historic Bikes/YAMAHA XJR1300(カスタム)】空冷4気筒の主役に躍り出たのはヤマハだった
※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。
真摯に取組んできたヤマハのバイク作りが再評価されているXJRの魅力をカフェレーサーという形で表現した新しい提案。
世界的にクラシックテイストのバイクが支持を集める流れは、決して一過性のブームではない。その潮流を語るうえで、ヤマハXJR1300Cという存在は、今あらためて振り返る価値がある。
XJRシリーズの心臓部である空冷4気筒エンジンは、1984年に世界最速のツアラーとして登場したFJ1100を源流とする。単なる懐古主義ではなく、「速さ」を本気で追い求めた時代の思想を色濃く残したメカニズムだ。1994年にXJR1200として登場して以降、このエンジンは時代の変化に合わせて改良を重ねながら、生き延びてきた。

排ガス規制や騒音規制が強化される中、多くのメーカーが空冷4気筒という構成に見切りをつけていった。それでもXJRは生き残った。理由は明確だ。ヤマハがこのエンジンに注いだ執念と、それを支持し続けたライダーたちの存在があったからだ。インジェクション化という現実的なアップデートを受け入れながらも、世界最速を目指して生まれた空冷4気筒の本質は失われなかった。ストリートで乗るぶんには、今なお十分すぎるほどのポテンシャルを秘めている。
XJR1300Cは、そんなXJRの中でも欧州市場向けに用意された特別なバリエーションだ。日本国内では正規販売されなかったこのモデルには、欧州が求めるスポーツクラシック像がストレートに投影されている。

チョップしたような小ぶりのタンクは、車体の印象を引き締めると同時に、巨大な空冷4気筒エンジンの存在感を際立たせる。シングルシート風のシート形状は、単なるクラシックではなく、カフェレーサー的な緊張感を漂わせるものだ。丸いシートカウルだけが正解ではない、という明確な意思がそこにある。ヤマハが理想としたのは、アーリーTZを思わせる、跳ね上がったシートエンドを持つスポーティなシルエットだった。
ブラックアウトされたエンジンとマフラーも、その思想を強く物語るディテールだ。さらに、ヤマハ伝統の大径ヘッドライトと独特なハンドル形状ではなく、フラットなハンドルバーとコンパクトなヘッドライトを採用している点も興味深い。これは、日本的なネイキッドではなく、欧州で磨かれたネイキッドとしてのXJR1300Cを象徴している。


すでに生産を終えたモデルではある。しかしXJR1300Cは、時代に迎合しすぎなかったからこそ、今も語る価値を失っていない。空冷4気筒という「過去の技術」に、本気で向き合い、最後まで磨き上げたヤマハのひとつの答え。その熱量は、今このバイクを知らない世代にとっても、十分に伝わるはずだ。
そして何より、XJR1300Cは完成された記号では終わらない。空冷4気筒を愛するライダーが、自分の価値観で仕上げていくための「余白」を、最後まで残してくれたモデルなのだから。




