【カワサキ Ninja ZX-6R】+37ccの価値と意味を再検証【中野真矢×平嶋夏美 インプレッション】

他にはない、排気量636ccの直4エンジンを搭載したNinja ZX-6R。レースユースが前提の、600ccスーパースポーツの異端児は、何を求めて生み出され、作り続けられているのだろうか?中野真矢さんと平嶋夏海さんの二人が、今再びその価値を問う。

PHOTO/S.MAYUMI TEXT/K.ASAKURA
取材協力/カワサキモータースジャパン 70120-400819
https://www.kawasaki-motors.com/
【中野真矢さん】
本誌メインテスター。全日本GP250クラスチャンピオンを経て、世界選手権に参戦。MotoGPではカワサキのエースライダーを担った。バイクライフスタイルブランド「56design」代表を務める他、「56RACING」を率いて後進ライダーの育成にも注力している
【平嶋夏海さん】
タレント、俳優、グラビアアイドル、レースリポーター、声優などマルチに活躍中の、芸能界きってのバイク大好き女子。ジムカーナ参戦で鍛えたライディングテクニックは本物。YouTubeチャンネル『はしれ!なっちゃんねる』では、バイク動画を多数公開中

37㏄の余裕と弛まぬ熟成扱いやすく、そして速い

中野 今回試乗したのは、ニンジャZX-6R。この連載企画では、2回目の登場となります。

平嶋 モデルチェンジは……していませんよね?

中野 そうだね。まあ、前回と変わっているのは、カラーリングだけってことになるね。

平嶋 それで、改めて走らせてみようというのは、やっぱり何か理由があるんですか?

中野 うん。このバイクは、いわゆる600cc直4のスーパースポーツなわけだけど、他とはちょっと毛色が違うでしょ?

平嶋 そうですね。一般的に600cc直4スーパースポーツの排気量は599ccですけど、ニンジャZX-6Rだけは636ccです。これは、ST600とかのレースレギュレーションからは外れてしまうんですが、ストリートでの乗りやすさを狙ってトルク増大を目指した……っていう感じで私は理解をしています。

中野 それで間違っていないと思うよ。今回は、その〝ストリート重視〞な部分にフォーカスして、ニンジャZX-6Rというバイクを再検証する、というのがテーマです。

平嶋 なるほど。

中野 36cc、正確には37cc排気量が大きいということが、ストリートでどれだけのメリットになるのか?というのを知りたいんだよね。だって、エンジンこそレースのレギュレーションから外れてはいるけど、カリカリのスーパースポーツであることは間違いない。ポジションなんかはかなり前傾しているし、レーシングマシンそのものでしょ。ステップの高さとか、このままレースに出られるレベルだもの。

KAWASAKI Ninja ZX-6R

平嶋 ポジションは確かにスパルタンですよね。でも、コンパクトでスーパースポーツの中では、比較的親しみやすい部類に入ると思いますよ? まあ、なんとかツーリングも楽しめるのではないでしょうか。ギリギリだとは思いますけど。

中野 でも、もっとリラックスしたポジションにしてくれれば、さらに親しみやすいバイクになるわけじゃない?

平嶋 それは確かにそうですよね。もっと割り切って、ストリート向けにデザインしてもよさそうなものなのに。

中野 なんでそうしなかったのかな?って、考えたんだけど。やっぱり〝ニンジャZX-Rの血統〞に連なるバイクだから、そこで日和ることはプライドが許さなかったんじゃないかな、と。

平嶋 なるほど! いわゆる〝カワサキらしさ〞ですかね。

中野 それを感じるんだよね。そもそも、600ccって〝ツウ〞なバイク乗りが選ぶ排気量帯だと思うんだよね。愛車を選ぶ時って、なにかと〝最高級〞とか〝最速〞に目を惹かれがちじゃない?

平嶋 スーパースポーツなら1000ccクラスの方が人気が高いですもんね。

中野 そう。だいたい600ccスーパースポーツって難しいんだよ。レースの場合だと、限られたパワーをいかに使いこなすかが重要。軽いし、車格もコンパクトだし、扱いやすい面もあるから、取っ付きやすいというのは確かにあるよね。でも、速く走ることを突き詰めようとすると、本当に奥が深い。

平嶋 その難しい部分って、やっぱりエンジンからくるものなんでしょうか?

中野 うん、そこが大きいと思うんだ。ある意味で2ストロークエンジン的な、パワーバンドの使い方が求められるから。だからこその636ccだと思うんだよね。

平嶋 私は「636ccだ! トルクが太い!」とまでは感じられてはいないんですよ。599ccのエンジンと同時に乗り比べたこともないですし……。でも、ニンジャZX-6Rで走る時は、パワーバンドを意識しないで走れちゃうのは事実です。レースでコンマ何秒を争うなら別だと思いますけど、3速だろうが5速だろうが、なんとなくなら走れちゃいますから。

KAWASAKI Ninja ZX-6R

中野 そうだよね。スムーズだし、やっぱりトルクに余裕があるんだと思うよ。

平嶋 〝このスピードなら、このギア〞と、バイクが強制してこないんですよ。

中野 わかる。レースなら1速か2速を使うコーナーが、3速でも駆け抜けられるんだよね。しかも〝なんとか走れる〞レベルじゃなくて、ある程度のスピードを保ったまま走ることができる。

平嶋 確かにそうですね。

中野 本来の600ccスーパースポーツって、パワーコントロールがもっとシビアな印象があるけど、ニンジャZX-6Rは、その点すごくイージー。初見のコースだと、どのギアを使って走るか悩むものだけど、あまり意識しなくてもタラーっと走れちゃうからね。

平嶋 ツーリングって初めて走るワインディングを通ったりしますよね? そういう時に、大きなメリットを感じますね。

中野 そうだよね。やっぱり、他にはない余裕を感じるバイクなんだと思う。636ccの排気量でカワサキが狙ったのはソコなんじゃないかな? 実は今回、ニンジャZX-6Rの歴代モデルのスペックを調べてみたんだ。そうしたら、面白い発見があった。排気量が599ccから636ccに上がって、一旦599ccに戻ってから、再び今の636ccに上げられたのは知ってるよね?

もともとのボア×ストローク67mm×42.5mmから、ストロークのみ45.1mmに延長。排気量アップによる余裕ある走りを実現した

平嶋 はい。

中野 で、最初の排気量アップはボアアップで、2回目の排気量アップはストロークアップで行われていたんだ。

平嶋 それって、今のエンジンはより高いトルクを狙っているってことですか?

中野 一般的に、ロングストローク化はトルクアップに効果があるとされている。最初の排気量アップと2回目の排気量アップでは、ベースとなるエンジン自体が変わっているから単純な比較はできないにせよ、実際に走らせた感覚から、間違いないと思うよね。もちろん、それだけじゃスムーズなパワーフィールは生まれてこないから、エンジンの全ての面に手が入っているんだろうけど。

平嶋 トルクもですけど、本当にスムーズですよね。扱いやすいですもん。2速でUターンしても、全然ギクシャクしないです。ただ、Uターンする時にハンドルを大きく切ると、私の体格だとアウト側の腕がタンクに当たっちゃうんですよね。ハンドルの切れ角が小さいのは、スーパースポーツだから仕方ないとしても、そこが気になったなあ。

中野 さすが〝Uターンにうるさい系女子〞は目の付け所が違う。

平嶋 なんですかソレ(笑)。ニンジャZX-6RでUターンする時には、深く伏せて腕をタンクの張り出しの下側に回すとやりやすいです。

中野 なるほどなあ。ポジション全体の評価はどう?

平嶋 前傾はキツいですけど、コンパクトで、私でも「無理っ!」ということはないです。足つきもスーパースポーツの中では良い方だと思います。ハンドル位置も低いですけど、乗り手に近い感じです。テキスタイルのウエアなら身体の自由度が大きいから、なんとか一人で取り回せますね。レーシングスーツだと厳しいですけど。中野さんの体格だと、どう感じます?

中野 僕は、サイズ感的にはピッタリ。ほぼレーシングマシンのポジションだし、攻めれば攻めるほどシックリくる感じ。まあ、僕も大きい方ではないから、大柄な人だと窮屈に感じることがあるかもしれないね。そこはライディングスタイルによっても変わるから、一概には言えないけど。コーナリングはどう?

パワーバンドを意識させない自由度の高いエンジン特性【中野真矢】

平嶋 クイッとコンパクトに向きが変わる感じではなくて、スロットルを開け始めて、トラクションがかかってからグイーッと曲がる印象です。「クイッ」ではなく「グイーッ」。走っていて、安心感が高いです。

中野 基本的に安定志向のハンドリングだよね。でも、鈍重ではない。一次旋回にすごく入りやすい。一発目の向き替えがいいね。よく走って、よく曲がって、よく止まる。隙がない、完成度が高いなって思うよね。熟成されてるよ。

平嶋 前回ニンジャZX-6Rを走らせた時も、同じような感想を言ってましたよね。今回のテーマは、ニンジャZX-6Rのストリートを重視した面を再検証ということですけど、どう感じました?

中野 うーん。やっぱり生粋のスーパースポーツなんだと思う。根っこの部分はレーシングマシンだよね。レースに勝つための作り込みがされている。舐めてかかったらいけないバイク。でも、エンジンはフレンドリー。

平嶋さんは、どう感じた?

平嶋 私は、このバイクは今のままじゃもったいない気がします。

中野 と、言うと?

平嶋 だって、エンジンが凄く扱いやすいじゃないですか? 車体だって難しいところはないですよ。だから、ポジションがもっとラクなら、いろいろな楽しみ方ができると思うんですよね。純正オプションでローシートがあればいいのにって思います。足つきは良いに越したことはないです。

ギア選択に迷わないイージーさ! 安定感の高い車体も◎ 【平嶋夏海】

中野 まあ、そこはニンジャZX-Rシリーズのプライドに関わる部分なんじゃないかなあ?

平嶋 じゃあ、ニンジャじゃなくてもいいじゃないですか! Z636とか、ヴェルシス636とか作って欲しいです。それぐらいエンジンが良いですよ。

中野 あー、それはアリかもねえ。確かに、そういう楽しみ方をしたくなるくらい良いエンジン。

平嶋 中野さんは、不満に感じる部分はないんですか?

中野 あえて言うなら、時代に合わせて完成度を高めてきたバイクなのに、電子制御式スロットルになっていないところかな。クイックシフターがシフトアップのみの対応でしょ? これが凄く出来が良い。でも、シフトダウンはマニュアルでやらなきゃならない。そこが惜しい! シフトアップ&ダウン対応になったら、言うことないね!

平嶋 確かに、もったいない。

中野 でも、本当にいいエンジンだから、多くの人に走りを味わって欲しいバイクだね。

Ninja ZX-6RSPECFICATIONS
エンジン水冷4ストローク直列4気筒 DOHC4バルブ
総排気量636cc
ボア×ストローク67.0×45.1mm
圧縮比12.9
最高出力122ps/13000rpm(ラムエア加圧時128ps/13000rpm)
最大トルク7.0kgf·m/11000rpm
変速機6段
クラッチ湿式多板アシスト&スリッパークラッチ
フレームアルミペリメター
キャスター/トレール23.5°/101mm
サスペンションF=SHOWA製φ41mmフルアジャスタブル倒立フォーク(SFF-BP)
R=フルアジャスタブルモノショック
ブレーキF=φ310mmダブルディスク+ラジアルマウント4ピストンキャリパー
R=φ220mmシングルディスク+1ピストンキャリパー
タイヤサイズF=120/70ZR17
R=180/55ZR17
全長×全幅×全高2025×710×1105mm
ホイールベース1400mm
シート高830mm
車両重量199kg
燃料タンク容量17L
価格159万5000円

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