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【JSB1000通算100勝へのカウントダウン|中須賀克行】SUGOで1年ぶりの優勝。通算優勝回数は89から91へ【百”勝”錬磨】

全日本ロードレース選手権第2戦スポーツランドSUGO。その舞台で行われた2レースを終え、中須賀克行とヤマハファクトリーレーシングチームのスタッフは、実に1年ぶりとなる勝利を静かに、そして深く噛み締めていた。JSB1000クラスでの通算優勝回数は、レース前の89から一気に91へ。数字以上に印象的だったのは、レース内容と、その走りが示した確かな手応えだ。苦しい時間を乗り越えた先にあったこのSUGOでの連勝は、“強い中須賀”の完全復活を誰もが実感する瞬間となった。

Katsuyuki Nakasuga
1981年生まれ、福岡県出身。2005年から全日本ロードレースの最高峰JSB1000クラスに参戦を開始し、2023年までの19年間で12回のチャンピオンを獲得。特に2021~2022年は2年連続で全勝した。鈴鹿8耐も2015~2018年に4連覇している
PHOTO/YAMAHA TEXT/M.SAKUMA
取材協力/ヤマハ発動機 
☎0120-090-819 https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/

事前テストで好調な仕上がりライバルは元チームメイト

レースの1週間前、スポーツランドSUGOで行われた事前テストは、中須賀克行にとって手応えのある内容だった。吉川和多留監督も「テスト項目をしっかり消化できたし、順調な仕上がりです」と語り、チーム全体に前向きな空気が漂っていた。

ただし、その言葉には続きがあった。「テストは夏の天候でした。レースウイークは寒くなる予報で、しかも雨の可能性がある。あまりにも環境が変わるとテストデータが活かせなくなるので、そこが唯一気になるところです」

その不安は、残念ながら現実のものとなる。レースウイークの金曜日午後から気温は一気に低下し、パドックではダウンジャケットを着込む関係者の姿も見られた。

土曜日の予選では、最速タイムこそ浦本修充に譲ったものの、中須賀はセカンドベストを記録。その結果、レース1はセカンドグリッド、レース2はポールポジションからのスタートとなった。

予選と同日に行われたレース1は、元チームメイトで後輩の野左根航汰との一騎打ちとなる。テール・トゥ・ノーズのまま最終ラップに突入し、野左根は「ここしかない」とハイポイントコーナーからレインボーコーナーで勝負を仕掛け、トップに立った。

しかし、その展開は中須賀の想定内だった。「ハイポイントからレインボーは、かなりタイヤが厳しい状況で、後ろにいた航汰も見抜いていたはず。だから仕掛けてくるならここだと予想していた」

その言葉どおり、中須賀は直後の馬の背コーナーでのブレーキングで再びトップを奪還。そのまま野左根の追撃を抑え切り、0.004秒差でチェッカーを受けた。昨年のSUGOレース1以来、実に1年ぶりとなる勝利だった。

レース終盤で中須賀がタイヤを使い切る展開は珍しい。一度は引き離した野左根が再び追い上げ、スリップストリームに入ったことが、結果的には誤算だったのかもしれない。スリップストリームに入る側はタイヤへの負担が少なく、前を走る中須賀のタイヤが先に厳しくなった。その構図が、あの最終局面を生み出していた。

レース最終盤での強さこれが中須賀の必勝方程式

翌日曜日に開催されたレース2は、レース1で好走した野左根航汰が早々に転倒し、戦線を離脱。レースは中須賀克行と浦本修充による一騎打ちの様相となった。

レース1終盤で厳しい戦いを強いられた反省から、中須賀はレース2では序盤、長島哲太と浦本による首位争いの後方にポジションを取り、数周にわたってタイヤを温存する戦略を選択。その後、浦本がトップに立つと中須賀はしばらく2番手をキープし、レースが折り返しを過ぎた18周目、馬の背コーナーで浦本がわずかにミスを犯すと、その一瞬を逃さずトップを奪取。一気にスパートをかけた。

「あっという間に距離が広がった」と浦本が振り返るほど、その加速は鮮烈で、もはや追撃の術はなかった。

中須賀は最終ラップにファステストラップを記録しているが、これは過去にも何度か見られた光景で、「タイヤをしっかり使い切ってレースを終える」という彼のスタイルを象徴するものだ。言い換えれば、万一に備え、最後まで余力を残したうえで勝負を締めくくっているということでもある。

これでクラス通算91勝目。中須賀は、昨シーズン前半に重ねた転倒によって身体にダメージが蓄積し、シーズン中盤以降は盤石な状態ではなかったことを明かしている。今回の優勝にも破格の感情を前面に出すことはなかったが、それは「身体さえ万全であれば勝てる」という確信を持ち続けていたからだろう。

完全復活を印象づけた中須賀の次戦は、8月3日に開催される世界耐久選手権第3戦、鈴鹿8時間耐久ロードレース。2019年以来の参戦となるが、2015年から2018年にかけては4連覇を達成しており、同一ライダーによる4連覇は史上初。優勝回数では歴代3位タイの記録を持つ。

現在の最多優勝記録は高橋巧の6勝。その大記録に迫る戦いが、再び始まろうとしている。

Race1 Weather:Cloudy/Track:Dry 2025/5/24

PosRiderTeamMachineTypeLapTotal TimeBestNote
1中須賀 克行YAMAHA FACTORY RACING TEAMYAMAHA YZF-R1YAMAHA2231’46.5681’25.732Fastest
2野左根航汰Astemo Pro Honda SI RacingHonda CBR1000RR-RHonda2231’46.5721’25.830
3日浦大治朗Honda Dream RT SAKURAI HONDAHonda CBR1000RR-RHonda2232’14.6011’26.795

Race2 Weather:Cloudy/Track:Wet 2025/5/25

PosRiderTeamMachineTypeLapTotal TimeBestNote
1中須賀 克行YAMAHA FACTORY RACING TEAMYAMAHA YZF-R1YAMAHA2232’15.6551’26.071Fastest
2浦本 修充AutoRace UBE Racing TeamBMW M1000RRBMW2232’32.2881’26.726
3津田 拓也Team SUZUKI CN CHALLENGESUZUKI GSX-R1000RSUZUKI2232’32.2881’26.726

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