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ハーレー和尚のバイク説法「蓮華の五徳(れんげのごとく)」

*2023年5月号から抜粋

バイク寺として親しまれる大阪府能勢町にある「妙見宗総本山 本瀧寺」の執事長。40歳の時に大型二輪免許を取得。ショベルに乗るハーレー和尚として、バイク講話など交通安全普及に努める

本瀧寺のシュウケンです。皆さんがこの本を読まれるころは4月になっていると思います。4月といえば新年度の始まりで、入学式やお引越しなども多いことでしょう。またお花見や下旬にはGWが始まるなど楽しいイベントが盛りだくさんです。じつは仏教では4月8日が、お釈迦様の誕生日とされています。この日は灌仏会(かんぶつえ)として誕生を祝う所もありますが、日本では一般的に花祭りとして行われることが多いみたいです。

古くから仏教と花には深い繋がりがあります。厳しい自然に耐えて美しく咲く花の姿は、厳しい修行に耐え悟りを開く、仏の教えと重なります。なかでも法華経の『南妙法蓮華経』でも唱えられる“蓮華”、つまり蓮の花は、仏教のシンボルとして親しまれています。一説では仏教の伝来と一緒に日本に入ったともいわれ、「高貴な仏の悟り」を意味します。

蓮華とはお釈迦様の故郷・インドを原産とする蓮や睡蓮の総称。ちなみに中華料理などで使うレンゲは、散った蓮の花に形が似ていることが由来とされる
極楽の絵などでもよく描かれている蓮華。仏や仏像の台座のことを蓮華座、蓮華台とも呼び、また仏具の一部にモチーフとしても取り入れられなど、仏教と深い関わりがある

そんな蓮華には、五つの徳が備わっています。一つ目は『汚泥不染(おでいふぜん)の徳』。蓮は泥の中で育ち、綺麗な花を咲かせます。人も同じで、どのような環境にいても、心の中は清らかに保てるということです。二つ目は『一茎一花(いっけいいっか)の徳』。蓮は一つの茎に一つの花を咲かせます。つまり人は一人一人が唯一無二の存在です。誰の代わりでもないので、自分自身の人生をしっかりと歩みましょうという意味です。三つ目の『花果同時(かかどうじ)の徳』は、蓮は花が咲くと同時に種ができるとされるように、人は誰でも生まれた時から仏の心が備わっているとされています。四つ目は『一花多果(いっかたか)の徳』。蓮は一つの花にたくさんの種ができます。自分の悟り(開花)が多くの人を幸せにできます。そして最後が『中虚外直(ちゅうこげちょく)の徳』です。蓮の茎は、外側は硬いですが中は空洞です。そして太陽に向かって一直線に伸びます。これは我欲を空にして目標に向かって努力をしましょうという意味が込められています。これら5つを仏教では『蓮華の五徳』と言います。

有り難いことに当寺やカフェに多くのライダーが来られます。私自身、時間の許す限り彼らとお話しをさせていただいています。はっきりと言えることは、彼ら一人一人はとても立派なライダーです。誰一人、事故や交通違反をしようとしている人はいません。また他の人に気を使い、決して迷惑をかけようなどとは考えていません。ただツーリング先での解放感で少し無茶をしたり、急いでいる時などつい無理な運転をしてしまうことがあります。グループで出かけて羽目を外してしまうのもそうです。一人一人は立派なライダーですが、その時の環境につい染まってしまうだけだと私は思います。『蓮華の五徳』。すべてのライダーが『汚泥不染の徳』でありますように願います。バイクを好きになり、免許を取った時から皆さん一人一人の中には『花果同時の徳』があり、そして『一花多果の徳』の可能性を秘めているのです。

合掌

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