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魚の旨いこの季節は銚子漁港で絶品・海鮮丼!


年間総水揚げ量日本一の銚子漁港周辺は、うまい海鮮丼が食べられるベストスポット。
この時期でもバイクで簡単にアクセスできるので、真冬のグルメツーリングなら銚子に決まり!!

冬だからこそ魚を食す意味がある

「魚だな」と、オレが言った。
「魚ですね」と、編集タカタが応えた。

事前の打ち合わせは、それで終わった。とりあえず、魚。何はなくとも、魚。バイクで魚を食べに行く。バイク乗りであり、釣り人でもあるオレと編集タカタにとって、最高の組み合わせと言えた。

「あ」と、オレが言った。
「なんスか?」と、編集タカタが応えた。
「せめてさ、行き先ぐらい決めとかない?」「安心してください。決めてます」編集タカタは即答した。頼もしい。実に、頼もしい。
「で、どこに行くのさ?」「銚子です」「決まり!」今度はオレが即答した。

魚好きにとって、「銚子」という地名はぐわんぐわんと心に響く。響きまくる。何しろ銚子漁港は、年間水揚げ量5年連続日本一なのである。その量、例年おおむね20万トン以上。もはや多すぎて我々の頭脳では理解できないものの、テンションは上がるわけだ。

しかも銚子漁港は高速道路の最寄りインターチェンジ(東関東自動車道・佐原香取IC、圏央道・稲敷東IC、銚子連絡道・横芝光IC)からいずれも下道でおおよそ1時間はかかる。

そこがまたいいのだ。高速道路網が発達した今、日本随一の漁港を目指してのんびり下道ツーリングできるのも、なかなかオツではないか。

お昼に、銚子漁港でうまい魚さえ食べられればいい。あとは気の向くまま、心のままで、ほとんどノープランだ。そしてオレと編集タカタが走らせるトライアンフ・ストリートツインとドゥカティ・スクランブラーは、こういったルーズなツーリングに最適である。

走ることも、止まることも苦にならないから、「オッ」というものを見つけた時に、迷うことなく立ち寄ることができる。しかも銚子周辺はほどよくひなびており、なかなかシブいのだ。

バイク乗りであり釣り人であるオレと編集タカタは、今はちょっとした旅人になって、銚子の町をうろついた。
「あれなんスかね」「行ってみよう」。まさにノープランだ。

房総半島東端は、北側の銚子から南側の外川にかけて風情ある銚子電鉄がぐるりと囲む。犬吠埼を中心にこぢんまりとした観光地になっており、バイクでの散策が楽しい。

鼻孔に飛び込む、いい匂い…!?銚子電鉄・犬吠駅

そうやってユルユルと銚子を走っていると、いろいろなものが目と鼻孔に飛び込んでくる。……鼻孔!?
なんかいい匂いする!「なんだこの香ばしさは!」「醤油……ですかね?」「醤油……だな」「行ってみますか」「む!」

鼻をピクつかせながら辿り着いたのは、銚子電鉄・犬吠駅だった。
「なぜ駅から焦げた醤油の香りが漂っているのだ!」「アヤシイですね」「アヤシイな」「これは調査せざるを得ないですね」「やむを得まい……」

駅舎内に足を踏み入れると、その場で名物・ぬれ煎餅を焼いてくれる売店があった。オレたちはやむを得ずぬれ煎餅を購入し、しっとりした食感と、しっかり染みわたった旨味を堪能しながらも、昼飯の魚料理に向けて注意深くボリューム調整するのであった。

「危なかったな」とオレは言った。
「危なかったですねえ」と、編集タカタが応えた。

「ぬれ煎餅、つい食べ過ぎるところだった」「予想以上に旨かったですよ」「食べ過ぎてしまっては、昼食に差し障るからな」「間食で腹一杯では、メインが楽しめませんからね」

間もなく昼時を迎えようとしていた。我々はいそいそと銚子漁港に向かった。

そして我々は銚子漁港へ

「ところで、本日はいったい何を食すのかな?」。オレの質問を待ち構えていたかのように、「ふっふっふ」と編集タカタが不敵な笑いを浮かべた。

「何だと思います?ふっふっふっふ……。マグロですよ、マグロ。銚子と言えばマ・グ・ロ!」「な、なにっ!?マグロ!?」

銚子漁港で水揚げされる魚といえば、イワシやサバ、サンマというイメージが強かった。しかし15年4月に第一卸売市場がリニューアルオープンしたことをきっかけに、近海マグロ類の水揚げ量が大きく伸びているのだそうだ。

本マグロ、メバチマグロ、ビンチョウマグロ、マカジキ、メカジキなどの大型魚が生のままドーンと水揚げされる様子は、魚好きの我々ならずとも興奮のルツボに叩き込まれること間違いナシだ。

「生命の息吹を感じる」港は男を詩人にするのだ

港を見て回りながら、編集タカタがボソリとつぶやいた言葉を思い出す。漁船からトラックへと水揚げされる魚を眺めて、彼はこう言ったのだ。
「生命の息吹を感じますね」
「なーに詩人ぶってんだよ!」と茶化したが、それは確かだった。

銚子市場の食事処「万祝(まいわい)」

そしてついに我々は、同市場の食事処「万祝(まいわい)」のテーブルについたのである。目の前の丼には、今にもがこぼれ落ちそうな勢いでお造りが盛られている。

「来ましたね」「来たな」「いただきます」「いただきます」。以降我々は、ほとんど会話を交わすこともなく、わっしゃわっしゃと丼を掻きこんだ。「味わう」とか「堪能する」なんていう上品な食し方ではない。もっと本能的に、ガーッと、かっ食らったのだ。

すべてが口の中でとろけていく。
「うっ……、うめぇ……」「うっ、うまっ……」。唸り声が、ふたりのコミュニケーションだった。そして、それだけで十分だった。

バラエティ豊かな魚が水揚げされる銚子漁協直営店だけあって、魚料理へのこだわりがハンパない「万祝」。もっとも鮮度がよく、もっとも旬な魚が選び抜かれているから、そりゃあ、口数も減るさ……

冬にしか味わえないものをバイクで楽しむという贅沢

白身魚のソースカツ丼780円

白身魚のソースカツ丼 780円

圧倒的なボリュームをもって、海は自然の力強さを見せつける。
黒光りする巨大なマグロもしかり、途切れることなく水揚げされるサバもしかり。生命感にあふれる銚子漁港で、こうして命をダイレクトに口中に放り込んでいるのだ。
詩人タカタでなくても、何かこう、胸に迫るものがある。

本マグロは、10~1月頃までが旬と言われる。冬に備えてたっぷりとエサを食べ、脂が乗るのだ。
我々は「脂が旨い!」などと言っているが、マグロにとっては懸命な生命活動の結果である。

「いただきます」「ごちそうさまでした」という美しい日本語の意味するところが、ダイレクトに伝わってくる。命をいただくということは、本当にありがたいことなのだ……。

なんてことを少しだけ考えながら丼を食した我々は、すっかり柔和な表情になり、「最高でしたね」「文句なしだな」と腹などさすりながら、営業時間いっぱいの午後3時まで「万祝」で過ごした。

■万祝(まいわい)

銚子漁港の生マグロを中心に、地の魚をふんだんに使った料理の数々は、贅沢にして安価。その日の水揚げに応じ最良な魚が用いられるというからリピート必至だ

千葉県銚子市飯沼町186
TEL:0479-22-3200
営業時間:8:00 ~ 15:00
定休日:火曜
銚子市漁業協同組合 (choshi-gyokyo.jp)

外に出て、バイクにまたがる。
夕刻を迎え、気温がグンと下がっている。冬が本気を出して我々を包み込もうとしている。

「暗くなる前に帰ろう」「そうしますか」。腹の内側から生命の息吹を、その熱を感じながら、我々はバイクを走らせる。冷たい風さえもひどく心地好かった。

首都圏から片道約2時間半。日帰りツーリングにほどよい距離感で、ほどよい昔風情と抜群に旨い魚が味わい尽くせる銚子。一度で終わることなく、何度でも訪れたい土地だ。

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