心酔させる“カッコイイ”がここにある|昭和バイク/KAWASAKI・Z1

1972年に登場したカワサキZ1は、旧車文化の象徴にして現代でも色褪せない“鉄の馬”。その魅力を再定義するような、ウエマツが手掛けた創業30周年記念フルカスタムZ1が、今ふたたび熱視線を集めている

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世界一を手にした存在が愛される要素、そこにバイク文化が融合した

1972年に登場したカワサキ900 Super4、Z1。ティアドロップタンクに絶妙なカーブでアップしたテールカウル。小股の切れ上がったスタイルは、50年以上経ても色褪せない。それだけでなく、世界初のDOHCフォアであり当時世界最強だったエンジンのパフォーマンスもセットになって、“絶版車”と呼ばれる日本メーカーが作った旧車文化の中で間違いなく中心にいる。

すでに販売台数では世界一になっていた日本製バイクだったが、速く走る性能の勝負ではまだ勝てておらず、60年代初頭は一歩前に出ていた英国製2気筒スーパースポーツへ追いつこうと各社は前だけを見て突き進んでいた。そして、1969年に量産市販車としては初となる直列4気筒のホンダCB750FOU Rが登場して世界中を驚かせ、その上をいくエンジンを搭載し世界最速の記録を塗り替えたZ1の登場は、頂点に立ったことを高らかに宣言したようだった。

日本国内仕様としてZ1をそのまま排気量だけスケールダウンさせた750RS、通称Z2と合わせて丸いタンクの空冷Zがなぜここまで人気なのか。特別と言ってもよい存在になっているのか。理由のひとつとして70年代のやんちゃなバイクライフと、そこから発展した漫画や映画などのサブカルチャーの影響は無視できない。

この黒いZ1は、絶版車販売の経験と実績においてトップランナーである『ウエマツ』が自社の創業30周年を記念して制作したスペシャルな1台。巷で「黒豆」と呼ばれた70年代丸タンクZのワル仕様をオマージュしながら、すべてを組み直し、厳選したパーツで制作されたフルカスタム車。

ガンコート塗装のエンジン、集合管、HA YASHIキャスト、ダブルディスク、柄のない薄いシート、CRスペシャルキャブ等多くの手が入っている。空冷丸タンクZの持つ魅力がちゃんとありつつ凄みを増した。70年代に青春を過ごした世代はノスタルジックな気分になり、それを知らない若者にとっては現代車が持っていない新鮮な姿。バイクが鉄の馬と呼ばれていた頃のホンモノ感が心の琴線を震わせる。普遍性のある“カッコイイ”がここにある。

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