
冬季閉鎖は誰が決めている?|磐梯吾妻スカイラインに学ぶ“道の冬眠”と再開の裏側
冬の気配が近づくと、ツーリングの計画につきまとう不安が「冬季閉鎖」だ。どんなに綿密にルートを練っても通行止めの看板を前に立ち尽くす瞬間ほど切ないものはない。では、その「冬季閉鎖」はどのように決められ、どんな判断のもとに行われているのだろうか
冬季閉鎖はライダーの命を守るための“必然”
秋冬の時期に走るライダーにとって、もっとも出くわしたくない状況のひとつが、ツーリングルートに予定していた道の冬季閉鎖だ。事前に道路状況を調べていても、前日〜数日前からの急な気温低下で閉鎖期間が早まる場合や、その日だけ急きょ閉鎖となるケースもある。平地では心地よい風でも、山に入ると一気に冷え込み、手がかじかむのが秋冬の時期。それもそのはずで、標高が100m上がるごとに気温は約0.6度下がると言われていて、標高1500mの道なら、平地より9度も低い。晴天でも午後には氷点下になることがあり、日陰には霜が残ることも。ここ数年の秋冬の時期は局地的に急激な冷え込みとなる場合もあるので、前ぶれなく走行できないほどの低温下となることも考えられる。
そんな中、ようやくたどり着いた先で冬季閉鎖の看板を前にしたとき、「ついてないな……」と不運に感じるかもしれないが、凍結の恐れがある道路を走るリスクを省みるとそれはむしろ幸運なこととも言える。冬季閉鎖は、ライダーの命を守るための〝道の冬眠〞なのだ。
とはいえ、想定外の冬季閉鎖はできるだけ避けたいのは、誰もが同じ。閉鎖となる道路には、例年おおよその開始と解除の期間はあるものの、実際にはどのように管理者は閉鎖時期を判断・決定をしているのだろうか。福島県の絶景道・磐梯吾妻スカイラインを管理する、福島県土木部道路管理課の伊藤仁規さんに話を聞いた。
「磐梯吾妻スカイラインの場合ですと、冬の閉鎖時期については、期間というのはとくに前もって決まっていません。その年の天気や気象状況、周辺エリアも含めた積雪や凍結の可能性を見て、いつから閉鎖になるのかの判断・決定をしています。開通の際も同じで、道路の雪解けや暖かくなった気候の状況を見て解禁となる日が決まります」
急な気温低下の場合は、前日や当日の判断で急きょ閉鎖となる場合もある。閉鎖の恐れがあるエリアに出かける際は、事前に十分な下調べをしてほしいとのことだ。「閉鎖となることが決まった後は、速やかに県の道路HP等で告知するようにしています。ライダーの皆さんには都度ご確認をお願いしています」
磐梯吾妻スカイラインの場合は、裏磐梯観光協会のHPで、周辺の道も合わせて冬季閉鎖の予定を確認することができる。問い合わせ先も明記されているので、閉鎖が心配な場合は現地情報を聞いてみる安心だ。少しでも閉鎖の恐れがある場所へのツーリングを計画する際は、閉鎖に備えた別ルートを調べるなど、できる限りの事前確認と備えをしっかりしておこう。
閉鎖中の道路は、単に放置されているわけではない。冬季閉鎖中も管理者は定期的に道や周辺状況の点検を行い、雪解け後に再び問題なく走行できるように準備を進めている。例えば、雪崩によるガードレールの損傷や路面のひび割れは春の開通時期に向けた課題であり、補修作業などが行われることもよくある。我々ライダーが知らない間に、来年の開通に向けての準備は着々と進められていくのだ。
春を迎えて雪解けの季節となり通行止めが解除されると、道路はまるで眠りから目覚めたように再び我々ライダーを迎えてくれる。新雪の残る山肌を横目に走る道路は、その季節限定の美しさ。その景色を楽しみに、春の訪れを待ちたい。
冬季閉鎖/解除が実施されるまでのおおよその流れ
①気象・雪害情報収集
県や関係機関が、降雪予報・過去実績・路面凍結予測などをモニタリング
②安全性の検討
降雪・積雪、路面凍結・着雪、視界不良、雪崩等の危険性を検討
③道路維持の管理体制
除雪体制・人的資源・資機材(除雪車、融雪剤など)の運用可能性を確認
④関係部署間での調整
県土木部・道路管理課/県北建設事務所/維持管理会社(東信建設など)・警察・観光部門などと協議
⑤公式発表・告知
閉鎖開始日時・解除予定日時を県や道路管理課が告知。通行止めを実施。
⑥閉鎖の実施
気象変動・降雪が早まったり遅れたりしたときには、閉鎖開始を前倒しまたは延期などの判断を行うことも。実際、告知された期日以前に通行止めになる例もある
⑦解除
春になり、除雪・融雪作業が一定程度進み、安全に通行できる状態と判断されれば、解除日時が決まり発表
ライダーが気をつけること
前日もしくは当日に再度確認
冬季閉鎖の恐れがある場所に出かける際は、出発前日の情報だけで安心せず、当日朝にも必ず最新の通行情報を再確認することが重要だ。気象条件や除雪作業の進捗によって、前日まで開通していた道路が急に閉鎖されることもある。公式サイトや交通情報アプリを活用し、安全なルート選択を心がけよう
例年の冬季閉鎖時期を確認
その年の寒さによって前後することはあるものの、多くの道路では毎年ほぼ同じ時期に閉鎖・開通が繰り返されるため、過去の情報を把握しておくことである程度冬季閉鎖時期を予測できる。国道や主要県道の場合、国土交通省や各自治体の道路管理者が公表する閉鎖期間を参考に判断しよう
現地の気候状況を事前にチェック
冬季にツーリングを計画する際、まずは現地の気候状況をチェック。山間部や高地では、平地が晴れていても積雪や凍結が残っている場合が多く、路面状況が大きく異なる。特に標高差のあるルートでは、気温の低下や日陰部分の凍結などがあり、すでに冬季閉鎖となっているケースもあるので注意

