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BikeJIN

【Thinking Time】~バイクの今を読み解く~
⑥バイク駐車場不足によるバイク市場縮小

*BikeJIN vol.216(2021年2月号)より抜粋

ストリートバイクやビッグスクーターが売れまくった90年代後半からバイクの路上駐車が社会問題化した
駐車場法にバイクが組み込まれていなかったため既存の駐車場はバイクを受け入れなかった
2006年に駐車場法の改正と駐車監視員制度が始まり取締りが強化されたのだが、
その前後、二輪業界はどのように動いていたのか

業界活動は間に合わず 駐車場なき法改正が施行

街中に無造作に停められていたバイクの駐車問題に対しては、日本自動車工業会二輪車特別委員会(以降、自工会)を中心とした二輪業界団体が早くから各種の調査を行うなどしており、03年には政府・総合規制改革会議にて「自動二輪車の駐車場整備」を要望した。

当時、自動二輪車(50㏄超)は駐車場法に含まれておらず、二輪業界は「自動二輪車を駐車場法に含ませてほしい」という要望を出していた。なぜなら、法律で定義されていないという宙ぶらりんな状態が、国や自治体、民間事業者が駐車環境の整備に動かない、バイクを駐車場に受け入れない根拠となっていたからだ。

そうした自工会の要望に対して、駐車場法を所管する国土交通省(以降、国交省)は「現行の駐車場法で対応可能」「現行制度下で受け入れ車種の制限はしていないが、必要とあらば周知することは差支えない」と傍から聞いていれば突き放すような回答をしていた。「バイクを停めるところがない!」という窮状は、国交省にはあまり理解されていなかったようだ。

その後、自工会等の団体は、駐車場の設置や管理等で実質的な権限を持つ地方自治体にも要望書を提出し、意見交換を繰り返すなどしてライダーの窮状を訴え、05年には署名活動を開始するなど環境改善のための動きを活発化させていた。しかし、06年6月には「民間による駐車監視員制度」が始まり、同年11月には「改正駐車場法」が施行され、駐車場法に自動二輪車が含まれてしまう。

駐車スペース確保のための提案までし、「駐車場法に早く組み入れてバイク駐車場の整備を促してくれ」とまで要望していたのに、受け入れ側の整備状況などお構いなしに半ば強引に法改正が実施されてしまったのだ。これが、その後、東京都内だけでも12年間で102万台のバイクが取締りを受けるという前代未聞の事態の始まりとなる(都内のバイク保有台数は約100万台)。

なお、駐車場法の改正から間もない07年1月には「改正道路法施行令」が施行され、路上(主に歩道)にバイク用の駐車スペースを設置しやすくするための法改正もあったが、時すでに遅し。同年には全国で52万件もの二輪車駐車違反が発生し、法改正以降のピーク年として記録されてしまった。

b>二輪車(原付+自動二輪)の違法駐車取締り件数の推移(全国)
出展:日本自動車工業会「二輪車を取り巻く環境」(2015年2月3日)による図表を参考に作成

バイク駐車環境改善に関連した主な業界団体の取り組み

「日本自動車工業会」「日本二輪車普及安全協会(旧:NMCA)」「全国オートバイ協同組合連合会(AJ)」の公式WEBサイト、配布・公開資料等から作成すべての活動を網羅したものではないので注意

2003年
[11月]
政府・総合規制改革会議に「自動二輪車の駐車場整備の促進」を要望/自動二輪車を駐車場法に含ませてほしい
2004年
[4月]
・国土交通省都市・地域整備局長と警察庁交通局長に「二輪車駐車場の整備促進についての要望書」を提出/原付と自動二輪車の一定の駐車枠を義務付けるよう法令整備してほしい、路上駐車場の導入も視野に入れてほしいと要望
・自治体担当者との意見交換、以降継続して実施(NMCAと共同)
2006年
[1月]
・署名「街なかにバイク駐車場を増やしてほしい!」(33,774名)を国交省へ提出
[6月]
二輪車駐車場の促進活動を本格的に開始
・1日 改正道路交通法施行/民間の駐車監視員制度が始まる
[10月]
・国土交通省に「二輪車の駐車環境改善を求める要望書」提出(NMCAと共同)
[11月]
・30日 改正駐車場法施行/対象に50㏄超の自動二輪車が含まれる
2008年
[3月]
・都議会自民党に対して二輪車駐車場増設を要望(AJ東京)
・東京都、警視庁、東京都道路整備保全公社らと意見交換、以降継続(AJ東京)
[4月]
・二輪車駐車場問題に対して、地方自冶体への要望活動開始、以降継続して実施
2009年
[3月]
・「バイクに駐車スペースを!」(100万人超)署名運動実施(NMCAと共同)
2011年
[1月]
「自治体の二輪車駐車場・事例集2011」資料集発行、以降2013年度版、2016年度版と発行を継続
[5月]
・“駐車場ここにつくって”リクエスト開始
2013年
・自民党オートバイ議員連盟総会開催ほか、与野党にオートバイ議連が発足
[10月]
「自治体の二輪車駐車場・事例集2013 自転車条例改正による自動二輪車受け入れ」資料集発行
*2016年版はこちら

*参考→「三分で読む! バイクの駐車環境 バイクにもっと駐車スペースを!」(JAMA)

政治家へのロビー活動と 大規模な業界活動

06年から駐車環境改善への活動を本格化していた全国オートバイ協同組合連合会(以降、AJ)は、「法改正のためには議連の力が必要」と、かねてより協働していた自民党オートバイ議員連盟(01年発足)に加え、多くの与野党にオートバイ議員連盟の発足を働きかけ、駐車環境を含めたバイクの利用環境改善に向けて、勉強会や意見交換会の開催を続けた。
 

法律を制定・改正することができる国会議員が居並ぶ場で、国交省や警察庁といった関連省庁の担当課長らに直接実情を訴えたほか、毎年8月19日(バイクの日)には関連省庁を訪問し、意見交換や陳情といった活動を続けている。
 
13年からは「バイクラブフォーラム」という二輪業界団体、関連省庁、地方自治体らによる産業振興、市場発展のための取り組みも開始され、ロードマップの中にも「駐車場整備、適正な規制」が課題として挙げらている。自転車等駐車場に125㏄まで受け入れるよう自治体に条例改正を促す、民間駐車場事業との協業提案等を経て、四輪と同じくらいの整備状況(現在、二輪は四輪の1/6程度)、駐車違反の半減がゴールとされている。
 

近年は、警察庁に対し、生活の実態に考慮して駐車禁止区間から『2輪を除く』等の措置を要望するなど業界団体による活動は引き続き行われている。

2008年7月8日、バイク雑誌の編集長らで組織された「二輪車に関わるジャーナリスト有志一同」が世話役となり意見交換会を開催。二輪専門誌による統一キャンペーンを行い、各誌の表紙にロゴマークを配置した。ライバル誌が協働したのはそれだけ状況が切迫していたからだ。

東京オートバイ協同組合が作成したリーフレット。東京都では2006年以降、100万台を超えるバイクが駐車違反で取締りを受けた

2008年発行のパンフレット「バイクに駐車スペースを!」では、国と地方自治体に対して駐車環境改善への取り組みを促した

<規制緩和に向けたロビー活動>
吉田純一氏(左端)が率いた全国オートバイ協同組合連合会(AJ)等による働きかけで、与野党にオートバイ議員連盟が発足した。2016年には自民党政務調査会に二輪車問題対策プロジェクトチームも発足し、駐車問題を含めた利用環境改善の動きが加速した。

<日本二輪車文化協会が実効的なセミナーを実施>
バイク駐車環境改善に関連した主な業界団体の取り組み元AJ会長の吉田純一氏が組織した日本二輪車文化協会(AMAC)による第1回二輪車推進フォーラムの様子(2016年11月)。自民党オートバイ議連の逢沢一郎会長も来場し欧州の二輪車駐車環境に関するセミナーに参加した。

今回は、駐車問題への二輪業界の関わりについて説明した。次の記事では、駐車場の整備拡充に大きく関わる自治体と民間駐車場事業者の取り組みについて説明しよう

Writer 田中淳磨(輪)さん

二輪専門誌編集長を務めた後、二輪大手販売店、官庁系コンサル事務所への勤務を経て独立。三ない運動、駐車問題など二輪車利用環境問題のほか若年層施策、EV利活用、地域活性化にも取り組む
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