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【Thinking Time】㉔駐車環境整備の通達が再発出!活かすも殺すも我々次第か?

*BikeJINvol.232 (2022年6月号)より抜粋

警察庁から都道府県の警察本部長宛に「地域の実情に応じた自動二輪車等に係る
駐車環境の整備に向けた継続的な取組の推進について」という通達が出された。
この通達の意味、その活用についてなにが求められているのかを考える必要がある

絶望的に増えない……補助標識「二輪を除く」

 2006年の駐車場法改正当時から要望されてきた駐車規制の緩和措置「二輪を除く(補助標識)」だが、地方の観光地や商店街などでは見かけるものの、東京都内には未だ1カ所もない。5年前に前通達が出された時にも期待されていたが、どうして増えなかったのかを徹底検証しなければ具体的な対策も見えてこない。

3月24日、警察庁から警視庁を含めた各道府県警察本部に「地域の実情に応じた自動二輪車等に係る駐車環境の整備に向けた継続的な取組の推進について」という通達が発出された。こうした通達は過去にも出ており、前回の通達(以降、前通達)の有効期限が3月末ということで、前日には与党オートバイ議連の両会長が国家公安委員長を訪れ、再発出の要望書を提出していた。今回は、この通達と駐車環境の現状、今後について考
える。

3月24日、警察庁から都道府県警の本部長宛に再発出された通達

前通達に比べると「地域の実情に応じて」「関係機関との連携・協力を強化」するという一歩踏み込んだものだが、取り締まりの基準が緩和されるわけではない。取り締まりについては、また別の通達がある

放置車両確認標章をつけられた原付一種。車体が小さいからと油断しがちだが、原付スクーターは放置駐車違反で取締りを受けやすい車種だ
「自動二輪車等に係る放置駐車違反の取締り等について」という通達には悪質・危険・迷惑という方針はあるが取り締り基準の記載はない

駐車需要を可視化してライダーの声を届けよう!

 この通達を簡単に言えば、各地の警察に対して「地域の実情に応じたバイク駐車環境整備に取り組むように」というものだ。ただし、駐車場や駐車スペースの増設に関わる規制緩和について警察が所管しているのはほんの一部だから、実際には「自治体などの道路管理者に働きかけたり積極的に協力してね」というお願いとも受け取れる。

 それでも、警察が所管するところでは、パーキング・メーター(バイクも利用可能)や二輪車専用パーキング・チケットの設置、さらには駐車規制緩和にあたる補助標識「二輪を除く」の設置など、警察ができることも少なくはない。 ただ、歩道上の駐車スペースや四輪駐車スペースの二輪転用といった、駐車場・スペースの大半を占める部分では、自治体や民間事業者が所管・主導しており、警察はそうした設置の際に指導・アドバイスするような立場にある。

 だから、本通達が出たからといって、各地の警察がバイク用駐車スペースの設置に急激に取り組むことはない。感覚的にはもっとゆるやかなもので、だからこそ、何度も同じような通達が出ているのに、都内には「二輪を除く」の補助標識が未だにひとつもないということだろう。

 また、たまに勘違いされているが、この通達で取締り基準が緩和したり、バイクの路上駐車が可能になったりということはない。取り締まりに関しては、また別の通達「自動二輪車等に係る放置駐車違反の取締り等について」が出ていて、バイク放置駐車違反に関する基本方針(重点地域、悪質・危険・迷惑性の高いものを重点的に取り締まる)はあるが、取締り基準は示されていない。駐車監視員による確認事務についても記載があり「自動二輪・原付重点地域」を指定し公表することになっている。重点地域しか取り締まらないわけではないが、自治体のサイトで重点地域を調べれば無用なリスクは減らせるだろう。

 話を今回の通達に戻そう。どの通達にも共通することだが、警察に求められているのは、自治体(地方公共団体)といった関係機関との連携だ。警察が所管する指導・取り締まりの活動や自治体(道路管理者でもある市区町村など)が把握している駐車需要などの情報を互いに共有することで初めて、駐車規制の見直しや駐車場・スペースの設置といった話、必要性につながっていく。

 前通達を受けて各地の警察がどう取り組んだかの報告は公開されていないが、これまではここが弱かったのだろうと推測するし、併せて二輪業界や我々ユーザーの取り組みもうまくなかったということだろう。

 自治体、道路管理者、民間事業者等の認識をすべからく共有する場はなかったし、ユーザーの声を可視化する場もほぼなかった。日本二輪車普及安全協会が集めている「バイク駐車場、ここにつくって!」も含め、これらの情報を統合的に見られるものは未だにない。我々ユーザーもそうした目で街中の駐車需要を再点検し、警察や役所に要望すべきだ。なお、モビリティ・マネジメントの観点から言えば、システム化の際はオープンソースで構築されるべきだろう。「駐車需要が見えなければ動きようがない」というのは、警察でも自治体でも同じこと。せっかく連携強化の通達が出たのだから、今度こそはライダーやコミューター利用者の声を彼らに届けたい。IoT、ビッグデータ、5Gの時代だ。需要を可視化し、それを活かすための検討会や協議会を立ち上げるなど、いま一度、生活実態に即したバイクの駐車環境をとらえ直すべきだろう。

バイクにとって理想的な停め方を考えながら街中を見てみよう

駐車環境を整備するためには、駐車需要である市民の声を地域の警察署や役所に届けることが重要だ。路上駐車場(道路上や歩道上など)にしろ、路外駐車場(敷地内)にしろ、「ここにこういう駐車場・スペースが欲しい」と具体的に要望すべきだ。特定の駐車禁止区間を規制緩和し「『二輪を除く』を作ってほしい」でもいい

二輪車専用パーキング・チケットを増やす

道路上の駐車可規制である二輪車専用パーキング・チケットは省スペースで設置可能だが、歩道上にも精算機が必要

道路の端を切り下げて斜めの線を引く

道路の側端を切り下げて斜めの線を引くといった手法は欧米・アジアでも主流だ。歩道に乗り上げない仕組みが必要

広めの歩道上に駐車枠を設ける

歩道上を枠で囲って駐車スペースに。緊急避難的な位置づけだが、今後は主流となる可能性もある

四輪車のスペースを分割して二輪用に

都心では余り気味だという四輪駐車スペースの中央に線を引き、バイク2台を停められるようにする

3月23日、与党オートバイ議連の両会長が国家公安委員長に再発出の要望書を提出!

前通達が3月末日で期限を迎えることもあり、3月23日、自民党オートバイ議員連盟の逢沢一郎会長と公明党オートバイ議員懇話会の北側一雄会長から二之湯智(にのゆさとし)国家公安委員長へ「自動二輪車に係る駐車環境の整備の推進について」の通達を再発出するよう要望書が手渡された。その後は、オートバイ政治連盟の吉田純一会長、全国オートバイ協同組合連合会の大村直幸会長、自工会関係者らを交え、課題を踏まえた要望がなされた。

要望書に記載された要望事項は主に3つだった。特に取り組み結果の報告は重要な内容だ
①途切れることなく今後も通達の発出を
②とくに大都市での駐車場整備に向けた働きかけ、駐車規制見直しの推進を
③通達の取組結果の報告を
左から、公明党オートバイ議員懇話会の北側一雄会長、二之湯智(にのゆさとし)国家公安委員長、自民党オートバイ議連の逢沢一郎会長

Writer 田中淳磨(輪)さん

二輪専門誌編集長を務めた後、二輪大手販売店、官庁系コンサル事務所への勤務を経て独立。三ない運動、駐車問題など二輪車利用環境問題のほか若年層施策、EV利活用、地域活性化にも取り組む

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