フレディ・スペンサーがCB1000Fに乗った! Honda モーターサイクル ホームカミング 熊本 2025

日本においては唯一の二輪工場のである熊本製作所を会場とし、ファンと生産現場を結び直すイベント「Honda モーターサイクル ホームカミング 熊本 2025」が10月5日に開催され、多くのバイクファンが会場に詰めかけた。

イベント概要
開催日: 2025 年10 月5 日(日)
会場: 本田技研工業株式会社 熊本製作所
入場料: 無料

スペンサーさんはCB1000Fを大絶賛

今年の目玉は、何と言ってもフレディ・スペンサーさんの来場だ。

イベント前日には会場に隣接するHSR九州で市販予定車のCB1000Fを走らせた。

スペンサーさんは「僕がHRCでテストしていたとき、いつも意識していることがあった。それはフィーリング、アジリティ、安定性の3点なんだ。このCB1000Fは大きいのに軽さが伝わってくる。これまで乗ったバイクの印象はすべて頭の中にあるのだけど、それらと比べても、軽い。ヘルメットをしていたから、みんな見えなかったかもしれんけど、もうすっごいニコニコしながら走ってたんだ」と、その扱いやすさを絶賛。

さらに「CB1000Fには、歴代CBのDNAが確かに受け継がれていると感じた。とりわけエンジンのキャラクターと全体のフィーリングにホンダらしさが濃い。長年ホンダ車に乗ってきた身として、その特徴性は明瞭で、今回の試乗でも強く伝わってきたよ。街中でも楽しいが、サーキットならさらに面白いバイクだね。

1985年当時から比べると最大の進化は安定性だね。サスペンションとグリップの向上により、昔ならライダーに高い技量が求められたシーンでも、今は余裕をもって受け止められる。GPのマシンに“こうあってほしい”と望んだ要素が、市販車にまで自然に落とし込まれている、そんな成熟を感じるバイクになっているよ」と、ホンダのバイク作りに共感していた。

レトロとモダンの“コラボレーション”が美しく、始動音と力感は往年のアメリカン・マッスルカーを想起させるという。ホンダのDNAは明確で、一般ライダーにも扱いやすく、トラックでも愉しいと語る。現代車はサスペンションやタイヤ性能の進化で、リミットを越えても穏やかな余白がある点が最大の進化だと分析。一方、1982年に自身が走らせたCB900F(19号車)は「自分の一部」で、ホンダと歩んだ原点。HRC初期から関わり、ホンダが上り詰める過程に携わった誇りを回想。日本で“スペンサー・カラー”が愛され続ける事実にも笑顔を見せた、という内容である。

トークショーでは現役時代の思い出を語り尽くす!

会場には、1982年のデイトナ100マイルレースで優勝したCB900Fが展示されていた。

実はこのバイク、デイトナ100マイルレースのために組み上げられ、優勝した後どこにも立ち寄ることなく、スペンサーさんの自宅に保管されていたという貴重な1台だ。

今回、10数年ぶりにこのマシンと再会したスペンサーさんは、エンジンをブリッピングして見せてくれた。

「スロットルフィーリングを改めて確かめ、レースマシンを想起させるサウンドと力強さに“原点”を感じたよ。当時18歳だった自分には強大なパワーの制御は容易ではなかったけど、きわめて特徴的なマシンで、どう安定性を高めるかを学ぶ出発点になったんだ。

ホンダと関わり始めた当時からの“スペンサー・カラー”も相まって、この車両は自分にとって特別な存在だね。1980年から40年以上が過ぎたいまも、そのカラーが受け継がれている事実がうれしいね」

GP250cc&500ccでダブルチャンピオンに輝いた1985年

世界グランプリで250ccと500cc、ふたつのクラスにダブルエントリーするという前代未聞の挑戦が決まったのは、1984年6月のオランダGPのときだったという。

当時、エンジントラブルに見舞われたその場で、「両方のクラスに出てみないか」と自らホンダに提案したのだとか。

発想の根底には、かつてケニー・ロバーツが1978年に成し得なかった“ダブル制覇”を実現したいという強い思いがあった。

ホンダ側もこのアイデアに応え、ゼロからマシンを作り上げるプロジェクトが動き出した。しかし、その道のりは決して平坦ではなかった。

250ccと500ccでは、車体の軽さもブレーキングの感覚も、コーナーの立ち上がり方もまったく異なる。しかも、250ccのレースが終わればすぐに500ccが始まる。調整の時間はほとんどなく、当時のトップライダーたちと戦うには、瞬時に身体と感覚を切り替える力が求められた。

「とにかく限られた時間の中で自分を調整することが何より重要だった」と本人は振り返る。

「でも、幼少期からさまざまな種類のマシンに乗り込み、どんな環境でもフィットさせてきた経験が、ここで大きな武器となったんだ。その柔軟な適応力こそが、ダブルエントリーという無謀とも思える挑戦を成功へ導いた要因だったんだと思う」と語った。

オープンしたばかりの「ホンダ熊本ウェルカムパーク」

熊本製作所の正門横に、今年3月オープンした「ホンダ熊本ウェルカムパーク」は一般に開放されている施設だ。

バイクの魅力に触れられる展示スペースやガレージボックス、体験場、カフェスペースなどがあり、敷地内には自然公園も整備されている。ウォーキングはもちろん、ツーリングやドライブの集合場所としても活用できる。

CBR1000RR-Rのフルバンク体験コーナーや、往年の名車の展示も用意されているので、ツーリングで訪れた際はぜひ立ち寄ってみてほしい。

さまざまなコンテンツが盛りだくさんの一日!

Honda モーターサイクル ホームカミング 熊本では、毎年さまざまなコンテンツが楽しめる。普段は入ることのできない工場ライン見学や、ホンダ社員によるワークショップの他、社員食堂で名物のカレーうどんを食べるのも恒例になっている。

ホンダファンはもちろん、すべてのバイクファンが楽しめる内容になっているので、まだ来場したことのないライダーは、ぜひ来年、ツーリングの予定を合わせて訪れて欲しい。

デザインの現場をのぞき見

バイクのデザインを担当する社員が、実際の作業の様子を披露してくれた。

まず、タブレットで外装形状や曲面、グラフィックなどを書き込んでデザインを作成。それを元にクレイを削って、立体物に仕上げて行く。デザイナー、クレイモデラー、そして製造現場の意見がぶつかることもあると言うが、すべてのスタッフが、いい物を造りたいという情熱を持っている。

大人気の工場見学

日本で唯一の二輪製作工場である熊本製作所。ホンダとしては4番目の工場となり、エンジンや部品の製造から組み立てまで一貫して行っている。大型モデルからスーパーカブまで幅広く生産しており、。世界に向けて輸出も行なうグローバルマザー工場としての役割も持つ。

この日は普段入ることのできない製造ラインを見学できた他、製作途中のエンジンなどに触れることもできた。これは貴重な体験だ!

市販予定のCB1000Fに跨がれた!

ほぼ市販車の状態で展示されたCB1000Fは跨がりOKということで、多くの来場者がその感触をチェックしていた。今後のCBシリーズを支えていくであろうモデルなだけに、その注目度はバツグン。

社員食堂名物のカツカレーうどん

社員食堂では金曜日にしか登場しないのがカレーうどん。なぜ金曜日のみかというと、食事中にカレーが跳ねて白い作業服が汚れてしまうから……らしい。翌日が休業日なので、しっかり洗濯して衛生的に月曜日を迎えられるというわけだ。

この日はレトルトのカレーうどんも販売されており、多くの来場者がこれを求めて並んでいた。

定番のフォトスポット

正面玄関前にはバイクやクルマをおいて撮影できるスポットが常設されている。イベントの日はバナーが用意され、スタッフが写真を撮ってくれる。

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