
青木宣篤が3メーカーの3気筒を試乗【TRIUMPH DAYTONA 660|【特集】3シリンダーの誘惑
経験豊富なトライアンフはキャラクター分けも明確
一方、誰にでも安心してお勧めできるのが、トライアンフ・デイトナ660だ。スポーティなフルカウルをまとい、なかなかアグレッシブなルックスだ。だが、アップライトなハンドルポジションからも分かるように、扱いやすさを重視したモデルとなっている。
トライアンフは’68年に最初の直列3気筒モデルT150をリリースしている。会社自体の浮沈はあったが、かれこれ50年以上にわたって3気筒にこだわり続けているメーカーだ。
現行モデルでも、アドベンチャーからスポーツ、そしてクルーザーまで3気筒をラインナップしており、トライアンフのアイデンティティになっている。社名Triumphの「Tri」は、「Triple」の象徴なのではないかと思うほど。

それだけ3気筒を知り尽くし、バリエーションも豊かなトライアンフだけに、直列3気筒の中でも明確なキャラクター分けを行えるだけの下地を持っている。そしてデイトナ660に与えられたキャラクターをひと言で表せば、スポーツライディング入門に最適なモデル、ということになるだろう。
エンジンは、低回転域から粘りを見せてくれる。重めのイナーシャ(慣性モーメント)を感じ、低速でも扱いやすい。「回してナンボ」のスーパーベローチェとは対照的だ。
スロットルを開けていく。7000〜8000rpmあたりで、まるでターボが効いたかのような伸びやかな加速フィールを見せる。
決してピーキーという意味ではない。グンと伸びる感じだ。あくまでもイメージだが、重いクランクが回転上昇に伴って勢いづき、グングンと車体を加速させていく。

この勢いは、もともと重みがあってねっとりとしたフィーリングをベースにしているので、非常にコントロールしやすいのが特長だ。ハンドリングはニュートラルで素直。進入から旋回にかけて3気筒らしい「寝のよさ」を発揮してくれるが、唐突感はない。
昔で言えば400㏄あたりがスポーツライディング入門にピッタリだったが、今のご時世、このデイトナ660ぐらいがちょうどいい。パワー、フィーリング、ハンドリング、そして価格とすべてのバランスが整えられている。ビギナーはもちろん、エキスパートも満足できるパフォーマンスだ。
こういった作り込みは、さすが直列3気筒にこだわり続けているトライアンフだけのことはある。もっとスポーティーに楽しみたいならストリートトリプル675があるし、もっとマイルドに楽しみたいならトライデント660がある。大排気量のゆとりを求めるならスピードトリプル1200シリーズがある。漏れのないラインナップにより、直列3気筒の中でチョイスが完結できるのだ。
TRIUMPH DAYTONA 660
エンジン | 水冷4ストローク直列3気筒 DOHC4バルブ |
総排気量 | 660cc |
ボア×ストローク | 74.04×51.1mm |
圧縮比 | 12.05 |
最高出力 | 95ps/11250rpm |
最大トルク | 69Nm/8250rpm |
変速機 | 6 段 |
クラッチ | 湿式多板 |
フレーム | チューブラースチールペリメーターフレーム |
キャスター/トレール | 23.8°/82.3mm |
サスペンションF | ショーワ製Φ41mmテレスコピック倒立フォークSF-BPF |
R | ショーワ製モノショック |
ブレーキF | φ310mフローティングダブルディスク+ 対向4ポットラジアルマウントキャリパー |
R | φ220mmシングルディスク+1ポットキャリパー |
タイヤサイズF | 120/70ZR17 |
R | 180/55ZR17 |
全幅×全高 | 736×1145.2mm |
ホイールベース | 1425.6mm |
シート高 | 810mm |
車両重量 | 201kg |
燃料タンク容量 | 14L |
価格 | 108万5000円~ |





’16 年に生産終了したスーパースポーツ、デイトナ675 の名を継ぐ。フルカウルながらツーリングや街乗りにも配慮し、扱いやすさを重視している。SHOWA製前後ショック、湾曲したスチール製スイングアームなどを装備しながら、尖りすぎないキャラクターにまとめられている。