
【KAWASAKI VERSYS 1100 SE】重厚にして軽快異色の直4アドベンチャー【中野真矢×平嶋夏海インプレッション】
VERSYSシリーズのフラッグシップが、新たなエンジンを得てリニューアル。直4エンジン搭載アドベンチャーツアラーは、果たしていかなる進化を遂げたのか。中野真矢さんと平嶋夏海さん、お馴染みの二人がサーキットライディングで検証。その走りは“VERSYSとはかくあるべき”という、カワサキの哲学を感じさせるものだった。
ヴェルシスの真骨頂! 直列4気筒エンジンが大きく進化
中野 今回走らせたのは、ヴェルシス1100SE。この春に登場した、カワサキのアドベンチャーツアラーのニューモデルです。
平嶋 以前、この企画で試乗したヴェルシス1000SEがモデルチェンジしたんですよね。でも、パッと見は変わってないようにも思えます。車名からエンジンの排気量が上がったことはわかりますし、単純に排気量アップしただけでなく、あわせて細かく手が入れられたとは聞いていますけど。
中野 確かに。外観上は違いを見つけるのは難しいかも? でも、このバイクでエンジンが変わるのは、大きな意味を持ってると思う。
平嶋 と、言うと?
中野 アドベンチャーツアラーってジャンルは、元々ビッグオフローダーから派生したものだと個人的には考えているんだ。大排気量のオフロードバイクをツーリングに使ったら勝手が良いものだから、そちらの方向に進化した……という。
平嶋 そういうイメージありますね。立ち気味の乗車姿勢とか、長いフロントフォークとか、オフモデルっぽい雰囲気ですもん。
中野 うん。まあ、実質オンロードモデルではあるとは思うけど。で、オフロードモデル由来だからか、一般的に搭載するエンジンは単気筒とか2気筒が多い。そんな中で、ヴェルシス1100SEは直列4気筒。そんなパッケージは他にBMWのS1000XRくらい。少なくともリッタークラスの現行モデルでは、この2機種だけのはず。
平嶋 ですよね。ちょっと希少な感じのするバイクです。
中野 そこがなんともカワサキらしくて、好きなところなんだよね。「マイナーでも我が道を行く」という。
平嶋 中野さんは、カワサキのそういうところ好きですよね?(笑)
中野 好き(笑)。独自性って、それだけでも魅力だと思わない? そしてその象徴であり、ヴェルシスのアイデンティティともいえる直列4気筒エンジンが変わったということは、重大なニュースだと言っていいと思う。
平嶋 納得しました。中野さんの、カワサキ愛の深さに(笑)。
扱いやすさ抜群のエンジンKECSの完成度も要注目
中野 エンジン変わったね、低中速が強くなっている。1000のときより、明らかにトルクアップした。
平嶋 ですね。従来よりも格段に乗りやすくなっています。「パワーアップ!」というより、ライダーの意図に応えてくれる自然な加速感が印象的です。最高出力はもちろん上がってますが、特に感じるのは開けやすさとコントロール性。しっかり速いのに扱いやすい。そんな仕上がりです。
中野 乗りやすいよね。流すだけなら、シフトチェンジしなくても走り切れちゃう感じ。スムーズさと扱いやすさは特筆モノだと思う。
平嶋 排気量の増加分以上の進化を走りで体感できます。
中野 シリンダーボアを変えず、ストローク量だけ増やしてロングストローク化させたことと、フライホイールマスを増加させていることが効いているのかもね。当然、吸排気系とかのセッティングも見直されているそうだし。ただ、これまでの4気筒らしさとはまた違った、より実用域での豊かなパフォーマンスに磨きがかかっているかな

平嶋 どのモードも違和感なく乗れて、よくまとまっている印象でした。スポーツ/ロード/レインの3モードを切り替えてみましたが、どれもバイクのキャラクターが大きく変わることなく、安心感のあるフィーリングで扱いやすい。「これならシーンを問わずに楽しめるな」と感じました。
中野 変わってはいると思うよ。でも、その変化が唐突に伝わらないように、巧みにチューニングされているんじゃないかな? このバイクのインテグレーテッドライディングモードは、パワーやトラクションコントロールだけでなく、サスペンションのセッティングに合わせてトラクションコントロールが調整されるからね。ライダーの感覚に寄り添うような自然な味付けになっていて、安心感のある進化だと思う。
平嶋 あ、なるほど!
中野 モードの変更で乗り味がガラッと変わると、ライダーが驚いたりするでしょ。スポーツモードをもっと過激な乗り味にするとかは可能なはず。でも、そういった過剰な演出を避けて、ツアラーとしての実を取ったんじゃないか? と。カワサキって、そういう真面目なところがあるし、そういうところも好きだし。

平嶋 また、カワサキ愛が溢れている!(笑) ライディングモードでサスペンションのセッティングが変わるという話ですけど、電子制御式サスペンション(KECS)のプリロード変更を試してみたじゃないですか? 面白かったですね!
中野 面白かったね。このバイクはセミアクティブサスペンションを採用しているから、基本的にバイクにお任せで随時セッティングが変わるわけだけど、プリロードもダンピングも好みに合わせた調整が可能。そこでプリロードを高めと低めに振ってみたら、結構違いが出た。けれど、変わらない部分があるというか、変化を感じさせないというか。
平嶋 不思議でした!
中野 プリロードは5段階で調整できるので、まず3段階強めてみた。そしたらブレーキング時に安定感が増して、しっかり減速できるようになった。スタンダードでも十分だけど、強めるとこのバイクのブレーキ性能をさらに活かせる印象かな。
平嶋 私は最初はあまりピンとこなかったんですが、プリロードを高めたらサスの安定感が増してきて、じわじわと良さがわかってきました。車体の挙動も安心できるものになってきて。
中野 反発力がしっかりあるけど、ダンパーの働きで不快な跳ねは抑えられてるよね。マイルドって感じ。
平嶋 逆に3
段階マイナスにしても、「乗れない!」なんてことはまったくなくて、しっかり走れました。多少サスが柔らかく感じる場面はあったけど、ネガに思うような部分はなくて、安心して走れる範囲内だと思いました。

中野 プリロードを落とした時の感触は、けっこう柔らかめになった印象かな。フワッとした動きが出て、バイクの反応が少しゆったりした。
平嶋 私は、スタンダードのプリロードが走りやすいと感じました。
中野 僕は攻めるならプリロードを高めたいかな。でも、サーキットでかなり攻め込んだ時の話だし、ツーリングに使うならスタンダードのプリロードを選ぶと思う。なんにせよ、完成度の高いサスペンションだと思う。人がやること、人が考える部分を、かなり任せられる。
平嶋 進化してますね。このバイク、私には車格が大き過ぎて、オーナーになることは想像がつかないんです。でも、乗り味は好きだし、機能面も凄い。このまま小さくなったらいいのにって思います。

中野 ヴェルシスシリーズには650もあるけど?
平嶋 そっちも気になりますね!(笑) 中野さんは?
中野 1100 欲しくなっちゃったねえ。
平嶋 ツーリング行かないのに?
中野 コレ買ったら行きます!(笑)
KAWASAKI VERSYS 1100 SE






エンジン | 水冷4ストローク直列4気筒 DOHC4バルブ |
総排気量 | 1098cc |
ボア×ストローク | 77.0mm×59.0mm |
圧縮比 | 11.8:1 |
最高出力 | 135ps/9000rpm |
最大トルク | 11.4kgf・m/7600rpm |
変速機 | 6段 |
クラッチ | 湿式多板 |
フレーム | ダイヤモンド |
キャスター/トレール | 27.0°/106.0mm |
サスペンション | F=φ43mm倒立フォークKECS 制御圧側・伸側減衰力調整、スプリングプリロード調整可能 |
R=BFRC lite、KECS制御圧側・伸側減衰力調整、スプリングプリロード調整可能 | |
ブレーキ | F=φ310mmダブルディスク+4ポットラジアルマウントキャリパー |
R=φ260mmシングルディスク+1ポットキャリパー | |
タイヤサイズ | F=120/70ZR17 |
R=180/55ZR17 | |
全長×全幅×全高 | 2270×950×1490~1530mm |
ホイールベース | 1520mm |
シート高 | 820mm |
車両重量 | 260kg |
燃料タンク容量 | 21L |
価格 | 209万円 |