リアタイヤの性能はどうやってを引き出す?

豪快なフルスロットル加速は、サーキットライディングの醍醐味。リアタイヤのポテンシャルを使い切って、鋭く立ち上がりたい!!そのために必要な操作を、中野真矢さんに細かく教えてもらおう。

スロットルワークとV字ラインで、潰す

「急」が付く操作と入力を嫌うというのはリアタイヤも同じ。コーナーの立ち上がりで、全閉からいきなりガバッとスロットルを開ければ、本来のポテンシャルを発揮する前にグリップの限界を超えることにもつながりかねません。

だからこそ、立ち上がりではまず10%程度スロットルを開け、リアタイヤのグリップをつくってあげる意識を持つことが大切。この段階でリアタイヤを路面に喰いつかせることで、その先でさらにスロットルを開けたときに、しっかりタイヤを潰して大きなグリップを引き出せます。

ちなみに、このような走りを実現するためには、いつも提唱している〝V字ライン〞でのコーナリングも重要。しっかりボトムスピードを落とし、最低速度付近で鋭く向きを変えられていないと、立ち上がり側のラインがワイドになって、いつまでもスロットルを大きく開けられず、タイヤを潰せないからグリップも増やせない……と、どんどん悪い方につながってしまいます。

もちろん、ライディングフォームやステップワークなどのさまざまな要素が揃うことで、よりハイレベルな走りが可能になりますが、まずはスロットルワークとライン取りを重視しながら、リアタイヤを潰して、さらなるグリップを引き出す感触を味わいましょう。(中野真矢)

1段階目でリアタイヤに路面を掴ませる

スロットルが全閉あるいはそれに近い状態からコーナーを立ち上がるときは、ドライブチェーンの弛みをなくすようなイメージを持ちながら、最初にちょっとだけスロットルを開け、後輪に駆動力を少し伝えます。

これによりリアのグリップがつくられる感触を得ながら二次旋回を引き出すのですが、このプロセスを意識しながら乗れるようになると、ライディングはワンランク上達します。

身体はハングオフしつつ車体だけ立てて開けていく

マシンを寝かせたままスロットルを大きく開ければ、すぐにホイールスピンまたはトラコン介入につながり、鋭い加速は不可能。本格的な加速態勢に移行するときは、マシンを起こしてタイヤのセンター側を使う必要があります。

ハングオフの状態から、身体をイン側に残しつつ車体だけやや起こすイメージです。

開け始めたら後輪に荷重することを意識する

コーナー進入でフロントブレーキを完全にリリースした直後から、意識はほぼリアタイヤに向いていますが、車体を起こしてスロットルをワイドオープンする段階ではライダーの姿勢や座る位置も、それまで以上にリアへ荷重するイメージ。

完全に車体が立ったらステップ荷重に移行

コーナーを立ち上がり、直立に近い状態で加速する段階では、両足でステップを踏み、シートからお尻を浮かせ気味に。後輪のグリップを高めるというより、頭を前に置いてウイリーを少しでも抑制する狙いのほうが大きいのですが、後輪のグリップがあるからこそ、フロントが浮くような加速ができるのです。

バンクが深い状態で大きく開けるのは禁物

前輪の項でも触れたように、タイヤには摩擦円という概念があり、横方向に多くのグリップを使っているときは、縦方向に割り当てられるグリップが少なくなります。バンク角がまだ深い状態なのにスロットルをワイドオープンすると限界を超えてしまうので、本格的な加速に移行する前に車体を起こす必要があります。

トラコン装備車ならタイヤを上手に使いやすい

近年のスポーツモデルに搭載されているトラクションコントロールは、15 ~20年前のMotoGPマシンと同じくらい制御が緻密で、かなり信頼できます。

ただしタイヤが冷えていて極端にグリップが低いときなどは、うまく介入してくれない場合もあるので注意が必要。

トルクが得られる回転域を使うことが重要

同じ速度でも、低いギアを選べばエンジン回転数は高く、高いギアだと回転数は低くなります。回転数が低すぎるとトルクを得られませんが、逆に高すぎても操縦がシビアになります。

ちょうどいい回転域を使って立ち上がれるようなギアを選択しましょう!

回転が低すぎるとグリップ感が分からない

立ち上がりでちょうどいい回転数が使えているときは、スロットルとリアタイヤがピンと張った強いゴム紐で結ばれていて、多少の遊びがありながらも常に感触が得られるようなイメージです。

回転が低すぎると、このゴム紐がダルダルになったかのうようでリニアな反応が得られず、後輪のグリップ感も希薄になります。

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