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【JSB1000通算100勝へのカウントダウン|中須賀克行】特別スポーツ走行でJSB1000今季初転倒怪我により決勝レースへの出走を断念【百”勝”錬磨】

2025年シーズン最終戦のMFJグランプリに向けた走行初日、すでにチャンピオンを獲得している中須賀克行は順調にマシンのセットアップを進めていたが、ヘアピンで転倒してしまう。チームの方針で決勝レース1、レース2を欠場。今季の5勝を加え、JSB1000通算94勝でシーズンを終えた。

Katsuyuki Nakasuga
1981年生まれ、福岡県出身。2005年から全日本ロードレースの最高峰JSB1000クラスに出場し、今年の岡山国際のレースで13回目のチャンピオンを獲得。2021~2022年は2年連続で全勝した。鈴鹿8耐では2015~2018年に4連勝している
PHOTO/YAMAHA, SUZUKA CIRCUIT TEXT/M.SAKUMA
取材協力/ヤマハ発動機 
☎0120-090-819 https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/

JSB1000クラスでは今シーズン初の転倒

10月25日(土)・26日(日)に鈴鹿サーキットで開催された第57回MFJグランプリで、’25年シーズンの全日本ロードレース選手権は全日程を終了した。この大会でJSB1000クラスは、25日にレース1、26日にレース2と、各日に決勝レースが組まれていた。

そして決勝に向けて、23日(木)から特別スポーツ走行が開始。ところがクラス100勝を目指す中須賀克行は、走行初日のヘアピンで大転倒を喫し、身体に大きなダメージを受けてしまう。

診断の結果、ドクターストップはかからなかったが、チームを率いる吉川和多留監督は中須賀の参戦続行の判断に揺れていた。

「ライダーにとって、そしてチームにとって、シーズンの最大の目標であるチャンピオンは獲得しています。中須賀選手はドクターストップがかからなかったとはいえ、無理の効く状態ではありません。中須賀選手自身は、木曜日の走行でとてもいい形で仕上がっていたので、レースに向けて気持ちを整えていますが、今後の走行次第で出走できるかどうかを見極めたいと思います」

24日(金)の1本目の走行はキャンセル。そして2本目は総合12番手の2分7秒841。前日の2分5秒128には遠く及ばないタイムだった。

だが、25日(土)の予選で中須賀は、周囲を驚かす2分5秒929の2番時計を叩き出す。さらにセカンドベストでも2番手となり、レース1、レース2ともにセカンドグリッドを獲得した。

チームとしても想定外の好タイムだったが、吉川監督はこう語る。

「ネガティブ要素があっても、中須賀選手の卓越したスキルがそれを打ち消してしまう。だからこそチームサイドがしっかりと状況を見極めて判断する必要があります。そうでないと、中須賀選手も分からないままにリスクを高めていく可能性があるからです」

レース1、スリックタイヤでウォームアップラップに出た中須賀は、そのままピットに戻る

その中須賀の行く手を阻んだのが天候だった。予報では、いつ雨が降り始めるかも分からない状態。予選終了後に行われたレース1では、ウォームアップラップが始まる直前に東コースに雨が落ちはじめた。

すでにウエット宣言が出されていたことから、グリッド上では多くのチームがスリックからレインへとタイヤ交換を始める。だが、中須賀のチームに動きはなく、タイヤウォーマーが外されるとスリックタイヤが現れた。

レース1のスタート前、わずかに降りはじめた雨の中、グリッド上で選手紹介が行われた

チームが下した決断は「雨なら走らない」

この現実に、一部では「雨が止みドライ路面になると判断してギャンブルに出た」とも言われたが、すでに日本一となったチームが、しかもこのシチュエーションでギャンブルに出る理由はない。レインタイヤに交換しなかったのは、雨が降ればレースはキャンセルするというチームの明確な意思表示であった。

西コースが激しい雨となっていることが映像モニターに映し出される。雨の中、中須賀はウォームアップラップに出ると、周回後、スターティンググリッドに向かわずにピットロードへとマシンを走らせた。

「雨が降ったらレースは走らない。これはチームの方針として中須賀選手に伝えていましたし、中須賀選手も理解してくれていました。ドライコンディションの予選で好タイムを残しましたが、ウエットコンディションでは、不測の事態が起きたり、巻き込まれたりする可能性が高まるので、走らせるわけにはいかないと判断しました」

と、吉川監督は明かす。

翌日のレース2も雨となったことから、こちらは事前にリタイア届けを提出。これで中須賀選手の今季の成績は、優勝5回、2位3回、未出走2回。JSB1000クラスで13回目のチャンピオンを獲得するとともに、通算優勝回数は94勝でシーズンを終えることになった。

「今年はレースではもちろん、テストを含めて転倒しないことを心がけていました。しかし鈴鹿8耐の事前テストで転倒して身体的にダメージを負い、全日本最終戦のスポーツ走行で転倒して、今回はレースを欠場することになりました。ケガ自体は時間が解決してくれるものなので心配はありませんが、レースを走れず、応援してくれている皆さんに対して申し訳なく思っています。ただ、ヤマハ発動機の創立70周年、レース活動70周年にチャンピオンを獲ることができたことは、チームスタッフとともに誇りに思っています」

中須賀は、’25年シーズンをこう締め括った。

中須賀克行 2025年 戦績

大会名日程予選レース結果
もてぎ 2&44月19日・20日DryDry4位/2位
SUGO Race15月24日DryDry2位/優勝(通算90勝)
SUGO Race25月24日・25日DryWet1位/優勝(通算91勝)
もてぎ Race18月23日DryDry2位/2位
もてぎ Race28月23日・24日DryDry1位/2位
オートポリス Race19月13日DrySemi-Wet1位/優勝(通算92勝)
オートポリス Race29月13日・14日DrySemi-Wet1位/優勝(通算93勝)
岡山国際10月4日・5日WetDry3位/優勝(通算94勝)
鈴鹿 Race110月25日Wet/DryWet2位/スタートせず
鈴鹿 Race210月25日・26日Wet/DryWet2位/欠場

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