
【ドゥカティ パニガーレV2 S】スロットルを開ける喜びを誰もが味わえる【インプレッション】
ドゥカティから完全新作のV2エンジンがリリースされた。本誌ではすでにプロライダーによるインプレッションをお伝えしているが、今回はより読者の目線に近い、編集・藤田の試乗レポートをお届けする。

ライテク企画を担当しているものの、なかなか上達しない「永遠のライテク初心者」。生粋のツーリングライダーで、スーパースポーツに苦手意識をもつ。そんな男に新型パニガーレV2Sは微笑むのか!?
PHOTO/N.SHIBATA TEXT/Y.FUJITA
取材協力/ドゥカティジャパン
☎0120-030-292 https://www.ducati.com/jp/
イージーさの中に厳しさも持ち合わせる
ドゥカティは直近の8年間で、V型4気筒のデスモセディチ・ストラダーレ、V4グランツーリズモ、単気筒のスーパークアドロ・モノをリリースしてきた。そして今年、ついに2気筒エンジンを完全刷新。スーパークアドロやテスタストレッタ11°の後継として、パニガーレV2、ムルチストラーダV2などに搭載されることになった。
センセーショナルだったのが、排気量を890cc、最高出力を120psに大幅ダウンさせていたこと。市販車とレーシングマシンが密接な関係にあることがポリシーである同社が、次世代Vツインのフラッグシップでは戦闘力を追求しない方向に舵を切ったと思われた。
しかし、本誌ですでにお伝えしているとおり、原田哲也さんや中野真矢さんのインプレッションにネガティブな反応はなく、むしろライディングをスポーツとして楽しむなら、これぐらいがちょうど良いという受け止め方だった。
世界を知るプロライダーがそう評価する一因に、54.4kgというエンジン重量があるのは間違いない。スーパークアドロと比較して9.5kg軽量化されているというのは驚きでしかない。原田さんは「軽さは正義」と全面的に歓迎していた。


もうひとつのトピックとしてIVT(インテーク可変バルブタイミング)が挙げられる。これにより低中回転域ではスムーズで力強いトルクを、高回転では鋭いパワー感を両立している。最大トルクの70%以上を3000rpmで発生し、4000〜11000rpmの間では常に80%以上をキープするという、「使えるパワー」を意識した設計だ。
ボア×ストロークは96×61.5mm。テスタストレッタとスーパークアドロの中間にあたる数値で、これも公道走行とサーキット走行の両立に貢献。DLC処理されたフィンガーロッカーアームや中空形状で軽量なインテークバルブステム、アルミライナーなど、細部にいたるまで摩擦低減、軽量化を徹底している。さらに冷却系統のポンプ類をエンジンと一体化することで、全体のサイズが抑えられているのも見逃せない。
トップモデルであるV4エンジンで成功した設計思想や技術が落とし込まれたこの新型V2エンジンは、軽さ、トルクの扱いやすさ、構造的合理性、メンテナンス性のすべてを高次元で実現しているというわけだ。


そんな次世代のドゥカティを担うエンジンを搭載した新型パニガーレV2Sに試乗する機会をもらった。超エキスパートである原田さんや中野さんとは違い、「永遠のライテク初心者」を自称する僕のようなレベルのライダーでも、車体の軽さや扱いやすさを実感し、武器にすることができるのだろうか。そんな疑問を検証するべく、袖ケ浦フォレスト・レースウェイへ向かった。
僕はこれまでドゥカティのスーパースポーツモデルは、999以降すべてのモデルに乗ってきた。その経験から正直に言うと、ドゥカティ特有の乗り味というか、クセのようなものが僕には手強く感じていた。
具体的には、高い位置からパタンと倒れそうに感じるハンドリングや、やたらとスパルタンなライディングポジションなどがその原因だと思う。加えて、低回転からドンと押し出す2気筒特有のトルクは、スロットルを開けるのを躊躇させ、低速コーナーの立ち上がりでは常に慎重にならざるを得なかった。さらに近年の200psを優に超えるパワーは、恐怖の対象でさえあったのだ。
そんな僕だが、パニガーレV2Sは臆することなく試乗に臨むことができた。なぜなら、車体の軽さはバイクに跨がって引き起こした時にすぐ分かったし、なにより120psというパワーが大きな安心材料になっていた。また、前傾が緩やかなライディングポジションも、スーパースポーツに苦手意識がある僕にとっては非常にありがたかった。

とはいえ、走り出せばやはりドゥカティ。スロットル操作に対するエンジンレスポンスは俊敏で、特にレースモードにした際には少し慎重な操作を心がけた。
驚いたのはストレートでスロットルを開けて加速した時だ。ビビリな僕にしては珍しく、躊躇することなくスロットルを全開にすることができ、そのまま3速から4速へシフトアップできたのだ。おとなしめのパワーのおかげもあるが、それ以外にも立ち上がりの加速でトラクションコントロールやウイリーコントロールが、「怖くない」方向に働いてくれているのだろう。
ストレートで全開にしながら、1コーナー進入に向けて心の余裕があったことは、僕にとって新体験だった。
ブレーキングでも、車体の軽さが効いているのか、身体にかかる負担が少ない。試乗会当日は気温34度の炎天下だったが、最後まで集中力を保てたのは非常にありがたかった。やはりトータルで約17kgもの軽量化は伊達ではないのだ。
この軽さのおかげで、僕はさまざまなライディングのチャレンジができた。例えばコーナリングで「もっと奥までブレーキを残して」「もっとイン側のラインを使って」「頭の位置をもっと下げて」など、本誌のライテク記事で紹介しているテクニックを「実践してみよう」という気持ちにさせてくれるのだ。

しかし一方で、何から何までイージーというわけではなかった。例えばコーナリング中に走行ラインを調整するような操作は、僕には難しかった。一度ラインやバンク角が決まったら、簡単には修正させてくれない。「ごまかしが利かない」という感じだ。
ミドルクラスのバイクにはこうした操作を許容してくれるモデルがあり、それが扱いやすさに繋がっている。もちろんレベルの高いライダーなら、このV2Sでもそういう操作ができるだろうが、僕はそこまでに至らなかった。「意思を持ってライディングしなさい」とたしなめられている気分になるのだ。そういう点は、やはりドゥカティらしさなのかもしれない。
結論として、パニガーレV2Sはライディングテクニックを磨くのに最適なモデルだと思う。176kgという車重は、これまでできなかったライディングに挑戦させてくれる。パワーは僕にとっては十分だし、軽さも手伝って加速もかなり鋭い。
そして、ヘアピンコーナーなどで回転が下がった際の扱いやすさ、そこからの開けやすさも魅力的。パワーモードをローに設定すれば、出力を95psに制限することもできるので、より安心して「全開にする」というライディングプレジャーに近づくことも可能だ。
スロットルレスポンスの設定も、ライディングモードをロードにすればスムーズさを優先するようになるので、サーキットをまだ数回しか走ったことがなくて自信がない人は、こうした制御を活用してみるのが良いかもしれない。
新型パニガーレV2Sの扱いやすいエンジンと徹底的な軽量化、そしてV4で鍛えられた高度な電子制御は、ライダーを不安にさせる要素を可能な限り排除し、ライディングに集中させてくれる。
そして僕のようなライテク向上を目指すライダーにスキルアップのチャンスを多く提供し、時に厳しく鍛えてくれると強く感じた。




PANIGALE V2 S








5インチTFT液晶は周囲の明るさに反応して自動で照明モードが切り替わる。レイアウトはロード、ロードプロ、トラックの3タイプで、トラック(写真左下)にするとラップタイム計測機能が使えるようになる。ライディングモードはレース、スポーツ、ロード、レインの4つを設定
| エンジン | 水冷4ストローク90°V型2気筒 DOHC4バルブ |
|---|---|
| 総排気量 | 890cc |
| ボア×ストローク | 96.0×61.5mm |
| 圧縮比 | 13.1:1 |
| 最高出力 | 120ps/10750rpm |
| 最大トルク | 9.5kgf・m/8250rpm |
| 変速機 | 6段リターン |
| クラッチ | 湿式多板アシスト&スリッパー付 |
| フレーム | アルミニウム製モノコックフレーム |
| キャスター/トレール | 23.6°/93mm |
| サスペンション(フロント) | オーリンズ製φ43mm倒立フォーク NIX30 |
| サスペンション(リア) | オーリンズ製モノショック |
| ブレーキ(フロント) | φ320mmダブルディスク+ブレンボ製M50ラジアルマウントキャリパー |
| ブレーキ(リア) | φ245mmシングルディスク+2ピストンキャリパー |
| タイヤサイズ(フロント) | 120/70ZR17 |
| タイヤサイズ(リア) | 190/55ZR17 |
| ホイールベース | 1465mm |
| シート高 | 837mm |
| 車両重量 | 177.6kg |
| 燃料タンク容量 | 15ℓ |
| 価格 | 240万8000円 |

