• HOME
  • 記事
  • コラム , DIRT SPORTS
  • 【石戸谷蓮】スピード、テクニックだけでない。タフネスさが必要なんだと痛感しました。【世界一過酷なレースに挑んだ日本人】

【石戸谷蓮】スピード、テクニックだけでない。タフネスさが必要なんだと痛感しました。【世界一過酷なレースに挑んだ日本人】

石戸谷蓮
CROSS MISSION代表としてラリーやレースイベント、全日本ハードエンデューロ選手権などを主催。JEC IAライダーとしても活動中。

エルズベルグロデオとは?

今年で29回目を迎えるオーストリアの鉄鉱山で開催される「世界一過酷なモーターサイクルレース」。1100台のエントリー中、決勝へ進出するのは500台。完走は14台だった。今年はマニエル・リッテンビヒラーが4連覇を達成。またジョニー・ウォーカーがトライアンフで史上初の4ストローク車での完走を果たした。日本人選手は田中太一選手が5回参加中4度の完走を果たしている。

完走に求められるのはスピード、テクニックだけでない。タフネスさが必要なんだと痛感しました。

エルズベルグロデオへの挑戦は今回で6回目となりました。今思うのは「改めて予選は危険だな」ということですね。初日は予想以上に絡むバックマーカーが4人くらいと多くて、中にはクラッシュしているライダーもいました。初日のトラックはかなり危なかったですね。人の頭大の石が砂利に埋まっていたりして転倒車も多かったです。初日タイムが12分34秒で、例年路面が荒れてタイムが遅くなるはずの2日目に12分8秒でした。1日目にタイムを出せれば決勝1列目に入っていた可能性はあります。

そして「本戦はタフネスさが要求される」と痛感しました。決勝1列目を確保しても完走していないトップライダーも多いのが事実です。スピード、テクニック、そういった高いスキルがあれば完走できるのではなく、さらにタフネスさが必要なのだということです。ハードエンデューロはバイクを押したり引き上げたりする動作が長く続きますが、これは世界のトップライダーも避けては通れません。体が元気な時はクリアできるセクションでも、疲労した時に行けるかどうか。クリアするスキルだけでなく、そこで「押し続けられるか」なのだと、今回思ったのです。

予選DAY2でジャンプアップし決勝3列目を確保。例年よりラインが狭いカールズダイナー・ライト。一人では抜け出せないロックにハマり、ここでレースは終了した。

今年の優勝者のマニー(マヌエル・リッテンビヒラー)はトライアルで特筆する実力を発揮してきたライダーではありません。今まで「トライアルIASのレベルがあれば完走できる」と思っていましたが、どうやらそうではないなと。すでに50歳のグラハム・ジャービスがなぜ完走できるのかというと、彼は群を抜いてロックセクションが速く得意なんだと思います。絶対に岩と岩の間にタイヤを落とさないので、めちゃくちゃ速いんですよ。

さて、5ヵ年計画(昨年はスタート早々の水没リタイアだったため、今回は6回目の挑戦)で進めてきたエルズベルグですが、まだ続けようかなと思っています。世界中のライダーの情報が集約されていますし、イベント主催者としての視点からも、最新の世界を裸感覚で感じ取れるからです。自身のイベントやライダーとして高い目標を掲げていきたいですね。1回参加するために高額な費用がかかりますが、始めた当初からスポンサーやクラウドファンディングに頼らず、自分でお金を作って参戦することを目標としてきました。これから子供達の学費などもかかりますが、おかげさまでイベント事業が収益化できていて、自分の努力次第で参戦できるので、諦める、止める理由がないというのが正直なところです。

大会前のトレーニングや日常生活を大神と共に過ごした。色々な発見があった登山もその一環だった。

参戦を続けるためにはお金と時間がとても大事です。ただ世界的に見てもハードエンデューロはまだマイナーな存在で、エルズベルグに出ているトップライダーを見てもアマチュアが多いです。またジャービスやマリオ・ロマンなど、チームを作ってチーム単位でサポートを受けるパターンが多いですね。

話はタフネスに戻りますが、今必要なトレーニングは、とにかく重いものを動かし続けるような内容で、持久系だけではない練習をやらないといけませんね。もちろんスピードを追求することは永遠の課題ですね!

関連記事一覧