
【ドゥカティ Desmo450MX】450MX新時代の幕開け!中間の太さと伸びが印象的。
MotoGPを席巻するドゥカティが送り出してきたDesmo450MXに、本誌インプレッションライダー熱田孝高が試乗。デスモドロミックDOHCエンジン、オリジナルフレーム、最新鋭の電子制御は、ドゥカティのレーシングDNAから生まれたものだ。果たしてその実力は!?
PHOTO/H.Inoue 井上演 TEXT/D.Miyazaki 宮﨑大吾
熱田孝高:ファーストインプレッション
たとえアマチュアライダーであっても、このマシンの魅力はすぐに体で理解できる。アクセルを全開にできなくても、高回転を使い切れなくても、しっかり前へと進んでいく懐の深さがまず印象的だ。恐怖感を覚える前にスピードが乗り、自然な加速へとつながる。その“おいしさ”こそ、このエンジン特性の真価だろう。
特に注目したいのは、回転が曖昧な領域からの伸びだ。これはデスモドロミック機構による恩恵と言ってもいい。高回転域でのパワーというより、豊かなトルクが押し出してくれる感覚が強く、扱いやすさと楽しさが高次元でバランスしている。
そして、この特性はジャンプでも威力を発揮する。「この回転のままじゃ届かないな」と思った瞬間、そこからグッと伸びて“飛んでしまう”のだ。気づけば予想以上の距離を軽々と越えている……。そんな体験が何度も訪れた。クラッチ操作すら必要ない場面も多く、ライダーの技量を補ってくれるような扱いやすさがある。

体感としては、単なる「加速感」や「パワー感」とは異なる。モトクロスでどの回転域を使うべきか、その核心をメーカーが徹底的に突き詰めたような印象を受ける。単純に「高回転が伸びるから速い」という発想では語れない、独自の世界観があるのだ。
「デスモ」と聞くと“ハイカム的な高回転型”を想像しがちだが、このエンジンはまったく違う方向性でまとめられている。自然で、怖さがなく、それでいて結果的に速い──そんな矛盾した魅力を併せ持つのだ。乗り手のレベルを問わず、走りの新しい可能性を感じさせてくれる一台である。
熱田孝高
【サスペンション】
新車だが、実際に乗ってみるとそれほど硬くなく、違和感もなかった。弾かれる感じもなく、すんなり乗れた印象だ。ただし、やはり外車特有なのかサスペンションは硬めで、いわゆる欧米人向けのセッティングだと感じる。僕は体重85kgだが、レーススピードで走っても硬いと感じるので、一般の人だとこのままだとやや厳しいかもしれない。
もちろんコースの違いもあるし、体格の違いもある。ただ、日本人が乗ることを考えると、もう少し減衰を抜くと良いと思う。セッティングを合わせればすごく良いフィーリングになるし、前後のバランスも良くて、とても曲がりやすいバイクになる。調整の余地は十分にあると感じた。
リアは少しスプリングレートが強めだ。フロントはまだ動きを感じられたが、リアとのバランスを取るためにはフロント側ももう少し下げても良いかもしれない。基本的には、減衰を抜く方向でセットしていくのが良いだろう。とはいえ、前後バランス自体は良く、変に入りすぎるところもない。フロントもリアよりは動きが感じられたので、あと一歩といったところだ。
【エンジン】
エンジンはとにかく「強い」です。路面コンディションが良くトラクションしたこともありますが、スポーツランドSUGOのコースを3速だけで走れてしまうほどです。普段450に乗っていて「ここは落ち込むだろう」という場面でも、3速のまま登っていきます。たとえば壁ジャンプ後のヨーロピアン6連の入り。普通なら着地でクラッチを使いたくなるシーンでも、3速で〝ぼやけた〟状態のまま前へ進んでいく。「なんだこれ、クラッチ不要?」という感覚でした。コーナーで回転が落ちていても素直に前に進むし、ギクシャクすることもなく、とにかく扱いやすいです。
ジャンプのダブルの立ち上がりでも同様で、「ちょっと足りないかな」と思う場面でも、開け直せばグッと伸びて飛距離が稼げます。トルクが非常に厚く、エンジン機構の違いによる〝中間の立ち上がりの強さ〟が際立っていると思います。

高回転まで引っ張ってもよく伸びますが、それ以上に中間の太さが印象的です。ヤマハの新型YZ450F(スポーツランドSUGOで試乗)は高回転が強いイメージでしたが、このエンジンは「中間が来て、そこからしっかり伸びる」という特性になっています。中間が太いので、逆に高速の主張が薄く感じるほどでした。
総合的に見ると、クラッチを当てる必要がほとんどなく、不要な気づかいをせずに扱える〝使いやすさ〟が光ります。ただしアグレッシブなパワー感もあり、ドゥカティっぽいテイストを感じる瞬間もある。モードを変えてもマイルド寄りではありますが、パワーは十分。フロントも浮きやすく、スリッピーな路面では注意が必要かもしれません。

トラクションコントロールは自分には少し〝かったるさ〟が出る印象で、基本的には電子制御を切って乗ったほうが好みでした(熱田選手自身、現役時代から電子制御を使わなかった)。
クラッチペダルはストロークがやや長く、もう少し短くできるなら改善される余地があるでしょう。ロード寄りのライダーには良いですが、モトクロスではあと少し短くして欲しいですね。
【ライディングポジション・車体】
ハンドリングの軽さ、旋回性ともに好印象だ。フロントの高さを少し感じる場面はあったが、これは好みの範囲だろう。新車特有のフレームの硬さはあるものの、それが抜けてきたら、さらに乗りやすくなるはずだ。溶接していないことが特徴であるフレームの当たりは柔らかく、ギャップの吸収も自然。国産車とはまた違う〝やわらかい当たり〟が特徴的だと感じた。
バイクのサイズ感としては、トライアンフより大きく感じるわけではないが、日本人体型には足つきがやや悪く、リアが高いぶんサスで沈めたくなる。シートポジションは前でホールドしやすく、車体が非常にスリムで扱いやすい。
【タイヤ・その他】
今日の路面はトラクションが良く、ピレリのソフト用が非常に良かった。滑らず、安心して開けていける。
ブレーキは国産とタッチが違うが、ブレンボらしくしっかり効く。「止まらない」感じは全くなく、安心感が高い。全体として、尖った印象はパワーくらいで、基本的にはとても〝すんなり乗れるバイク〟だ。
1年目でこれを作ってくるのはすごいというのが正直な感想だ。

本誌宮﨑インプレッション
なんといってもデスモドロミックバルブのもたらす高回転エンジンに注目していましたが、想像以上に扱いやすく、トルクが太い。モードを最弱にしたら、私のようなビギナーレベルでも十分楽しめるバイクでした。中間域からの太さは、現在のMotoGPを席巻しているドゥカティの強みであり、国産車との思考の違いなのかとも思います。
イタリアンな官能的ルックスは斜め後ろから見ると顕著ですし、乾いた金属音のようなサウンドも最高です。スーパーモトでの活躍も見てみたいです。


