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日本人初のSMXワールドチャンピオン 下田 丈 凱旋トークショー&メディアスクラム

日本人初のSMXワールドチャンピオン下田 丈 凱旋トークショー&メディアスクラム in ベルサール秋葉原

2025年12月17日、ホテルニュー・オータニ東京で開催された「第55回 内閣総理大臣杯 日本プロスポーツ大賞 授与式典」。
同日、2025年スーパーモトクロス世界選手権(SMX)250クラスでチャンピオンを獲得した下田 丈が“敢闘賞”を受賞した。

PHOTO/DIRT SPORTS、Honda

その翌日となる12月18日、ベルサール秋葉原では「日本人初のSMXワールドチャンピオン 下田 丈 凱旋トークショー」が開催され、ホンダHRCプログレッシブ所属の下田と、チーム監督ランド・リンドストロームがメディアの前に登場。歴史的快挙を成し遂げた直後の“生の声”が語られた。

──まずはスーパーモトクロス(SMX)250クラスのチャンピオン獲得の感想を聞かせてください。

下田 丈
「SMXはプレーオフ形式で、スーパークロスとアウトドアの総合ポイントで争われます。2レースずつ、合計6レース。簡単に言うと、6レースで1回もミスができないフォーマットなんですよね。

その中でチャンピオンを獲得できたのは本当に嬉しいですし、監督のラージ(ランド)もそうですけど、家族、チームスタッフ、すべての支えがあってこそだと思っています。恵まれた環境の中で走らせてもらって、感謝の気持ちでいっぱいです」

続いて、監督のランド・リンドストロームがこのタイトルの価値を語った。

ランド・リンドストローム(監督)
「ラスベガスでジョーとSMXチャンピオンを獲得できたことは、チーム全員にとって本当に特別な瞬間でした。彼にとってはアメリカでの初タイトルであり、そして日本人として初のチャンピオン。ホンダにとっても、非常に意味のある勝利だったと思います。

最終戦はものすごいプレッシャーがありましたが、チームとしてできる限りのサポートとストラテジーを用意しました。ただ、正直に言えば、そのサポートすら必要ないほど、ジョーは冷静で自信に満ちていましたね」

──昨日、日本プロスポーツ大賞の敢闘賞を受賞されましたが、その感想をお願いします。

下田
「受賞式でたくさんの方とお会いして、やっと実感が湧いてきた部分があります。もちろん、こうした名誉ある賞をいただけるのは本当に嬉しいです。ただ、僕の中ではこれがゴールではなくて、ここからがスタートだと思っています。自分を通じて、日本にモータースポーツの魅力をもっと発信していけたらいいなと思っています」

最も多くの質問が集中したのは、ラスベガス最終戦でのヘイデン・ディーガンとの激しい攻防についてだった。

──あの状況でも冷静に判断できていましたか?

下田
「彼はすごくアグレッシブなライダーですし、正直、ああいうケースは過去にもあまり経験がありませんでした。前に出たかと思えば、わざと後ろにつかれて、また当ててくる。簡単に言うと、僕を転ばせに来ていた、もしくは怪我をさせに来ていた部分もあったと思います。

一番怖かったのは、コンクリートに押し出されてバイクが壊れたり、レバーが曲がったりして走れなくなること。なので、接触しそうな気配を感じたら、あえてペースを落として、軽いヒットで済ませる。転んだらすぐ起き上がる。そういうことは事前に想定していましたけど……実際は想像以上でしたね」

──感情的になることは?

下田
「怒りというより、怪我をしたくなかったという気持ちが一番強かったです。モトクロスはどうしても接触が起きやすい競技ですが、それでも危険なものは危険。感情的になるより、とにかく無事にチェッカーを受けることだけを考えていました」

──その状況を見て、監督としてはどんな思いでしたか?

リンドストローム監督
「無線で常に連絡を取りながら、冷静にレースを進めるようにしていました。ディーガンは相当ストレスを抱えていたと思いますが、ジョーは本当に落ち着いていた。その姿を見て、私たちは安心して見ていられました」

──シーズンを通して、どんな成長を感じていますか?

下田
「これまで僕は、シリーズ前半でつまずくことが多かったんです。でも最近は、開幕戦から自分のパフォーマンスを発揮できるようになってきた。今年は特に、チームと一緒に学びながら結果を出せた一年だったと思います」

リンドストローム監督
「メンタルの成長はもちろんですが、マシン作りも大きかったですね。ジョーはマシンの好みがはっきりしているライダーなので、マッピングやセッティングをお互いに意見交換しながら作り上げてきました。それが結果につながり、さらに自信が増し、好循環が生まれたと思います。体調が悪い中でも結果を出せたSMX第2戦は、彼にとって大きな転機でした」

──日本のモトクロスキッズへのメッセージをお願いします。

下田
「アメリカの子どもたちは、とにかく二輪に乗っている時間が長いと感じました。モトクロスじゃなくても、自転車やBMXでジャンプを作って遊んだり、自然とバイクに触れている。競技以前に、まず“乗る時間”がスキルを作るんだと思います。とにかくたくさん二輪に触れてほしいですね」

最後は和やかな質問も飛んだ。

──好きな食べ物は?

下田
「意外かもしれないですけど、卵かけご飯ですね。アメリカでも食べますよ。伊勢の卵かけご飯専用の醤油を、日本から何本も持って行っています(笑)」

日本人として初めてSMXワールドチャンピオンに輝いた下田 丈。
その強さの本質は、激しさではなく、冷静さと積み重ねにあった。
次なる舞台での走りにも、世界が注目している。


下田 丈
(2002年5月16日生まれ・23歳)

2016年14歳で全米最大のアマチュアMX「ロレッタ・リン スーパーミニ2クラスチャンピオンを獲得。2019年にHonda Factory Connectionでプロデビュー、2020年はAMAスーパークロス250SX東地区でランキング3位、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。2021年にPro Circuit Kawasakiと契約し、日本人初の250SX東地区優勝、ランキング2位に。同年のAMAプロモトクロスでは日本人初の優勝を実現し、ランキング2位へ。この年の全日本近畿大会へのスポット参戦で世界の走りを披露し、話題になった。2024年からホンダファクトリーチーム「Team Honda HRC」に移籍。昨年は全日本関東大会で凱旋参戦、さらに進化した異次元の走りを展開しフィーバーを巻き起こした。

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