1. HOME
  2. COLUMN
  3. 【Thinking Time】㊻バイクは”モビリティ革命”に乗り遅れた⁉ ライダーと社会の共生の道を探る

【Thinking Time】㊻バイクは”モビリティ革命”に乗り遅れた⁉ ライダーと社会の共生の道を探る

二輪におけるモビリティ革命とはいったいなんだろうか。
CASEだMaaSだと騒がれているが二輪に限って言えば電動化くらいしか見通しが立っていない
革命とは真の「社会との共生」ではないか
負のイメージを持つバイクを“必要な乗り物”に転換できるか? 今が正念場のはずだが……

新基準原付に合成燃料……コミューターの電動化は停滞?

 2025年11月の原付一種への第4次排ガス規制適用が迫るなか、メーカー各社の思惑が交錯している。モビリティショーの展示でも垣間見えたが合成燃料や水素などマルチパスウェイでのアプローチに加え新基準原付区分の整備も異例の早さで進む。一方でコミューターの電動化は停滞を強いられているようだ

 昨年のジャパンモビリティショーを見てもなお拭えなかった「国内二輪におけるモビリティ革命とは何か?」という疑問。CASE(ケース)やMaaS(マース)といった言葉が巷にあふれて久しいが、二輪業界の取り組みからはっきり実感できるのは電動化(Electric)くらい。コネクテッド(Connected)、自動運転(Autonomous)、シェアリング(Shared)に関しては「いつまでにこういうことを実現したい」ということが聞こえてこない。MaaSについても鉄道や路線バスなど公共交通機関との連携運用やそのために駐車環境をどうすべきだということが見えないのだ。

モビリティ革命の今こそ難しいことに力を注げ

 もし革命と呼べるほどの大きなムーブメントが起こるとするならば、それは「バイクと社会との共生」においてだろう。二輪車産業政策ロードマップ2030の政策課題にも掲げられているが、そこにはCASEやMaaSといった文言はない。一方で「カーボンニュートラルへの貢献」は政策課題の大きな柱の一つに挙げられ、電動車や合成燃料等の普及・推進施策についても記述がある。

 しかしバイクの利用者からすれば、原動機が電気や水素、合成燃料に変わったとしても「使えないものは使えない」のだ。革命が必要とされているのはモノではなくコトのほう。モノづくりのプロであるメーカーからすれば良いモノを作るのが仕事であり使命だろう。良いモノを作れば社会が変わると本気で考える人もいるだろう。それも間違いではない。だが、良いモノは作れても使えるモノになっていない現状を打破しなければ、やがてCASEやMaaSの潮流の中で新規参入事業者らにシェアを奪われていくだろう。この数十年間、国内二輪市場の根本的な課題は三ない運動と駐車問題の2つにあった。

駐車問題と三ない運動を打破しコミューターの将来に光を!!

革命を起こすべきは二輪車利用環境の根本問題である駐車問題と三ない運動。前者は駐車場法に組み込まれて以降、全国の都市部を中心に改善が必要。後者は全国的な運動終結後も自治体・地域・各校の問題として残され、撤廃後も安全講習が行われていない自治体が多い

<環境悪化の「三ない運動」>

少子高齢化は確実に進んでおり、学区の統廃合や公共交通の衰退による通学距離の増大、定期代の高騰、朝夕の送迎負担増など家庭・家計を圧迫している

新しいモノの開発は目的ではない。電動バイクで言えば現状の航続距離でも活用できる場は多い。高校生のバイク通学では片道10〜15㎞が目安。学校で充電できればさらに安心だが公的機関での充電は簡単ではない。CASEやMaaS の流れに乗せ、二輪業界の外からの開拓とビジネス化が有効だ

<掘り起こすべき「駐車問題」>

駐車問題改善のポイントになるだろうビッグデータの活用。しかし現状Googleマップでは表記ゆれによりバイク駐車場の検索結果が大きく増減する。整備すべきだろう

地域の社会課題に具体的に取り組むためには、しかるべきプレイヤーの登場が必要だ。民間の駐車場事業者や予約制駐車場事業者らと連携し利用者とマッチングする、そのためにビッグデータを活用するなどビジネス化を通してこの問題をモビリティ革命の舞台に引き上げるべきだ

https://www.jmpsa.or.jp/contact/form/index_18.html

モビリティ革命を起こすためには外部プレイヤーが必要

 モビリティ革命は自動車産業で成り立っている日本にとって逃れることのできない世界規模の大きな変革だ。一歩間違えれば現在の地位を失いかねないほどの影響力を持っているが、モビリティ革命の波にうまく乗り、コトの改善に向けて立ち向かっていけば2つの根本的な社会課題を改善することもできるはずだ。カーボンニュートラル、脱炭素といった世界の潮流もうまく利用しモノづくりと同じくらい利用環境を改善するためのコトづくりに邁進すれば、バイクは持続的な未来型社会に必要なパーソナルモビリティとして社会の様々なシーンで求められて、ノンユーザーにもその価値を認められ、さまざまな場で共生していくことができるだろう。

<パッチワーク状態への対処>

駐車問題も三ない運動も地域ごとの課題になっておりパッチワーク状態にある。当然課題として認識されていない地域・ケースもかなり多い。モデルケースづくりは有効だが水平展開は簡単ではない。特に都市部の駐車問題は通勤・通学など二輪車需要が表面化したコロナ禍においてまったく動きを見せられなかったのが痛い

<都市部と中山間地の課題認識>

2つの問題とその課題を考えるとき、まず都市部と中山間地という地政学的な視点に立つ必要がある。駐車問題で言えば放置駐車の台数、駐車・駐輪場の設置数と場所、民間委託を含めた取り締まりの厳しさなど。三ない運動で言えば鉄道やバスといった公共交通の充足度、定期券運賃と家計における負担の割合など

 カーボンニュートラルに向けた脱炭素化によるコミューターの電動化、安全運転にも寄与するIOTによるコネクテッド化(C‐ITSなど)、5Gとビッグデータ活用による運行・利用(駐車)の管理といったモノの進化をいかに社会課題の改善につなげられるか。それこそが二輪のモビリティ革命で目指すべき具体的な目標ではないか。そのためには二輪業界の外にいるさまざまなプレイヤー(専門家やイノベーター)とつながる必要がある。彼らの活動はソーシャルビジネスとして推進されることで、自治体や学校といった公的機関とも協働できる体制を築いていけるだろう。

<第12世代バイクブームの影響か?不動産業界が事業強化>ここ数年で目立つ動きに不動産業界が土地所有者に向けてバイク駐車場経営を促すことがある。バイクブームを受けてのものだろう(⇒https://land.home4u.jp/guide/land-others-5-3379

 こうした新しい二輪ビジネスを動かしていくこと、外部人材を育成していくことに投資しなければならないし、投資家にもそうした動きが数十年後の国内二輪市場の土壌を広げ、力強く耕していくことを理解してもらう必要がある。でないとCASEやMaaSといったモビリティ革命下の取り組みも上滑りし、バイク好きだけが満足できる趣味の世界の乗り物としてしか残らないだろう。バイクのあるべき姿を直視し大変なこと難しいことにこそ、いま最大限の力を注ぐべきだ。

関連記事