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ハーレー和尚のバイク説法「涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)」

バイク寺として親しまれる大阪府能勢町にある「妙見宗総本山 本瀧寺」の執事長。40歳の時に大型二輪免許を取得。ショベルに乗るハーレー和尚として、バイク講話など交通安全普及に努める

 本瀧寺のシュウケンです。毎年春と秋に行われる全国交通安全運動の目的は、交通安全思想の普及を図るとともに、交通ルールの厳守と正しい交通マナーの実践を習慣付けることだと聞きました。もらい事故や機械的なトラブルを除けば、交通事故の原因の多くはドライバーやライダーにあります。交通ルールの厳守と正しい交通マナーを身に付けることで、交通事故も大きく減ると私は思います。

8月19日のバイクの日に、建立(こんりゅう)されたバイク寺蔵(じぞう)。お参りに来たライダーから前掛けを寄進されてお色直し

 仏教では、人には百八つの煩悩があるとされます。なかでも克服すべき根本的な三つの煩悩“三毒”と言われるのが、“貪瞋痴”(とんじんち)です。

“貪”は貪欲、貪(むさぼ)りを意味して、欲しいものなどに対して執着する心を指します。物欲などの物質的なものもそうですが、「人によく見られたい」「人より上に立ちたい」なども貪の一つです。バイクの運転では言えば、「格好よく見られたい」「速く走れると思われたい」などがそうではないでしょうか。

次に“瞋”は、瞋恚(しんい)のことで、怒りなどの感情を指します。怒りは人の判断を狂わせ、また負の感情は負のエネルギーを呼び寄せます。これがバイクを運転するうえで、いかに危険なものかは以前お話しした通りです。

そして“痴”は、愚痴を意味します。不平不満を言うこともそうですが、仏教では真理を知らない、無知な心も愚痴に含まれます。

 仏教の最終目標に『涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)』があります。涅槃寂静とは煩悩がなくなり、悟りの極地に達することです。私たち僧侶が修行するのも、これを目指しているからです。私自身も僧侶になる時、比叡山で修行をしました。今も修行はしていますが、比叡山での修行はさらに厳しいものでした。しかし、その時の習慣がいまも身に付いているのも事実です。 

以前、元カワサキワークスの多田喜代一氏を招いて本瀧寺で開催したバイク講話。1度の講話で、すぐに交通事故を減らすことはできなくても、これらを繰り返すことで、交通安全に対する意識が高まると言う

事故を起こしたくてバイクに乗る人など、まずはいません。「格好良く見せたい」などの無茶な運転や、怒りの感情などが事故の原因になることも十分に承知されていると思います。ただ日常の運転での慣れや、ツーリング時などの楽しい気持ちが、そのことを一瞬忘れさせます。確かに一年365日、無事故無違反だけを意識していては、バイクの運転が苦痛になるかもしれません。全国交通安全運動のように10日間とは言いません。3日いえ1日だけでも、事故に繋がりそうなすべての欲を抑えて、交通安全だけを意識した、アナタだけの交通安全運動を行なってみてはどうでしょうか。

一度や二度でその運転が習慣付くとは限りません。ただ、アナタの心になにか一つでも気付くものや気持ちの変化があれば、それが無事故無違反への第一歩だと思います。

合掌

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