16歳でMBX50に乗った少年が辿り着いた、BMWと仲間の世界|バイク日和・千葉裕治さん

4台のバイクを所有する千葉さんは、それぞれの用途に合ったバイクでツーリングを楽しむ。最近はオフロードにはまり、コマ図ラリーへも出場する。そんなバイク人生を構築したのは多くの人との出会いからだった

■ BikeJIN vol.272 2025年10月号
写真/徳永茂 文/栗栖国安

キャンプツーリングで心身をリフレッシュ

大手化学メーカーの研究職として多忙な日々を過ごす千葉裕治さんの楽しみは、コマ図ラリーに参加したりキャンプツーリングをすることだとか。そのため近年は、ヤマハセロー250の出動率がもっとも高くなっているという。

十分なスペースが確保された自宅ガレージには、セロー250のほかにBMW R80、R1200R、そしてホンダCT125・ハンターカブの計4台が納められている。見た目にハデさはないが、どのバイクも千葉さん自身の用途に合わせたカスタムが施されている。中でも目を引くのが、クラシカルなR80である。

広いガレージには、クルマのほかにBMW R80、R1200R、ヤマハ セロー250、ホンダCT125・ハンターカブと、4台のバイクが格納されている

「初のBMWとしてF650GSに乗っていたんですが、BMWといえばやはりボクサーエンジンが特徴的なので、ぜひとも乗りたいと願って選んだのがR80だったんです」

どうせ乗るならベーシックなモデルがいいとようやく見つけたR80は、ボクサーエンジンに精通しているショップ『エイエムエスフジイ』でメンテナンスしてもらい、良好な状態に仕上げられた。乗る機会はそう多くはないそうだが、やはりその存在感は抜群で、千葉さんも手放す気はないという。

ガレージには工具や用品のほか、バイクのミニチュアモデル、キャンプ用品なども納められていて、なんとも羨ましい男の作業場になっている。ガレージ内でバイクをいじる時間は千葉さんにとって至福のひとときにちがいない。

ガレージ内には工具やバイク用品のほか、バイクのミニチュアモデルがいくつも置かれている。またラリーに参加したときのゼッケンなどもあしらわれ、ガレージらしさを表現していた。キャンプ用品もズラリと収納されている

本格的なレース参戦はないものの、友人に誘われてサーキット走行したりエンデューロに出たこともあるという千葉さんだが、基本的にはツーリングに出かけるのがバイクとの付き合い方のメインだという。

以前はもっぱら大型ロードバイクでのツーリングを楽しんでいたが、最近はオフロードが主体で、林道ツーリングやキャンプツーリング、さらにはコマ図ラリーに参加するなど、バイクとの付き合い方も変化している。この夏も北海道での林道ツーリング合宿に参加してきたとのことで、旅の様子を楽しそうに語ってくれた。

さらに毎年恒例となっているカブ1000へも、CT125・ハンターカブで参加している。カブ1000は、往復1000㎞以上走って能登見附島近くでキャンプするというツーリングイベント。地震の影響で昨年からは能登の別の場所でキャンプしているが、復興の一助になればとの主催者の想いでイベントは実施されている。千葉さんはカブ1000の常連。今年も9月に行われるので開催に向けて準備中だ。

各車のオーナーズクラブで人とのつながりを増やす

バイクブーム真っただ中の1984年、16歳の高校生だった千葉さんは原付免許を取得した。学校でも特に禁止されてはいなかった。「兄もバイクに乗っていたので家で反対されることもなかったですね」

さらに父親から「早いうちに中免取るんだろうからギア付きのバイクにしろ」と助言までされ、近所のバイク屋でホンダMBX50を入手した。これが千葉さんにとっての初バイクである。MBXはおもに街乗りに使用、中型二輪免許を取ったことから1年ほどで手放し、次にスズキRG250Γを購入した。レーサーレプリカが脚光を浴びていたときだったので、自然な選択だった。Γでは峠を走りに行ったり、友人に誘われてサーキット走行したりしたという。また伊豆へツーリングにも出かけた。学生となりクルマの免許を取ってからはΓに乗る頻度は減少した。しかし手放そうと思ったことはなかった。

16歳で原付免許を取り初めて購入したのがホンダ・MBX50。父親の勧めもあって、スクーターではなくギア付きバイクからスタートした
中免を取得して購入したのがスズキRG250Γだった。ちょうどレプリカブームだったこともあり、千葉さんもスポーツ志向だったのかも

社会人となり経済的にも少し余裕ができたことで限定解除し、いよいよ大型バイクへ。実は限定解除するきっかけのひとつになったのは、会社のツーリングクラブに入ったこと。周囲がみな大型バイクに乗る中、250でついていくのが大変だった。

そこで会社の半休制度を利用して限定解除に挑戦。晴れて大型二輪免許を取得すると、なんとドゥカティ750F1を購入。RG250Γからの乗り換えと考えればまあ納得できる選択なのだが、ツーリング向きとはいえないバイクではあった。そこで千葉さんはヤマハSRX400を増車した。その後は、カワサキ ゼファー750、ニンジャZX‐10へと乗り換えていくこととなる。

限定解除後に購入したのがドゥカティ750F1。RG250Γの次のモデルとしては、同じジャンルのバイクなので納得のチョイス

だが、より快適なバイクを求めて、ドゥカティ906パゾに乗り換える。そしてこのパゾで北海道を新婚旅行したのである。そういう意味でも千葉さんにとって思い出深いバイクとなった。その証拠に、後に再度パゾを購入している。

より快適なバイクを求めて選んだのがドゥカティ906パゾだった。北海道へ新婚旅行にも出かけた思い出深いバイクとなった

そしてパゾ購入を機にオーナーズクラブへ入会。ここでさまざまな人と出会い多くの情報を得ることになる。

バイク所有への欲求はとどまることを知らず、新たにスズキGSF1200を増車。その後、2台を手放してドゥカティST2を新車で購入。またまたオーナーズクラブへ入会する。千葉さんは積極的にコミュニティに参加することでバイク仲間を増やしていったのである。

本格的にレースに参戦することはなかったが、若いころから友人に誘われてサーキット走行した経験を持つ。ドゥカティST2ではライディングパーティにも参加し、タンデムジェットコースターも体験した

ドゥカティとは別にSRX400、ゼファー750、NinjaZX-10やGSF1200などのさまざまな国産モデルにも乗り換えながら所有していった

ST2には5〜6年乗り、同じドゥカティのスーパースポーツである748に乗り換えた。ここへきてまた尖ったバイクへ回帰したのだが、たまたまBMWディーラーでF800STを試乗したことがきっかけで、F650GSを購入し乗り換えた。「取り回しがラクでツーリングも快適にできて楽しいバイクでした」と絶賛する。だがそれはそれとして、再度パゾを購入し、2台体制へと戻った。その後パゾはSS1000DSへと乗り換えることとなったのだが、ドゥカティだけでこれだけの車種を乗り継いだ人も珍しい。しかしSS1000DSを最後にドゥカティスタを卒業。R80を入手し、F650GSともどもBMWユーザーとなったのである。「BMW空冷2バルブのコミュニティはないか探したところ、『2バルブで行こう』というグループが見つかり連絡したんです。それが和田さんとの出会いでした」

F650GSユーザーとなったことでBMWへの興味が大きくなった千葉さんは、どうせならボクサーエンジンのスタンダードなモデルに乗ろうとOHVのR80を購入。一生所有していくと語っていた

静岡県の朝霧高原でフィールドドッグガーデンという施設を運営する和田尋志さんはさまざまなコミュニティを主宰していて、BMW 2バルブボクサーエンジン車やコマ図ラリー、カブ1000、オフロードクラブ5upなどのイベントを開催している。千葉さんはそんなコミュニティにすっかりはまってしまい、ラリー参加のためにセロー250を買い、カブ1000参加のためにCT125ハンターカブを購入したのである。そしてF650GSはR1200Rに乗り換え、現在の4台体制となった。

和田さんのコミュニティに参加したことで新たな楽しみとなったカブ1000。そのためホンダCT125・ハンターカブを購入し、下道での長距離ツーリングの魅力を知ることとなった。カブ1000は1000㎞の行程で能登半島でキャンプをするというもの。大きな地震で被害を受けた能登を応援する意味もあり、今年も9月に開催する

所有したバイクのオーナーズクラブやコミュニティに積極的に参加することで友達の輪を広げた千葉さんのバイクライフは常に活気に溢れ充実し続けている。

和田さん主宰の「2バルブで行こう」コミュニティは、千葉さんの予想に反してオフ色が強いものだった。だがそれを機にセロー250を購入し、林道ツーリングやドア オブ アドベンチャーをはじめとしたコマ図ラリーにも参加するようになった。こうして新たなバイクの楽しさを知ったのである

BMWユーザーのきっかけとなったのがF650GSとの出会い。軽くて取り回しやすく、快適なツーリングができたことで千葉さんお気に入りの1台となった

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