
標高1959mの絶景ロードを走る!メルヘン街道から楽しむビーナスラインツーリング|長野県
ライダーの聖地、ビーナスライン。真夏でも清々しい風と壮大な景色が楽しめるスカイラインは何度訪れても良いもの。今年は少し趣向を変えて味わい深い「峠道」を越えて訪れてみてはいかがだろうか
文/横田和彦 写真/関野 温
心に刻まれる緑と湖のコントラスト
アナタにはふと行きたくなる場所というものがあるだろうか。忙しない日常で混沌とした気持ちを解放しリラックスさせてくれる場所。ボクにとってそのひとつが爽やかな高原を抜けるビーナスラインだ。毎年のように訪れているが、いつも中央自動車道・諏訪ICまで一気に走ってビーナスラインに入っている。しかし今回は少しルートを変えて高地を走る国道299号、通称「メルヘン街道」を通ってアクセスすることに。涼しいビーナスラインへ向かう過程も走りやすい気候の道が良いと考えたからだ。

関越自動車道から上信越自動車道に入り、佐久小諸JCTから中部横断自動車道へ。八千穂高原ICでメルヘン街道にぶつかる。高速道路では、今回の相棒であるドゥカティ ムルティストラーダV4Sに搭載されているアダプティブ・クルーズ・コントロールなどの先進技術が威力を発揮し疲れを軽減。ここまで来て走る気力はまったく衰えていない。
道の駅 八千穂高原で一度休憩、近くで給油する。この先ガソリンスタンドが少なくなるので、ここで入れておこう。ガソリンゲージが満タンになったのを確認し、ビーナスラインに向けて走り出した。「メルヘン街道なんてずいぶんロマンチックな名前だよなぁ」と考えていると、さっそくメルヘンな出来事が!なんと目の前を可愛いリスが横切っていったのである。実は山の中では動物の飛び出しは珍しくない。リスならよいが、鹿のような大型動物だと大事になりかねない。夕方以降は特に注意するようにと経験豊富なカメラマンに言われたことを思い出し気を引き締める。


道の駅 八千穂高原
高速道路を降りてすぐの所にある、昨年オープンしたばかりの新しい道の駅。24時間営業のコンビニのほか和食レストランやアウトドア用品店などもあるので待ち合わせ場所としても最適
緑が覆いかぶさるような幻想的な景色の中を走ると気温がどんどん下がっていく。それもそのはず、メルヘン街道の最高地点は日本の国道で2番目の標高。かなり高いところを走る街道なのだ。真夏は快適だが、それ以外の季節だと寒く感じることも。温度調節用のインナーは常備しておきたい。
最高地点看板を抜け「麦草ヒュッテ」で一休み。大自然の中でホットコーヒーを飲む。都会の喧騒は記憶の彼方に消えている。気分はもう完全に旅人だ。

長野県茅野市北山8241-1
TEL0266-78-2231
営業時間:
売店・9:00〜16:00
喫茶・10:00〜16:00
食堂・11:00〜14:00
定休日:水曜

赤い三角屋根がシンボルの山小屋。宿泊のほか食堂や喫茶、オリジナル商品の販売も行っている。駐車場が未舗装なのでバイクは注意
メルヘン街道を抜けて、蓼科湖の近くでビーナスラインに合流する。道の駅 八千穂高原からは1時間あまりの行程だが、タイトなワインディングが続き、道幅が狭いところや荒れた路面などがあったので軽い緊張感が続いていた。ムルティストラーダV4Sのスポーティなハンドリングは楽しめたけれど、一度気持ちをリセットするため道の駅ビーナスライン蓼科湖に停まる。気軽に立ち寄れる道の駅ってライダーの強い味方だよなぁと実感する。
ビーナスラインの魅力のひとつは、アップダウンするルートの所々に湖があること。緑の山道を抜けたところに湖が現れると何とも不思議な、ワクワクした気持ちになる。農業のために人が造り出した湖が多いのだが、現在は立派な観光地になっている。白樺湖なんて1日で回れるのかと思うほど多くの施設がありいつも家族連れで賑わっているよね。

諏訪富士とも呼ばれる蓼科山と白樺湖が望める人気の絶景ポイント。適度に広く、路面が舗装してあるのでバイクでも不安なく入っていける

白樺湖は一周約4㎞の人工湖。周囲にはホテルをはじめ美術館、遊園地、乗馬などが楽しめる施設が点在している。湖畔にコンビニがあるのが嬉しい。パワースポットでもある女神湖は少し小振りな人工湖。静かで水面に映る景色も美しい
そろそろお昼時だよな、と考えながら女神湖へ移動。ここはパワースポットとしても有名なので、サンデーレース参戦を前に立ち寄った次第だ。女神像を拝んでから周囲をゆっくり走ると「モーターサイクル・エントランス」の看板が目に飛び込んできた。イラストに引かれるように入っていくとオシャレな空間が現れた。

ドッグライダーカフェ ビーナス9は、その名の通りバイク乗りと犬連れに優しいカフェだ。バイク乗りの先客がいて、楽しそうに会話しながら食事している。聞けば4人ともバイク乗り。2人は地元で2人は浜松から来たという。こういう場所で出会うと、すぐに会話が弾むのがバイク乗り同士の良いところだ。マスターオススメのキューバサンドを食べながら昼のひと時を楽しんだ。


DogRider Cafe Venus9
バイク専用の駐車場がある緑に囲まれたカフェ。コーヒーは味わい深いハンドドリップ。地元のライダーが投稿したSNSを見て新しいお客さんが来るという。愛犬も一緒に食事できるスペースや、宿泊できるコテージも備わってる

長野県北佐久郡立科町芦田八ケ野1032
TEL0267-88-8818
営業時間:10:30〜17:00
定休日:木曜
お腹を満たしたところでビーナスラインに戻り、さらに高所を目指す。車山高原に単車神社があると聞いていたので立ち寄り自分のみならず家族や仲間の交通安全を祈願。余談だけど。バイクに乗っていると時に奇跡としか思えないシーンに遭遇することがある。そんな時には神の存在を意識するので、個人的には神頼みも大切だと考えている。

ビーナスラインで一番有名ともいえる無料駐車場。休日ともなれば数多くのバイクが集まる。さまざまな味が楽しめる屋台のほか、食堂やお土産屋さんがある建物、トイレもある。広いのでミーティングなどが開催されることもある
標高が上がるにつれ、視界がどんどん開けていく。雄大なパノラマを楽しみながら走れるのがビーナスラインの良いところ。残念ながら今日は雲があるのであまり遠くまで見通せないが、それでも随所で見られる雄大な景色は心に染み渡る。「来てよかったな~」と思う瞬間だ。一人旅だと好きなところでサッと停まって写真を取り絶景を目に焼き付けてから再スタートする、が気軽にできるからイイんだよね。
登るにつれて峠道は急になり険しくなっていく。休日は交通量が多いので、慎重にライディングしたいポイントでもある。ビギナーと一緒に走るなら声掛けしながらペースに気をつけてあげたい。ビーナスラインの最高地点(1959m)を経て、本日の目的地である道の駅 美ヶ原高原に無事到着した。ここも本来は眺めが良いところなんだけど……相変わらず雲が多め。思えば今まで雲ひとつない青空ピーカンだったことはあるだろうか。う~ん、ないかも(笑)。写真で見るような究極の絶景は次回に持ち越しだ。まぁビーナスラインは何度来ても楽しいところだからいいか。

いつもならここで終了、あとは帰宅するだけの消化試合みたいなものだけど、実は道中である興味深い情報を仕入れた。諏訪湖周辺で食べられる「みそ天丼がウマい」という話だ。今まで食べたことがなかったので興味が湧き、一気にビーナスラインを駆け下りると諏訪湖近くの秋月そば本店へ向かった。庶民的な店で味わえるみそ天丼は、今回の旅の締めくくりにピッタリの味。最後の最後まで大満足。ビーナスラインへのツーリングは、毎回新しい思い出を作ってくれる。

秋月そば本店
諏訪湖のワカサギと川海老、網に見立てた素揚げの信州蕎麦、御柱をイメージした柱、季節の山菜などによりボリューム満点。甘みのある味噌ダレでの味付けが新鮮だ

長野県諏訪市湖岸通り4-12-1
TEL0266-52-2278
営業時間:
11:00〜15:00
17:00〜21:00
定休日:水曜