KTM 990デューク試乗インプレッション|“READY TO RACE”哲学が宿るスパイシーな走り

小排気量車から大排気量車、ネイキッドからアドベンチャー。さまざまなジャンルを手がける多彩なKTMのラインナップで最もKTMらしさを感じるのは?そんな質問には迷うことなく990デュークと答えたい。このモデルにはKTMらしさがこれでもかと詰まっている

BikeJIN vol.271 9月号
写真/真弓悟史 文/谷田貝洋暁
問:KTM JAPAN
TEL03-3527-8885 
https://www.ktm.com

強烈な個性で国産モデルを圧倒

〝乗りやすい〞、〝扱いやすい〞なんて言葉が常套句になりつつある日本のバイク。その点、強い個性を求めるならやっぱり外車が面白い。ドイツのBMWであれば〝旅での快適性〞、イギリスのトライアンフなら〝レトロなデザイン〞や〝並列3気筒エンジン〞などなど。どのメーカーも何某かの強みを打ち立てている。

ただ、オーストリアのKTMほど明確な哲学を掲げてバイクを作るメーカーもない。その哲学とは〝READY TO RACE〞。直訳すれば〝すぐさまレースへ〞。〝レース直系〞的なニュアンスだ。ロードスポーツや競技用オフロードバイクのような元来、スポーツ性が高くあるべき機種は言うに及ばず。長旅するためのアドベンチャーモデルに至るまで、すべてのモデルに〝READY TO RACE〞の思想が行き渡っている。

では、〝READY TO RACE〞とはいったいなんなのか? 実際に乗ってみるとよく分かるのだが、KTMのモデルはついついスロットルを開けてスポーティに走りたくなるモデルが多く、走らせていると峠道でも、一般道でも前のめり気味に目が吊り上がってくる。アドベンチャーモデルも含めてそんなキャラクターであり、中でも今回の主役である990デュークは〝READY TO RACE〞な傾向がひときわ強いのだ。

燃料込みで190kgという軽量な車体に123馬力のパワフルな947ccの並列2気筒エンジンを搭載。ちなみに、もっとも鋭い加速をする〝TRACK〞のスロットルレスポンスは、オプションのテックパックを導入しないと選べないので、このマシンの〝本領〞を体感したい人はぜひ導入を。

テックパックで解放される“TRACK”のスロットルレスポンスは暴力的。この快感は安全第一の国産車では味わえない

機能を全開放するテックパックは+17万6551円

「クルーズコントロール」、「MSR」、「上下対応クイックシフター」、「アダプティブブレーキライト」、「TRACK PACK」が使えるようになるテックパックはオプション。ただし、新車から1500㎞までのデモモードでは、テックパックの機能がすべて使用可能で、購入するかを後で決めることができる。特に「TRACK PACK」に関しては、標準装備のモード「Rain」、「Street」、「Sport」に加え、「Track」、「Performance」の2モードが追加。エンジン出力特性に関しても一番ピーキーな設定が選べるようになり、スリップアジャスターなどの機能も開放される。

テックパックを導入すると、トラクションコントロールの介入具合を9段階で調整できる「スリップアジャスター」などを含むTRACK PACKの機能が使えるように

路面状況に左右されない“READY TO RACE”

走りの楽しさに“ついつい目を吊り上げて走る”のがKTMのフィロソフィである“READY TO RACE”だ

947cc並列2気筒エンジンは、KTMが得意な75° Vツインと同じ燃焼間隔の285°位相クランクを採用。歯切れのいいトルク特性がその持ち味
兎にも角にもエッジが利いた990デュークのマスク。“万人受けせずとも熱狂的なファンがいればいい”、そんな強烈なデザインコンセプトを感じる
幅広のバーハンドルは、ライダーが積極的にバイクを捩じ伏せていく走りが可能。“いかに乗り手のアドレナリンを引き出すか?”そんな意図を感じる
ウインカー下のスイッチにお気に入り機能を設定すれば瞬時にアクセスが可能。グリップ下のパドルスイッチはクルーズコントロールで使う

今回の試乗車は、このテックパックに加えて、アクラポビッチのオプションパーツを装着。試乗にあたり、早速〝TRACK〞のスロットルレスポンスを試してみれば、〝街乗りや高速道路移動では若干使いづらい〞と思うくらいピックアップがいい。……なんてことを書くと990デュークが扱いにくく、玄人向けのモデルに思えるかもしれないが、ライディングモードには「レイン」や「ストリート」、「スポーツ」(スロットルレスポンスに関しては「ストリート」と「スポーツ」は同じ)もある。「レイン」モードはかなり扱いやすいので、〝初心者だけど990デュークに乗りたい〞というライダーは、まず「レイン」モードでバイクに慣れるところから始めてみよう。実際、車体が軽くハンドリングもニュートラルな990デュークは、「レイン」モードであれば十分扱いやすく、街乗りからツーリングまで幅広い用途で使えるマシンに仕上がっている。

さて、そんな990デュークのスパイシーな動力性能を全開放すべく、ワインディングへ……。しかし、峠道はまさかのフルウエット。ただ、こんな時にもすごすごと踵を返さなくていいのが990デューク。というのも電子制御スロットルと6軸IMUを使ったかなり出来の良いトラクションコントロールを搭載しているからだ。

フルウエットの路面を「Rain」モードでガバ開けすれば、トラクションコントロールが介入しながらも、最大限前へ進ませるような“攻め”の制御を入れてくる

思えば近年のトラクションコントロールの進化の中で、最も度肝を抜かれたのがこのデュークシリーズだった。当時は692.7ccのOHC単気筒を積んだ690デュークだったが、16年モデルで大容量通信が可能なCANバスを搭載し、トラクションコントロールやABSの制御レベルが向上。雨天でもスロットルを開けられるモデルへと進化した。

フルウエットでもフルスロットル!

990デュークのトラクションコントロールシステムの出来を確認すべく、走行モードを「レイン」にして峠道を駆け上がる。路面状況はタイヤが跳ね上げる水滴が乗りながら見えるほどのフルウエット……なのだがフロントタイヤからは路面を掴んでいる感覚がしっかり伝わってくるのでそれほど不安は感じない。

ならば?とコーナーの出口に向けてスロットルをやや多めに開けて、トラクションコントロールの介入具合を探ってみる。電子制御スロットルに加え、6軸IMUを使う990デュークのトラクションコントロールの介入具合はものすごく自然で扱いやすい印象だ。介入時に急にスロットルを戻されるような失速感がなく、うまい具合に後輪の空転を防ぎながらも、駆動はしっかりかかり続ける。メーターインジケーターが光っているのでトラクションコントロールの介入が認知できるのだが、光らなかったら〝ちゃんと効いているのか?〞と不安になるライダーもいることだろう。面白いのはバンク中はしっかり強めの介入を入れてくるのだが、コーナー出口でマシンが立ち上がってくるとバンク角(滑りやすさ)に合わせた介入調整を行うこと。ガバ開けのまま旋回させていると、マシンが直立に近づくとエンジンの回転数が上がり強い駆動をかけてくる。

5インチメーター。標準装備のモードは「Rain」、「Street」、「Sport」で、トラクションコントロールの設定が異なり、出力特性も「Rain」とそれ以外で違う

しかも、今回の試乗ではフルウエットから徐々に路面が乾いていくようなコンディションを走ることになったが、グリップの回復に合わせて出力調整しているのがよく分かる。ここまでトラクションコントロールの介入具合を信用できるようになったら、もはや鬼に金棒。どんな路面状況であっても、ワイドオープンのままコーナーを駆け抜ける〝READY TO RACE〞な走りが体現できているはずだ。

KTM 990 DUKE

エンジン:水冷4st.並列2 気筒947 ㏄
最高出力:123ps/9500rpm
最大トルク:10.5㎏ -m/6750rpm
重量:190㎏
シート高:825 ㎜
燃料タンク容量:14.8L(ハイオク)
タイヤサイズ:
F=120/70ZR17
R=180/55ZR17
価格:185 万3000円

シート高は825㎜。しっかりと着座部が絞られているおかげで、両足のカカトが僅かに浮く程度の足着き。若干前傾が付くネイキッドポジションで長時間の運転もラク。ただしシートは薄めであまり長距離走行には向かない印象
テスター : 172㎝ 75㎏
オプションのテックパックで「Track」モードを表示した場合の画面。ラップタイムメインとなり、様々な電子制御レベルのパラメーター変更が可能

φ43㎜のWP製APEXサスペンションは、伸び/圧共に5段階の減衰力調整が可能。リヤショックも伸び側の減衰力とプリロードの調整機構を備える

一体型のストップランプ&ウインカー。テックパックを導入すると、急ブレーキ時にランプが高速点滅する「アダプティブブレーキライト」が使える

タンデムシート下にはギリギリETC車載器が収まりそうなスペースと、タンデマーが掴むワイヤー。工具はKTMらしく、ソケットツールまで備えている

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