
ライディングの質を高める逸品:ライディングステップキットの重要性
愛車をより自分に合ったマシンにするために、さまざまなカスタムパーツが販売されている。ここではライディングスキル向上に役立つ、厳選された逸品たちをご紹介しよう。
PHOTO/K.MASUKAWA TEXT/T.TAMIYA ILLUSTRATIONS/H.TANAKA
基礎知識①:マシンコントロールに欠かせない重要パーツ
ステップは「フットレスト」と呼ばれることもあるが、スポーツライディングにおけるステップは単に足を置いて休ませるところではなく、マシンをホールドしたり、前後左右に体重移動したり、マシンに荷重するために必要不可欠なパーツとなる。
また、一般的なバイクの場合は右側にリアブレーキ、左側にシフトチェンジの機構が備わっていて、減速や車体姿勢調整、変速においてもステップは重要な役割を果たす。
純正が乗り心地やコストダウンを優先するのに対し、リプレイスメーカー製は操縦性や剛性感や調整機能充実化を重視する傾向にある。

基礎知識②:滑りにくいペグの方がスポーツライディングに向く
スポーツライディングでは頻繁にペグを踏み込み、常に左右の入力量を調整するため、当然ながら滑りにくいペグが好まれる。 社外品のペグは防振ラバーを廃し、高強度アルミ合金の表面にギザギザの加工が施されていることがほとんど。
これは一般的にローレット加工(転造と切削の方法がある)と呼ばれるが、これとは別に近年は、NCマシンなどで溝を切削加工することで、より深く鋭利かつ理想的な形状に仕上げたペグも多い(広義ではこれもローレット加工に含まれる)。

基礎知識③ヒールプレートの形状でホールドのしやすさが変わる
ヒールプレート(ヒールガードとも呼ばれる)は、ドライブチェーンやリアタイヤに足が巻き込まれるのを抑止するパーツとしても機能するが、これに内側のくるぶしをピタッと添えることで、車体のホールド性を高めることもできるし、外足が極端に開かなくなるため適正な乗車姿勢になりやすい。
社外ステップキットの場合、ヒールプレートに大胆な肉抜き加工が施されている製品でも、このような操縦性を考慮した剛性が与えられている。

基礎知識④:現代ではバックステップにならない製品も少なくない
以前は、ステップをリプレイスする社外パーツは「バックステップ」と呼ばれた。これは、’70〜’80年代に市販車をレーサー化するとき、前傾姿勢を確立するために、低いハンドルの換装と併せてステップを後方に移設していたことに由来する。
現代のスーパースポーツは純正でもステップがかなり後方に配置されており、アフターマーケット製に換装する目的が〝バック〞ではないことが増えた。
逆に純正比〝フォワード〞が設定されている製品もあるくらいだ。

基礎知識⑤:ペグやペダルの位置を変えられる製品が主流
近年のステップキットは、フットペグの位置が可変式になっていて、ポジションを選択できる製品がほとんど(4〜6ポジション設定が一般的)。さらに、ペダル先端の位置も調整できる製品も多い。
ライダーの体格や好みなどにアジャストできるため、より正確なステップワークやペダル操作ができるようになるのがメリット。
少し手間はかかるが、「ツーリングは前で下、サーキットでは上で後ろに……」なんて、ひとつの製品で走るシーンによってポジションを変更することも可能だ。

基礎知識⑥:ベアリング入りなら操作感に優れる
純正ステップの場合、シフトペダルやブレーキペダルの軸受け部には、金属が筒状になったメタルブッシュが使われているのが一般的。一方で社外品のステップキットは、ここにボールベアリングやローラーベアリングを用いることが多く、2列に並べたダブルベアリング構造を採用している製品もある。
ベアリング仕様は剛性が高く、ガタツキが少なく、ペダルの作動性に優れるため、素早く確実なシフトチェンジや微妙なリアブレーキ調整がしやすく、ギア抜けの抑制も期待できる。

基礎知識⑦:サーキット走行だけでなくツーリングでも効果絶大
ノーマルのフットペグ位置は、各社が設定した基準体型をベースに、幅広い体格のライダーに合うよう設定されている。そのため、日本人の中でも小柄なライダーが乗ると、ポジションがイマイチ合わず、長時間の走行で疲労が蓄積する要因になることも……。 社外品でフットペグの位置を変更すると、これらが改善される場合もある。
もちろん、優れた作動性やホールド性は爽快感の演出にもつながるし、ステップキットはドレスアップパーツとしても機能する。
