
【KAWASAKI Ninja 1100SX】旅からスポーツまでカバーする〝ちょうど良い〟守備範囲が秀逸【中野真矢×平嶋夏美インプレッション】
カワサキの人気スポーツツアラーが、新たなエンジンを獲得。中低速トルクを強化したことで、その走りはどう変わったのか?新生ニンジャを中野真矢さんと平嶋夏海さんの2人が、サーキットを走り込み、そのポテンシャルを探る。
PHOTO/S.MAYUMI TEXT/K.ASAKURA
取材協力/カワサキモータースジャパン ☎0120-400819
https://www.kawasaki-motors.com/
スポーツツアラーの雄が新エンジンを得て進化
中野 今回走らせたのは、ニンジャ1100SXです。人気スポーツツアラーモデルのニンジャ1000SXが、排気量アップをメインにリニューアルしたモデルだね。
平嶋 中野さんは既に試乗済みなんですよね? どうでした?
中野 街乗りしか試せなかったけど、好印象だったね。だから今回、よりハイスピードなサーキットを走れるのが楽しみだった。じつは先代モデルのニンジャ1000SXって、かなり好きなバイクなんだよね。僕はレース育ちだし、スポーツバイクが好きだし、こういうストリート重視のバイクってあまり縁がなかった。そんな僕に“こういうバイクもいいよなあ”と思わせてくれた一台。そういう意味でも、進化したニンジャ1100SXで走り込むのを楽しみにしていたんだ。
平嶋 スペックを確認していて気付いたんですけど、排気量が大きくなっているのに、最高出力が5ps下がっているんですよね。“排気量アップ=パワーアップ”だとばかり思い込んでいましたから、どういうことなのかな? って。
中野 排気ガス規制対策で、排気量アップしてパワーダウンする場合もあるみたいだけど、このモデルについては、より低中回転域に振ったエンジン特性を狙ったということみたい。最高出力は下がったけど、発生回転数も1000rpm下がっているし、最大トルクも発生回転数が下がって、最大トルクは増大している。そもそも、最高出力が下がったといっても、遅くなったと感じた?
平嶋 イエイエ、全然です! 十分以上に速かったですよ。
中野 だよね。僕も速さの面で、なんの不満も感じなかったな。中低速が強化されたことによる恩恵は、強く感じることができたけどね。
平嶋 とにかく開けやすいし、思ったように加速してくれます。回すのが楽しいだけのエンジンじゃないって思いました。
中低速トルクの向上が速さと楽しさを引き上げた
中野 しかし、サーキットでニンジャ1100SXを走らせたら、想像していた以上に楽しかったことに驚いたなあ。やっぱり中低速の領域がちょうどイイよ!
平嶋 以前に試乗したのは、一般公道だったんですよね? 中低速の強いエンジンというと、ストリート重視のイメージがあるし、良いのは想像がつくんですよ。サーキットでもメリットが大きいんですか?
中野 メリット大きい、大きいよ! 中低速は大事だよ。コーナーでは、どうしたって速度もエンジン回転数も下がるでしょ? そこからスロットルを開けて、パワーバンドまでスムーズに回転を上げてくれるのが中低速トルクだから。

平嶋 確かにそうですね。エンジン回転数が落ちちゃうと、立ち上がり加速でもたついちゃいます。じゃあって、コーナー進入時にギアを落とし過ぎると、今度はギクシャクしちゃったりすることもあるし……。
中野 そういうこと。あと、このバイクはトルク特性だけじゃなくて、エンジン全体のバランスが秀逸。クイックシフターの入り方がメチャクチャ気持ち良いし、トラクションコントロールのセッティングも抜群。
平嶋 ほとんどのコーナー立ち上がりで。“バババババッ”って音をさせてましたよね。トラクションコントロール介入させ過ぎ(笑)。
中野 いや、それはトラクションコントロールのレベルが高いからこそなんだよ。これは僕の持論なんだけど、低中速トルクの強いエンジンは、トラクションコントロールが良くないとダメ。リアタイヤを蹴り出す力が大きい分、開けた時にグリップの限界を超えやすいからね。その点、ニンジャ1100SXは、すごくレベルが高い。リアタイヤがブレイクした時に、しっかりとグリップを回復してくれる。

平嶋 普通の人にとっては、トラクションコントロールって、万が一の時に助けてくれるサポートデバイスだと思うんですけど、中野さんのレベルだと速く走るための道具になっているという……(笑)。
中野 それだけ完成度の高いトラクションコントロールだと思ってくれていいよ。僕の感覚だと、ライディングモードが「ロード」だと介入し過ぎかな? 「スポーツ」はかなり好みのセッティングだった。カワサキのMotoGPマシンの味付けを思い出したよ。“そうそう、こんな感じ”って。やっぱりカワサキらしさがあるよね。ただのツアラーじゃない、しっかりスポーツバイクなんだ。
平嶋 グイグイ、クルクル曲がるバイクじゃないんですけど、ちゃんとコーナーが楽しいんですよね。車体が安定しているからかな?
中野 基本、安定志向の車体だよね。スーパースポーツのような鋭さはないけど、バンクさせればしっかり曲がってくれる。標準装着されているタイヤもすごく良いね。グリップが掴みやすく、ウォームアップも早い。バイクとのバランスがホント良い。
平嶋 途中でサスペンションのセッティングを変えていましたよね。あれは、どういう意図でやったことだったんですか?
中野 ちょっと、フロントが動き過ぎに感じたんだよね。せっかく、フルアジャスタブルのサスペンションだし、触ってみたらどう変わるかにも興味があったから。フロントフォークのプリロードと圧側ダンパーを、ちょっと強めにしてみたけど、個人的には大成功。スタンダードセッティングだと、軽くブレーキをかけただけで、ノーズダイブが気になっていたからね。
平嶋 私も“中野セッティング”を試させてもらいましたけど、確かに攻めるならアリですね。スタンダードセッティングは、コーナリング中にフワフワしちゃうことがありました。でも、スタンダードセッティングも“ソレはソレ”で良いんですよ。ストリートだったら、私はスタンダードの方が好みですね。ピッチングが大きい分、曲がるきっかけが掴みやすく感じました。Uターンとか8の字とか、低速小回りを試した時に、そう思いました。それに、ソフトな方が長距離を走った時なんかは疲れにくいですし。

中野 ツーリング初心者の僕には無い視点です、勉強になります(笑)。そうは言いつつ、スタンダードセッティングのままでも、かなり攻められるよね。このコースで、最終コーナーからメインストレートに向けて開けていくと、リアタイヤが滑り出すんだけど、ちゃんとサスペンションがバイクを前に押し出してくれる。基本設定がソフトなのに。
平嶋 ツーリングの途中でワインディングを走る時とかなら、スタンダードセッティングでバッチリだと思います。
中野 ストックのままで、万能に使えるよね。
平嶋 そうなんですよ。ポジションもラクだし。
中野 意外に足着きも悪くない。
平嶋 シートがスリムなところが効いてます。車格が大きいし車重もあるじゃないですか? 取り回しが軽いわけじゃないんです。私の体格と体力だと、ちょっと構えちゃうんです。でも、女性ライダーの友達にニンジャ1000SXオーナーがいて、スゴく気に入ってる。「大きくない?」って聞いたら「でも、走り出すとスゴく扱いやすいから」って。今回走り込んで、確かにそうだなあって感じました。ホント、乗りやすくて万能だなって。

中野 カッコイイしね。このシャープな顔つき好きだなあ。
平嶋 前から「欲しいバイクの1台」って言ってましたもんね。いよいよオーナーになって、本格ツーリングライダーデビューします?
中野 真面目に悩んじゃうね(笑)。
KAWASAKI Ninja 1100SX






エンジン | 水冷4ストローク直列4気筒 DOHC4バルブ |
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総排気量 | 1098cc |
ボア×ストローク | 77.0×59.0mm |
圧縮比 | 11.8:1 |
最高出力 | 136ps/9000rpm |
最大トルク | 11.5kgf·m/7600rpm |
変速機 | 6段 |
クラッチ | 湿式多板 |
フレーム | ダイヤモンド |
キャスター/トレール | 24°/98mm |
サスペンション | F=φ41mm倒立フォーク(フルアジャスタブル) R=ホリゾンタルバックリンク(プリロード、伸び側減衰調整式) |
ブレーキ | F=φ300mmダブルディスク+ラジアルマウントキャリパー R=φ260mmシングルディスク+1ピストンキャリパー |
タイヤサイズ | F=120/70ZR17 R=190/50ZR17 |
全長×全幅×全高 | 2100×805×1190~1225mm |
ホイールベース | 1440mm |
シート高 | 820mm |
車両重量 | 236kg |
燃料タンク容量 | 19L |
価格 | 177万1000円 |