【試乗インプレ】V7スポルト’25年型の走行性能と乗り味を徹底解説

その気になれば、ある程度のペースでスポーティに走れる。ハンドリングは難しくないし、バンク角もそれなりに許容してくれる。それでいて、トバさなくても満足できてしまうところがV7スポルトの魅力。クラシックバイクの血統は捨てていない

■ BikeJIN vol.272 2025年10月号
写真/真弓悟史 文/田宮徹
問:ピアッジオコール

飽きずに乗り続けられて旅に彩りも加えてくれる

スロットルを開けると、勇ましい排気音。空冷Vツインの鼓動はビンビンに伝わってくる。熟成版エンジンは4400回転で最大トルクを発生、なおかつ3500回転でその95%を発揮するという。

実際、常用したいと感じるのは3000〜5000回転。まあ2000回転でも走れるが、中高速域ではやや物足りないし、レブリミットは7000回転だが、5000回転以上だと頑張っている感がありすぎる。

ちなみに、6速での100㎞/h巡航時は3750回転で、120㎞/hだと4500回転。排気音とパルスが心地よい範囲にちょうど収まり、高速巡航も飽きない。

新搭載のライディングモードは各モードで出力特性の違いが明確。スポルトのみ備えるスポーツモードは、けっこうアグレッシブな味つけで、演出として楽しめる。

とはいえ、このエンジンに最もマッチする印象なのはロードモード。ワインディングも、これひとつで十分楽しい。ロードが完璧だからこそ、スポーツをスパルタンな方向に振れたのだろう。

ライディングモードに加え、作動&解除のみのクルーズコントロールシステムも、シリーズ全車が新採用。これらの操作は右手側スイッチで

コーナリングはフレンドリー。とくに低中速カーブでは舵角をやや多めに感じるが、そこからハンドルが切れ込むような素振りはまるでなく、一方でバンク角を増やすことも拒否しない。基本的には安定志向なのだが、倒し込みでイン側のハンドルグリップを少し押してあげれば、クイックな操縦にも対応。さすが、スポルトを名乗るだけのことはある。

ダブルディスク&ラジアルマウントキャリパーのフロントブレーキはコントロール性に優れるのが最大の利点。制動力も高いが、現代的なスポーツバイクとは車体のディメンションがだいぶ異なるためか、ハードにブレーキングすると早めにタイヤが鳴きだす。スポルトはコーナリング対応のABSも装備しており安心感はあるとはいえ、無理は禁物だ。

ただし、いくらスポルトを名乗るからといって、そんなに激しい乗り方をするユーザーはそもそも多くないだろう。このエンジンに接していると、トバすことがバカらしくなってくる。低めの回転域でスロットルを開け閉めしたり、そのリズムに合わせてコーナーをゆったり駆け抜けたりすることが、最高の快感だからである。

丸1日乗って、最後に思ったことは、「これがいい!」だった。

’25年型V7は、シリーズ全仕様がマルチマップのライドバイワイヤシステムを新採用。スポルトのみバーエンドバックミラーを装備する
スポルトは、専用のスポーツシートを採用。ブラックの表皮にレッドのステッチを組み合わせる。シート高は全仕様が同じで780㎜

V7 Sport

エンジン形式:空冷4st.V 型2気筒853cc 
最高出力:67.3ps/6900rpm
最大トルク:7.9kg-m/4400rpm 
車両重量:220kg 
シート高:780mm 
燃料タンク容量:21L
タイヤサイズ:F=100/90-18、R=150/70-17 
価格:159万5000 円
純正装着タイヤはミシュランのロードクラシック。スポルトのキャストホイールは、似たデザインのストーン用より前後で1.8㎏も軽い
イーグルマークをモチーフとした、デイタイム・ランニング・ライトを装備。スポルトのヘッドライトブラケットは、アルミ製の専用品
シート下の収納スペースはほとんどない。スポルトは6軸IMU(慣性計測装置)を搭載し、データをABSとトラコンの制御に活用している
V7 StoneV7 SpecialV7 Sport
概要スポーティにまとめられたベーシックグレードの最新版
各部がブラックアウトされた車体とマット調の車体色で、シリーズの中で最もシンプルな雰囲気。キャストホイールを履き、正立フロントフォークはブーツ付き
オリジナルの雰囲気に寄せた落ち着きあるネオクラシック
スポークホイールやパイプ製グラブバー、タックロール風シートなどで、クラシックイメージを強調。マフラーやバックミラー、リヤサスなどをメッキ仕上げに
伝説の車名を復活させた専用装備満載の新登場モデル
現代的なスポルト専用装備を導入したスポーティ仕様。サイドパネルはアルミ製インサート付き。ストーンと同じく、車体各部はブラックアウトされている
サスペンション
(フロント)
正立フォーク正立フォーク倒立フォーク
ブレーキ
(フロント)
シングルディスクシングルディスクダブルディスク
ABS標準標準6軸IMU+
コーナリングABS
ライドバイワイヤーありありあり
走行モード2 種(共通モード)2 種(共通モード)3種(SPORT含む)
クルーズ
コントロール
ありありあり
価格145万2000円151万8000円159万5000円

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