チェーン、スプロケの変更が与える変化を正しく理解しよう【k-cross監修 セットアップ&メンテナンスクリニック】

今回のメニューは、前後スプロケット変更やチェーン交換による車体への影響を解説。数回に分けてマシンをセットアップしていこう。

PHOTO&TEXT/D.Miyaaki 宮崎大吾

チェーン、スプロケの変更が与える変化を正しく理解しよう

好みのマシンに仕上げるためのセッティングとして、サスペンションチューニングやギヤ比の変更はよく行われるメニューだ。しかしk-cross加藤店長はかねてより、それに伴うマシン挙動の変化を正しく理解したうえで仕上げることを提案している。

分かりやすい例で言えばギヤ比の変更。例えば駆動力を高めるためにリア(ドリブン)スプロケットを大きくしたり、フロント(ドライブ)スプロケットを小さくする手法はよく知られているが、それによってアクスル位置が変化することで、サスペンションの作動性やフロントへの荷重の大小にも大きく影響することを知らなければ、「柔らかくしたはずなのに、なぜか固くなった(もちろん、その逆もまた然り)、乗りづらくなった」といった症状にもなりかねない。

もちろんスプロケットだけでなくチェーンのコマ数(120・140・160リンク)によってもアクスル位置は変わってくる。さらにサスペンションの挙動だけでなく、フロントスプロケット周りやリアタイヤとマッドガード間の泥詰まりの有無にも関わってくる。単純な作業に見えて実は何通りもパターンが存在し、それを踏まえてマシンを作るべきだということなのだ。

自分がどんなマシンに仕上げたいのか、それを踏まえてどう調整していくべきなのか。迷っている人はぜひ加藤店長に相談してみてほしい。1度データを取れれば、コースにより調整で済むので、これは強く推奨したい。

チェーンのコマ数や前後スプロケットの丁数の変更により、アクスル位置が変わる。これはすなわちホイールベースの変更による車体姿勢、フロント荷重、さらにはサスペンションの挙動にも影響を与えることにつながる。フロントアクスル位置が前方に来ることで重心が後方にいき、フロントは軽くなることのメリットはあるものの、後輪と車体のクリアランスが減り泥つまりを起こしやすい。反対にフロントアクスル位置が後方になると駆動力と直進安定性は増し、タイヤのクリアランスも確保できてフロントヘビーとなる。一度自分の走るコースやシチュエーションを考えて調整するべきだが、データをとれば、他のコースでも応用が効くわけだ
リアスプロケットはホンダ純正の49T、51T(純正は13-50T)を用意。フロントは高精度、高品質で知られ、ロードレース、全日本モトクロスなどオフロードトップライダーも愛用するiSA「HD-103 12T」を使用した。12~14Tがラインナップされている
K-cross加藤店長が、限られた時間の中で多くのスプロケット、チェーン交換作業が必要な本取材用に推奨したRK「520 MXU」は、カシメが不要なクリップタイプのため迅速な交換が可能だ

加藤店長が制作したギヤ比一覧表が便利

131415
433.33.072.86
443.383.142.93
453.463.213
463.533.283.06
473.613.353.13
483.693.423.2
493.763.53.26
503.843.573.33
513.923.643.4

例:現在14-48T(ギヤ比3.42)と想定。駆動力を高めるためにリアスプロケットを51Tに変更
→チェーンのコマ数を増やしたため、リアアクスル位置が前方に移動。
● フロントが軽くなる
● タイヤと車体のクリアランスが減って泥つまりを起こしやすくなる
● リアサスペンションの動きが固くなる
結論:リアを3T上げるよりも、フロントを1T下げた方が良かったという結果が導き出せた

リアアクスル位置によりサスペンション挙動も変化する

リアアクスル位置が前にあるイメージ
リアアクスル位置が後ろにあるイメージ

サスペンションセッティング、チューニングは、アクスル位置の変化を踏まえて行わなければいけない。例えばリアアクスル位置が前方にあるとストロークさせるために、より多くの力が必要になるが、後方にあればその逆となる。加えて新品のチェーン状態で作られたセットは、チェーンが伸びてアクスル位置が後方に移ることでも変わってきてしまう。一見理解するのが難しく、パターンの多さに戸惑ってしまいがちだが、この原理と自分のマシンの各セットの数値(アクスル位置)を把握すれば、コースやチェーンの使用状況などによって応用し、調整すれば良くなるのだ

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