
Honda、新型モビリティ「UNI-ONE」を正式発表
未来の移動は、もう歩くだけじゃない。Hondaが発表した新型パーソナルモビリティ「UNI-ONE(ユニワン)」は、座ったまま体重移動だけで進む次世代モデルだ。法人向けサービスとして施設や観光地での活用が想定されており、発表会では開発背景や事業計画、そして試乗体験を通じた「新しい移動のかたち」が披露された。
法人向けサービスとして展開開始、社会実装を視野に

Hondaは、新型パーソナルモビリティ「UNI-ONE(ユニワン)」を正式に発表した。UNI-ONEは“座ったまま体重移動で操作できる”着座型のモビリティで、両手を使わずに自由に移動できる点が最大の特徴だ。発表会では、開発責任者やデザイナーが登壇し、製品の設計思想や事業方針が語られた。
UNI-ONEのデザインは「乗ってみたい、乗りたくなる」をキーワードに、利用者が安心して使える柔らかなフォルムを採用。一方で、浮遊感を演出する立ち上がりのスタイルや、ASIMOに代表されるHondaロボティクスのDNAを感じさせる造形が盛り込まれている。外観はシンプルながら、体重移動に反応する直感的な操作性を実現しており、利用者の年齢や体格を選ばない“誰にでも開かれたモビリティ”を目指している。
主な特徴とスペック
UNI-ONEはハンドルやジョイスティックを必要とせず、体重移動のみで全方位への移動が可能。人混みでの利用を想定し、あえてセンサーを搭載せず、人と接触しても安全な設計を採用している。坂道対応力も高く、独自の全方位駆動車輪機構で安定した走行を実現した。

- サイズ:全長787mm×全幅662mm×全高710mm(ロー時)
- シート高:ハイ700mm/ロー550mm
- 重量:80kg
- 航続距離:約10km
- 最大登坂角度:10度
- バッテリー:交換式リチウムイオン(充電約2時間)
- 防水性能:IP×4相当
サービス展開と導入計画
UNI-ONEは法人向け専用で、商業施設や観光地などでの利用を想定。提供形態は長期契約(1台あたり月額9〜12万円、契約年数・台数によって変動)と短期レンタル(1日5万5000円)の2種類。
Hondaは年間200台ペースで5年間合計1000台を生産する計画を掲げ、導入効果としては「顧客サービスの向上」「スタッフ業務の効率化」「先進的な施設イメージの訴求」「CSRやSDGsへの貢献」が挙げられ、社会実装に向けた取り組みが本格化している。
導入事例と応用可能性
具体的な導入事例として、大分県の「ハーモニーランド」が10台を導入予定。スタッフ用2台、来園者向け8台が配備される計画だ。今後は高齢者や障害のある人、長距離歩行が難しい人の移動支援に加え、AR/VR体験と連携した没入型エンターテインメントの展開も想定している。
さらにリハビリテーション分野への応用も視野に入れており、体幹トレーニングやバランス感覚の改善効果が確認されている。API連携を通じて外部コンテンツと統合することで、スポーツや展示案内など多様な用途が見込まれている。
実際に乗ってみました!

発表会では試乗体験の時間も設けられており、実際に乗ってみると、その独特な操作感に驚かされる。体重移動で進むという仕組みは、私たちが普段無意識に行っている「歩く」とはまったく別物で、最初は戸惑いが大きい。特に旋回などの細かな動きは、ある程度の慣れが必要だと感じた。ただし、一度感覚をつかめば思った以上にスムーズに前進し、両手が完全に自由になるのは新鮮だった。
走行中はモーターの駆動音がわずかに耳に届く程度で、停止すれば完全な無音。周囲の環境音だけが聞こえる静かな移動は、未来の“歩く”感覚を思わせる。車いすほどのスペースで走れるが、視点はやや高めで、歩行時と車いすの中間に位置するような高さ。視界を遮るものがないため、実際には「座っているのに歩いているのと同じ視野」が広がっており、不思議と自然な感覚を覚えた。
こうしてみると、UNI-ONEは単なるガジェットではなく、これまでにない「移動体験」を提示する乗り物だと実感できた。