
市販された国産トライアルバイクの歴史をたどる【YAMAHA/SUZUKI/KAWASAKI|オールドトライアルマシンカタログ】
国内で販売された国産トライアルバイクを創成期から紹介、解説する。懐かしく思う人もいれば、新鮮に見えるかもしれない。その進化の歴史を見て、読んで楽しんでほしい。HONDA編。
TEXT/F.Hamaya 濱矢文夫
YAMAHA
1973|TY250J
ヤマハ初の市販トライアルモデル。スペイン製のオッサに乗って英国トライアル選手権やヨーロッパ世界選手権を走っていた、SSDTを3連覇、ヨーロッパ選手権でも勝利経験のあるミック・アンドリュースと1973年に契約。
トライアル専用バイクを持っていなかったヤマハはDT250をベースにしたプロトタイプのYZ649を彼と契約する前から開発をしており、1973年、完成したTY250を海外で先行して発売(日本では1974年)。
ミック・アンドリュースはさらに改良した新型ワークスマシンで1974年と1975にSSDTで優勝をしている。

1973|TY250R
コンペティションモデルのTY250R。TY250スコティッシュの前年になる1983年に発売された。空冷2ストローク単気筒エンジンは246cc。70年代に誕生した従来のTY250とは吸気、排気、早期、ポート、ピストンなど完全に違う新設計。トライアル専用として開発された。CDI点火。セミエア式フロントフォークのホイールトラベルは180mm。
ハンドルバーはアルミ製。ストリートモデルのTY250スコティッシュの燃料タンクはスチール製だったが、競技車両のこちらは樹脂製。市販トライアルモデルとしては基本を変更せずに長い間発売され続け、1990年モデルからはフロントがディスクブレーキになった。

1975|TY50/TY80
TYシリーズの最小排気量モデル。前のホイールが18インチ、後ろのホイールが16インチのいわゆるミニサイズ。空冷エンジンはMR50/80、GT50/80のものがベースで低中回転域のトルクアップをはかっている。
フレームはトライアルバイクの定番であるダイヤモンドタイプではなくクレードルタイプ。73ccの80はボアもストロークも50より拡大している。トライアルブームだった時代の入門バイクとして重宝された。


1975|TY250Ⅱ
マイナーチェンジを受けたTY250J。軽量化のためにエンジンケースカバーがマグネシウム合金化された。それにともない、エンジン幅も狭められてよりマスの集中化がはかられている。TY250Jの105kgから104kgと1kgの減量化。

1975|TY125
TY250のスケールダウン版。最高出力7.6PSのエンジンは56×50mmの123cc。TY 50/80と違いホイールは21インチ、18インチのフルサイズ。当時の定価は18万9千円だった。

1976|TY175
TY125にオプションとしてあった175cc化キットが好評で、ボアを10mm広げたそれをスタンダードモデルとして発売。この175だけがワークスカラーを身にまとった。
これで50、80、125、175、250と2ストロークエンジントライアルモデルのラインナップが5モデルになった。当時のトライアル人気がうかがえる。TY175は国内で1977年を最後に発売が終わっている。

1994|TY250Z スコティッシュ
ヤマハの競技車両も含めて市販トライアルバイクとして最後のモデルになったTY250Z。従来のスチールフレームではなく、当時トレンドだったアルミフレームツインスパータイプ、デルタボックスフレームを採用。基本は競技車両と共有。リアはリンク式のモノクロスサスを採用。ストリートの基準を満たすために保安部品の装着だけでなく、異なる部分がある。
エンジンは2ストロークのピストンリードバルブは変わらないが水冷になった新設計。シリンダーはセラミックコンポジットメッキ。リアブレーキもディスク。競技車両より燃料タンクの容量が大きい(4.5L)。

1996|TY250Z
以前のTY250Rからすべてを刷新した新型モデル、デビューした1993年にはフランス人のトライアルライダー、パスカル・クトゥリエが乗って全日本チャンピオンになっている。乾燥重量は78kg。
デルタボックスアルミフレーム、アルミスイングアーム、前後ディスクブレーキ、サブ式付チャンバー、応答性を追求したリアショックなど当時の新しい技術が使われている。燃料タンクは3L容量。トライアル車らしくトレールは50mmしかない。

SUZUKI
1974|RL250
スズキ唯一のトライアル専用バイク。競技専用車両を「RL250」とし、ヘッドライトなど装着された公道バージョン(写真のモデル)を「RL250L」とした。燃料タンクはアルミ製で、フレームはクロームモリブデン製。
空冷エンジンはトレールモデルのハスラー250のものをベースにした。2ストロークピストンリードバルブでボア・ストロークは70mm×64mm。最高出力は17PS。トランスミッションは5段変速でフレームはセミダブルクレードル。

KAWASAKI
1975|250TX
トライアル熱が高まる中でライバルに負けじとカワサキはFIMトライアル世界選手権でチャンピオン経験があるイギリス人のドン・スミスと契約、競技車両の開発にも携わりKT250が誕生した。
それのストリートバージョンを250TXとして発売。発売期間は短く現存する車両が少ない。スチールパイプスイングアーム左側にはパイプ内にオイルを貯蔵するチェーンオイラーのシステムが付いている。
空冷2ストロークピストンバルブエンジンは高回転までフラットなトルク特性。
