
【カワサキ KLX230SM】源流はオン&オフの二刀流。軽快な走りを楽しめる1台【中野真矢×平嶋夏海インプレッション】
いまや希少な存在となった、メーカーメイドのスーパーモタード。ロードレースの練習のため、モタードマシンでサーキットを走り込んだ経験を持つ中野真矢さん。オフロード系マシン全般の経験が浅く、モタード初心者の平嶋夏海さん。そんな二人が、全く異なる目線からKLX230SMをインプレッション。
PHOTO/S.MAYUMI TEXT/K.ASAKURA
取材協力/カワサキモータースジャパン 70120-400819
https://www.kawasaki-motors.com/
ビッグバイク乗りにも練習マシンとして最適!
中野 今回走らせるのは、カワサキ期待のニューモデル、KLX230SM。いわゆる“スーパーモタード”カテゴリーの1台です。
平嶋 スーパーモタードって“オフロードバイクにオンロード的なタイヤを履かせたマシン”って認識でいいんですよね?
中野 それでいいと思うよ。
平嶋 アドベンチャーとかにカテゴライズされているバイクも、そんな感じですよね? 明確な線引きってあるのかなって……。
中野 あ〜、そういうこと。オフロードモデルは、その名の通りオフロードを走るためのバイクだよね。アドベンチャーは“オフロードも走れる”的な性能を持たせた、オンロードメインのバイクって感じの理解でいいんじゃないのかな。
平嶋 なるほど。
中野 スーパーモタードは、元々1周のコースの中で、オンロードとオフロード両方の要素があるレースを走るために造られたバイク。いろいろ実験的なマシンが造られて、現在はオフロードバイクの車体にオンロードのタイヤを履かせる構成に落ち着いているね。
平嶋 KLX230SMは、オフロードモデルのKLX230をベースにしたスーパーモタードなんですね。私、スーパーモタードって、ほとんど経験ないんですよ。中野さんは、どうなんですか?
中野 乗ったよ。現役時代に練習でかなり乗った。
平嶋 レーシングライダーの人が、シーズンオフにモタードトレーニングしていると聞きますけど、やっぱりトレーニングですか?
中野 そう。カワサキでMotoGPを走っている時に、トレーニング用にモトクロスレーサーのKX450をモタード化したマシンを作ってもらったので、よく練習で使ってた。

構えることなく全開が楽しめる
ラフに使い倒したい一台
ーー中野真矢
平嶋 ダートでジャンプしたりもしてたんですか?
中野 いや、基本はオンロードのコース。ミニサーキットとかで、みっちり走り込んでいたよ。ミニサーキットをスーパーモタードで攻めると、スピード感がMotoGPに近いものがあるんだよね。
平嶋 はーっ! そうなんですね。
中野 あと、スライドコントロールの練習。当時のMotoGPマシンは、バックトルクの制御が進んでいなかったから、どうしてもコーナーへの進入でリアがブレイクしちゃったの。その感覚に慣れるのと、コントロールする方法を身につけるために、スーパーモタードが良かったんだ。

平嶋 現在も、トレーニングに取り入れているライダーは多いですよね? やっぱり効果が大きい?
中野 だろうね。スライドを比較的安全に経験できるから。まあ、一般道でやるのは絶対にNGだけど、クローズドコースでマシンコントロールの練習として取り組むなら、有効な練習方法だと思うよ。
平嶋 レベルが高過ぎる話です。
中野 普段、ビッグバイクでサーキットを走っていて、伸び悩みを感じているのなら、スーパーモタードで練習するのも、ありなんじゃないかと思うよ。
車体もエンジンも全てがフレンドリー
平嶋 私、スーパーモタードの経験がほぼ無いって言いましたけど、オフロード系のバイクって全般的に車格が大きいので敬遠しちゃうんです。
中野 わかる。街乗りバイクとしてKLX250を持っていたけれど、“大きいな”と思っていたから。
平嶋 足着きが不安だったので、厚底ブーツを履いてきたんですよ。
中野 だよねえ。いつになく、平嶋さんの背が高い(笑)。
平嶋 でも、実際に跨ったら、思った以上に足が着くんです。
中野 サスペンションが柔らかくて、グーッと沈みこむからね。
平嶋 シートも車体もスリムですし、コレなら普通のブーツでもイケたかな? って。車体が軽いから、停止時に多少フラついても支えられちゃうんですよ。取り回しは抜群に良いですね。なにしろ軽いし、車体を腰で支えやすい。ハンドルの切れ角も大きいから、取り回し性はホント良い。日常のアシとして使うには、かなりポイント高いですね。
中野 そうなんだよね。元々レースのために生まれたバイクなんだけど、日常使いでもいいんだよね。手軽に気楽に走らせられる。ジーパンのノリで使い倒したい。
平嶋 エンジンのパワーはどう感じました? 排気量が250ccフルサイズじゃないし、どうなんだろう? って思ってたんですけど、私的には力不足を感じませんでした。

軽快で自由自在に振り回せる異質なバンク感覚が楽しい!
ーー平嶋夏海
中野 大型バイクと一緒に走ろうってなったら少し厳しいけど、排気量なりに十分なパワー感はあるよね。それよりパワー特性の良さに驚いたな。ものすごくフラットだから、パワーバンドとか一切意識せずに走れちゃう。排気量が小さいから、もっと高回転でパワーを絞り出すタイプのエンジンかと思っていたので意外だったね。
平嶋 扱いやすいですよね。あ、排気音が大きくないですか? うるさいってことはないんですけど、走っている時に耳に響くんです。
中野 周りで聞いていると、そんなに大音量ってことはないよ。サイレンサー出口がライダーに近いから、そう感じるんじゃないかな?
平嶋 あ、なるほど。これだけ排気音がしっかりしているなら“絶対マフラー替える派”の中野さんも、純正品で満足ですね(笑)。

中野 いや、ソレとコレとは話が違う。やっぱり替えたいかな。
平嶋 カスタムしたいだけじゃないですか(笑)。
中野 様式美としてね(笑)。それはともかく、純正マフラーはかなり作り込まれているんだと思うな。音もいいけど、超絶フラットなエンジン特性に貢献しているはず。フロントパイプの取り回しとか、スゴいよね。考え抜いて管長を稼ぎ出した、って感じのレイアウトだもん。
平嶋 エキゾーストパイプの長さって、そんなに大事なんですか?
中野 大事。マフラーの容量は、性能にダイレクトに関わってくるよ。
平嶋 でも、替えたいと(笑)。
中野 まあ、ソレは(笑)。レースなら性能最優先だけど、カスタムはそれだけじゃないからね。で、モタード経験が少ないという平嶋さんだけど、走らせてみてどうだった?
平嶋 面白かったです。コーナリングが異質ですよね。マシンをバンクさせる時、高かった頭の位置がグーっと下がる。それが新しい感覚でした。それとタイヤの接地面が、身体の中心からアウト側に離れているのが感じられるんです。新鮮でしたね。
中野 オンロードスポーツと比べると着座位置が高い、スーパーモタードの車体ならではだね。今日は、残念ながらウエットコンディションでしょ? こういう条件では、頭の位置が高くて視界が広いことのメリットも感じられたんじゃないかな?
平嶋 そうかもしれませんね。周囲を見渡せるので安心感があるかも。
中野 あ、言っておきたいことあった。ABSの優秀さ。路面状況悪いし、チェックのためにガツンとリアブレーキを踏んでみたら、介入の仕方が絶妙。ただしスライドの練習をするなら、ABSのキャンセルができると良かったかな。KLX230はキャンセルできるっていうし。
平嶋 やっぱり、練習用バイクとして意識しちゃうんですね。
中野 スーパーモタードとして、ちゃんと成立しているからね。スーパーモタードって、昔はユーザーが造るバイクだったの。装着可能なホイールを探して、加工して……って。でも、キッチリ設計されたわけじゃないから、やっぱりバランスに難があった。それを、メーカーが造ってくれている。有難いことです。
KAWASAKI KLX230SM






SPECFICATIONS | KAWASAKI KLX230SM |
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エンジン | 空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ |
総排気量 | 232cc |
ボア×ストローク | 67.0×66.0mm |
圧縮比 | 9.4:1 |
最高出力 | 18ps/8000rpm |
最大トルク | 1.9kgf・m/6400rpm |
変速機 | 6段 |
クラッチ | 湿式多板 |
フレーム | セミダブルクレードル |
キャスター/トレール | 24.9° / 77mm |
サスペンション | F=φ37mmテレスコピック倒立フォーク R=ニューユニトラック(スプリングプリロード調整可能) |
ブレーキ | F=φ300mmシングルディスク+2ポットアキシャルマウントキャリパー R=φ220mmシングルディスク+片押し1ポットキャリパー |
タイヤサイズ | F=110/70-17 R=120/70-17 |
全長×全幅×全高 | 2035×845×1125mm |
ホイールベース | 1365mm |
シート高 | 840mm |
車両重量 | 137kg |
燃料タンク容量 | 7.6L |
価格 | 61万6000円 |