
ライディングの質を高める逸品【スライダー|基礎知識】
愛車をより自分に合ったマシンにするために、さまざまなカスタムパーツが販売されている。ここではライディングスキル向上に役立つ、厳選された逸品たちをご紹介しよう。
PHOTO/S.MAYUMI, K.MASUKAWA TEXT/T.TAMIYA,T.YAMASHITA
基礎知識①:路面を滑って削られながら転倒の衝撃を吸収する
レース由来だが、近年はストリートユーザーにも広く認知されているのがスライダー。車体の各部に装着しておくことで、転倒時の衝撃を受け流し、他の部品が削れるのを抑止し、車体が空中に舞うような状態を避けるべく、地面をきれいに滑走しやすくするプロテクションパーツだ。
転倒の仕方は選べないため、必ず狙いどおりになるとは限らないし、スリップダウン時に車体が滑りすぎて衝突被害などにつながる可能性もあるとはいえ、装着してあるほうが転倒時の車体損傷を軽減できる傾向にある。立ちゴケ時に、カウル類などのキズつきを防いでくれた事例も多い。
基礎知識②:小さくても優れたプロテクション性能を発揮
スライダーの本体(地面に触れる部分)には、ジュラコンと呼ばれるポリアセタール樹脂(POM)が使われることが多い。ジュラコンはエンジニアリングプラスチックのひとつで、金属に近い硬度で耐摩耗性に優れる一方、自己潤滑性があり摩擦係数が低いという特徴を持ち、小さくても大きな効果を発揮する。
ちなみに、製造メーカーや適合車種、形状や装着する場所などにより、スライダーの価格にはかなりの差がある。例えば、コーン型の一般的なフレームスライダーなら左右で2万円前後、アクスルスライダーなら1〜2万円程度、スタンドフックやハンドルバーエンドを兼ねた製品には1万円以下の設定も多い。転倒によるパーツ破損の出費を考えたら、「保険」として十分納得できる。



基礎知識③:定番はフレームとアクスルだが近年はバリエーションが増加
スライダー装着位置でメジャーなのはエンジンサイド。そのまま「エンジンスライダー」と呼ばれる場合もあるが、同時にすぐそばのフレームも守ることから「フレームスライダー」の名称を持つことも多い。エンジンのフレームマウントボルトに共締めする構造か、ケースカバー部に装着する製品が一般的だ。
同じく装着例が多いのは、前後ホイールのアクスル部。転倒時に意外と破損しやすく、ここが削れるとホイールを取り外すのも困難になるからだ。中空のアクスルシャフトに細いシャフトを貫通させて、左右をつなぐように装着するタイプが多い。
さらに、「ハンドルバーエンドスライダー」や「スタンドフックスライダー」のように、本来は他の役割を持つパーツにスライダーとしての機能を付加したアイテムもある。
エンジンのクラッチカバーやジェネレーターカバーに被せる「二次カバー」は、滑らせる機能や衝撃を受け流す効果に加えて、滑走や衝撃でケースに穴が開いてエンジンオイルが漏れるのを防ぐ目的も担う。





基礎知識④:レース規則によってはエンジンカバーが必須の場合も
ロードレースでは、転倒時にケースカバーが破損してエンジンオイルが漏れ、新たな転倒者が発生したり、レース進行が遅延したりするのを抑止するため、エンジン各部に二次カバーを装着することが義務付けられるケースも増えてきた。
装着するべき二次カバーの仕様は、MotoGPでもSBKでも全日本ロードレース選手権でも、ルールブックに明記されている。例えば全日本JSB1000クラスでは、転倒時に地面と接触する恐れのある、オイルを保持するすべてのエンジンケースやカバーに対して、2mm厚以上の複合材(カーボンかケブラー製)か4mm厚以上のアルミ合金製を用いたカバー、またはFIM公認製品のカバーを、強固な接着剤またはボルトで確実に装着するよう規定されている。

基礎知識⑤:デザイン性にこだわった製品はドレスアップ効果も高い
パイプ製エンジンガードに代表される、車体を転倒からガードする製品の装着は、アドベンチャー系なら話は別だが、ロードスポーツのカテゴリーにおいてはカッコ悪いと思われがち。しかしスライダーはレーシングアイテムとして認知されているため、むしろカッコいいドレスアップパーツにもなる。
しかも近年の市販製品は、本体を切削加工やレタリングなどでスタイリッシュに仕上げてあったり、アルミ合金製のベース部に美しいアルマイト処理が施されていたりと、プロテクションパーツとしての機能を保ちつつ、その多くが車体装着時のルックスにもこだわって設計されている。スライダーは、美しく愛車を彩り、いざというときは身を削って献身的に守ってくれるのだ。





