
英国の名車が現代に蘇る!スピードツイン1200/RSの違いと魅力
英国を代表するモーターサイクルブランドの老舗、トライアンフから「新型スピードツイン1200/RS」がデビュー。スペイン・マヨルカ島で開催された国際メディア試乗会からケニー佐川がレポートする。
伝説の名車をオマージュしたボンネビル系最強モデル
スピードツインは1937年当時、世界最速を誇ったスポーツバイクだった。その不朽の名車のネーミングを冠した新生スピードツインが登場したのが2019年。ボンネビル系で最も高性能な「スラクストンR」をベースに開発された〝カスタムロードスター〟として現代に蘇った。そして今回さらに熟成を重ねスタイリングと走りのパフォーマンスを磨いた最新モデルとして誕生したのが「スピードツイン1200」である。よりスポーツ性能を高めた「スピードツイン1200RS」が新たにタイプ設定されたこともトピックだ。

必要十分な装備の1200は気軽に乗ってファン・トゥ・ライドを楽しめるスポーツネイキッド。エンジンはRSと共通で従来モデルからアップグレードした
エンジンは従来からの水冷並列2気筒1200cc SOHC8バルブをベースに大幅なアップデートにより最高出力は+5psとなる105psを達成。エンジンケースも軽量化されている。大きく進化したのは足回りで、基本仕様の1200では前後マルゾッキ製サスペンション(リア側はサブタンク付き)とフロントブレーキにトライアンフ製4ピストンラジアルキャリパー付きのダブルディスクを装備。一方のRSはフロントにマルゾッキ製、リアにオーリンズ製のそれぞれ全調整式サスペンションが与えられ、ブレーキにはブレンボ製4Pラジアルキャリパーを装備。クイックシフターを採用しハイグリップタイヤを履くなどスポーツ性能に踏み込んだ仕様になっている。
トルク弾ける現代的な走りRSのキャラ分けも明確だ
まずは1200から試乗。タンクまわりがスリムになり全体的にスタイルも洗練され、ライポジも従来型に比べてよりハンドルが高くリラックスできる印象だ。跨るとサスペンションは比較的ソフトで初期の沈み込みが大きく、シートも前方が絞り込まれていて足着きも良い。正真正銘の英国製バーチカルツインが奏でる重厚で弾けるサウンドはそれだけで最高。クラッチは軽くシフトも節度感があり発進もスムーズ。洗練されたこうした操作系の感触ひとつひとつに現代のバイクであることを実感する。スロットルのツキは穏やかで、コーナーの途中で車体が寝ている状態からでも躊躇なく開けていけるのでストレスがない。とはいえ、1200ccの排気量が生み出すトルクはモリモリ。3000rpmも回していれば270度クランクの小気味良い鼓動とともに何速からでも豪快な加速が得られる。従来との違いが出てくるのが高回転での伸びしろ。ピークが500rpm高くなったおかげで、ワンギアで長く引っ張れるためギアチェンジに余裕がある。僅かな違いではあるが従来型では「上がもう少し欲しいな」と思った記憶があり、そこを上手く料理してくれた感じだ。
大柄に見えてホイールベースは1413mm、車重216kgと意外にもコンパクトで軽い。ほぼミドルクラスと同等レベルだ。おまけにキャスター角やトレールなどの車体ディメンションも走りに徹した数値が与えられている。そこにトルクフルな出力特性となれば「走りの良さ」は想像どおり。1・2Lの大型バイクとは思えない軽快さでヒラヒラとワインディングを切り返していく。エンジンを回さずとも低い回転域でも分厚いトルクで路面を蹴って曲がってくれるし、新型ラジアルキャリパーが与えられたブレーキは強力かつ扱いやすくコーナー進入での微妙な速度コントロールもしやすかった。リアタイヤが160サイズとこのクラスにしては細めなことも軽快なフットワークに寄与している。

スポーツ寄りに振り切ったRSは手応えのあるハンドリングと剛性感のある足まわりが特徴。アグレッシブなコーナリングや高速セクションでも盤石の安定感だ
続いてRSだが、これが別物といっていいほど違ってびっくり。ハンドルは低くバックステップのライポジからして攻めのスタイル。前後フルアジャスタブルのサスペンションは完全なスポーツ設定で、しっかり荷重をかけて仕事をさせるタイプだ。ブレンボの最新ラジアルブレーキやメッツラーのレーステックRRなどスーパースポーツ並みの強靭な足回りを見て最初はやりすぎと思ったが、実際に一日ワインディングでいい汗をかいてみて目指す方向性の違いがはっきりと分かった。1200は街乗りからツーリングまで幅広く楽しめるスポーティなネオクラシック。RSは週末のワインディングはもちろん、サーキットも視野に入れた本格的な走りのスポーツモデルなのだ。
スピードツイン1200/RS

トライアンフ伝統のクラシカルな雰囲気を残しつつ現代的なコンポーネンツで構成された新型スピードツイン1200。基本仕様の1200(左)に対し上級版のRS(右)はライポジがよりスポーティに足回りも強化されている。メーカー希望小売価格: 184万9,000円(1200)/222万9,000円(RS)

ヘッドライトはより軽量薄型のケースに収められたDRL(デイタイムランニングライト)装備のフルLEDタイプへとデザインを一新

軽量クランクやピストン高圧縮化、カム形状の見直しなどにより従来比5psアップの最高出力105ps/7750 rpmを発揮。サイドカバーやFIカバーのデザインも一新された

RSにはオーリンズ製の別体式リザーバータンク付き全調整式ツインショックを装備。フロントもマルゾッキ製の全調整タイプ倒立フォークが付く

RS専用にブレンボ製スタイルマ4Pラジアルキャリパー+φ320㎜ダブルフローティングディスクを採用。ホイールは1200と共通で新デザイン

従来の2蓮アナログメーターに代わりTFTディスプレイ内蔵のLCDメーターを新採用。RSは「ロード」「レイン」に加え「スポーツ」モードを搭載する

佐川健太郎
2輪ジャーナリストとして専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務める。交通心理士。バイクブームど真ん中世代!