
【ヤマハ MT-09 Y-AMT/MT-07 Y-AMT】モデルのキャラクターに合わせて最適化されたY-AMTの実力とは?【中野真矢 インプレッション】
ヤマハの「Y-AMT」は、単純にクラッチ・変速操作の自動化を施したミッションではない。先進の新機構を搭載したMT-09 Y-AMTとMT-07 Y-AMTの2モデルを、中野真矢さんがサーキットでインプレッション。その真価を探ってみる。
PHOTO/H.ORIHARA, S.MAYUMI TEXT/K.ASAKURA
取材協力/ヤマハ発動機 70120-090-819
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/
Y-AMTが切り開く新しい走りの世界
今、バイクの世界ではミッションの革命が起きている。その中で注目を集めているのが、ヤマハが開発したY-AMTだ。
ミッション自体は従来のものと近い構造を持つが、クラッチ操作を完全に自動化。クラッチレバーとシフトペダルを持たず、指一本でシフト操作が可能なMTモードに加え、車両に自動変速を任せるATモードも備えている。
四輪ではもはやATミッションがスタンダードとなり、レーシングカーでもクラッチ操作不要のセミオートマチックが一般的になっている。スポーツカーの分野でも、電子制御を介した自動クラッチの優位性は広く認められている。
だがバイクの世界では、現在もMTミッションが主流だ。趣味性の高いバイクでは、MTミッションを操る楽しさが重視されている面も強く、「ATミッションはスポーツライディングには向かない」という認識は、これまで一般的だった。
しかし、ヤマハがY-AMT搭載車として最初に選んだのはMT-09とMT-07。いずれも高い運動性能が多くのライダーから評価されているスポーツネイキッドである。自動クラッチではスポーツできないという認識は、本当に正しいのか。
ここでは中野真矢さんが、2モデルのY-AMT搭載車をサーキットでライディング。その走りの本質に迫ってみたい。
中野真矢さんが語る
中野真矢が語るY-AMT走りの可能性
MT-09 Y-AMTは、スポーツネイキッドMT-09にY-AMTを搭載したモデルだ。まず、Y-AMTのATモードのうち、スタンダードセッティングといえるDモードで走り始めたが、流すペースであれば不満を感じることはない。心地よくシフトアップしてくれるし、減速時のシフトダウンのタイミングも適切である。
ただ、ペースを上げていくと、もっと低いギアを使いたい場面は出てくる。Dモードのシフトタイミングは、アップもダウンも早めの印象があり、加速で引っ張りたい時にシフトアップしてしまったり、減速時にエンジンブレーキが物足りなく感じる場面もあった。
しかし、それはD+モードにすれば、かなり解決する。より高回転域を使うセッティングだからだ。細かいことを言えば、自分の使いたいギアとズレている場面がないわけではないが、そこは走り方の違いもあると思う。
さすがにこのままレースに使えるかと言うと難しいが、サーキットでのスポーツライディングであっても、十分に楽しめるレベルに仕上がっている。Y-AMTが、MT-09の醍醐味であるパワフルな乗り味をスポイルしていることはない。
MTモードでは、やはり最初は左手がクラッチレバーを、左足はシフトペダルを探してしまった。Y-AMT搭載車を走らせるのは初めてではないが、クラッチレスだと頭では理解しているつもりでも、長年かけて身体に染み付いた操作は、なかなか抜けないものだ。もっとも、少し走れば慣れてしまうので心配は不要である。これは僕だけでなく、Y-AMTを体験した人の誰もがそう言っている。



変速フィールでまず感じるのが、クラッチをつなぐタイミングが絶妙なことだ。特にシフトアップは回転のつながりが素晴らしい。クイックシフターを使ったシフトアップでも、どのギア、どの回転域で操作するかによって、回転のつながりに差が出るものだが、Y-AMTのシフトアップは、あらゆる場面で理想的なシフトアップを実現している。これは凄いことだ。理想のシフトチェンジと言えると思う。
MTモードでのシフトチェンジの基本操作は、左ハンドルスイッチ下側にあるシーソー式のシフトレバーで行う。前側の「+」レバーを人差し指で引くとシフトアップ、後側の「-」レバーを押すとシフトダウンとなる。今回、サーキットを走り込むことで、この〝左手シフト〞の可能性の高さを、改めて思い知らされた。
例えば、左コーナーから始まるS字カーブのようなシチュエーション。ギアを落としたくても、すぐに切り返しが来るため、躊躇することがある。だが、Y-AMTの左手シフトであれば、下半身のボディアクションに関係なく、シフト操作を行える。

ペースを上げて攻めていくほどに、スポーツライディングにおけるY-AMTの優位性を感じた。「ひょっとするとレースでも、左手シフトの方が有利かも?」と、走りながらそんな考えが浮かんだほどである。自分も「シフト操作は左足」という概念がこびりついているが、その考えは改めるべきかもしれない。
左手シフト採用には、Y-AMTのように電子制御を介した自動クラッチ化が必須となる。MTミッションが常識であるバイクの世界では、自動クラッチはスポーツライディングには向かない「快適のため」のメカニズムというイメージを持たれがちだ。しかし今回、Y-AMT装着車に乗ってみると、スポーツバイクとして、より速く走れるようになる可能性を感じさせてくれた。
Y-AMTの登場は、スポーツライディングの常識を変えるのかもしれない。左手シフトは、それほど革命的なイノベーションである。シフト操作は、人差し指と親指の2本の指で行うのが基本だが、人差し指だけを使い、レバーを前後に動かすような操作でもシフトチェンジできる。

Y-AMTのシーソー式シフトレバーは電気的なスイッチであるため、そうした操作が可能になっているのだ。僕自身は、そこまで使いこなせてはいないが、指1本でのシフトチェンジを身につければ、スポーツライディングにおいても大きなメリットを得られるのは間違いない。
今回はサーキットでのインプレッションだが、MT-07 Y-AMTはツーリングに使った経験がある。まる2日間、一般道を走らせたが、その時はATモードの快適さを強く感じた。疲労度も明らかに低かったと思う。
ワインディングではMTモードも試してみたが、ATのDモードでも十分楽しめた。サーキットなら、回転域を上まで引っ張ってくれるD+モード一択だが、一般道ならば、むしろDモードが気楽に走れて好印象だった。一般道では周囲への気配りも重要であるし、ATモードの優位性を確認することができた。
2台の個性を引き立てるY-AMTの作り込み
ヤマハの説明では、同じY-AMTでも、MT-09とMT-07ではATの変速プログラムに変化を付けているそうである。ただ、僕自身の感触としては、それぞれに恣意的な演出があると強く感じるところはなかった。逆に言えば、それほどマシンに合わせて自然に仕上げられているのである。
確かに、MT-09 Y-AMTはよりスポーツ寄りであり、トルクが太くてパワフルなエンジンを味わう楽しさが強い、スポーティな乗り味が魅力のバイクである。MT-07 Y-AMTは扱いやすく、「街乗りやツーリングに良いだろう」と感じるキャラクターがある。より万人向けのモデルだと言えるだろう。
だが、そうした性格の違いは、Y-AMTによる演出というよりは、各マシンが持つ本来のキャラクターを、最良の形を目指して研ぎ澄ませていった結果ではないかと考えている。

この2台のベース車は、同じシリーズに属するモデルで、見た目にも共通する部分が多いが、エンジンもフレームも、想定されるユーザー像も違うはずだ。そうした車両の個性に合わせて、まじめに真摯に作り込んでいったことで、Y-AMTのセッティングにも違いが生まれたのではないかと想像する。
走りを演出したのではなく、理想を追求した結果のプログラム。そう考えるのが自然なほど、それぞれの運動性能に対して違和感のない新時代の変速を実現しており、バイクの走りに新しい可能性を見せてくれた。Y-AMTは、ただのサポートデバイスではない。
Y-AMTは自動変速も可能だが、CVTなどとは異なり、ギアを持つミッションが存在し、シフトチェンジ時に「今、ギアが変わった」という感触が乗り手に伝わってくる。そこがいいところだ。「バイクに乗っている」と感じさせてくれる。MT-09 Y-AMTとMT-07 Y-AMTは、ちゃんとスポーツバイクなのである。
(中野真矢)
MT-09 Y-AMT





1:ヘッドライトは上部のスクエアの2灯LED。左右に振り分けられているのはポジションランプ
2:エンジンの主要諸元は、スタンダードのMT-09と共通。外観上Y-AMTを意識させるパーツは少ない。CFアルミダイキャスト技術を用いたフレームは、軽さと剛性バランスを追求
3:φ41mm倒立フォークはプリロードと伸/圧減衰力の調整が可能。ラジアルマウントのブレーキキャリパーは高剛性な1ピースタイプ
4:リアショックユニットは、プリロードと伸側減衰力の調整が可能。前後ホイールは軽量かつ高剛性なスピンフォージドホイールを採用している
MT-07 Y-AMT





1:小型の2灯LEDヘッドライトとポジションランプを備えるコンパクトなフロントフェイスは、MTシリーズのアイデンティティ 2:フレームは高張力鋼管を使用したバックボーン型。エンジンの主要諸元は、スタンダードのMT-07と共通
3:φ41mm倒立フロントフォークは、現行モデルから採用されたもの。ラジアルマウントの4ピストンブレーキキャリパーは、ハイグレードな1ピースタイプを採用
4:リアサスペンションはリンク式モノクロス。ショックユニットにはプリロード調整機能が与えられる。前後ホイールは軽量かつ高剛性なスピンフォージドホイールを採用
| 項目 | MT-09 Y-AMT | MT-07 Y-AMT |
|---|---|---|
| エンジン | 水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブ | 水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ |
| 排気量 | 888cc | 688cc |
| ボア×ストローク | 78.0×62.0mm | 80.0×68.5mm |
| 圧縮比 | 11.5:1 | 11.5:1 |
| 最高出力 | 120ps/10000rpm | 73PS/8750rpm |
| 最大トルク | 9.5kgf・m/7000rpm | 6.9kgf・m/6500rpm |
| ミッション | 6段リターン | 6段リターン |
| クラッチ | 湿式多板 | 湿式多板 |
| フレーム | ダイヤモンド | ダイヤモンド |
| キャスター/トレール | 24°40’/108mm | 24°20’/93mm |
| サスペンション(F) | φ41mmテレスコピック倒立フォーク | φ41mmテレスコピック倒立フォーク |
| サスペンション(R) | リンク式モノショック | リンク式モノショック |
| ブレーキ(F) | 油圧式ダブルディスク+ラジアルマウント4ポットキャリパー | 油圧式ダブルディスク+ラジアルマウント4ポットキャリパー |
| ブレーキ(R) | 油圧式シングルディスク+2ポットキャリパー | 油圧式シングルディスク+2ポットキャリパー |
| タイヤサイズ(F) | 120/70ZR17 | 120/70ZR17 |
| タイヤサイズ(R) | 180/55ZR17 | 180/55ZR17 |
| 全長×全幅×全高 | 2090×820×1145mm | 2065×780×1110mm |
| ホイールベース | 1430mm | 1395mm |
| シート高 | 825mm | 805mm |
| 車両重量 | 196kg | 187kg |
| 燃料タンク容量 | 14ℓ | 13ℓ |
| 価格 | 136万4000円 | 105万6000円 |

