ライディングの質を高める逸品【ブレーキディスク|基礎知識】

愛車をより自分に合ったマシンにするために、さまざまなカスタムパーツが販売されている。ここではライディングスキル向上に役立つ、厳選された逸品たちをご紹介しよう。

PHOTO/K.MASUKAWA TEXT/T.TAMIYA ILLUSTRATIONS/H.TANAKA

基礎知識①:カスタムでは放熱性に優れるフローティングタイプが主流

ディスクブレーキは、パッドとの摩擦により制動力を発揮する仕組み。これにより発生した摩擦熱で、パッドと接するアウターディスクは膨張する。

フローティングディスクは、アウターとインナーのローターをわずかに隙間ができるように結合する構造のこと。熱膨張時の“逃げ”を与え、アウターディスクが冷えていくときの熱歪みを極力抑えられるよう設計されている。

市販車は、ウェーブワッシャーなどにより拘束力を高めた半浮動のセミフローティングが一般的だが、カスタムパーツにはより熱膨張の吸収に優れるフルフローティングタイプも多い。ただしフルフローティングは、インナーやピンなどの摩耗が早くなりがちなので注意したい。

基礎知識②:アウターディスクの素材はステンレスが一般的

公道用の量産二輪車にディスクブレーキが普及した’70年代以降、市販車のアウターディスクやソリッド構造ディスクには、ステンレス素材が使われるのが一般的だ。

’80年代前後のレーサーや一部の外国メーカー製スポーツモデルには、制動力やコントロール性などに優れる鋳鉄製が採用されることもあったが、とにかく錆びやすく、市販車はルックスを優先してステンレスを使い続けてきた。近年はステンレスの品質が向上したため、レーサーでもステンレス製ディスクが主流だ。

基礎知識③:サイズや重量がハンドリングに影響する

基本的に、ブレーキディスクは大径であるほど制動力を発揮する。これは、半径が大きくなれば円周も長くなって放熱性が高まったり、回転軸から遠い場所で作用することで、てこの原理が働いて止めようとする力が強くなるからだ。

しかし大径になれば、当然ながら重量が増える。ディスク単体ではほんの少しでも、回転により発生するジャイロ効果に与える影響は大きな差になり、ハンドリングや路面追従性に対してネガティブに働くことから、’90年代以降はむやみやたらと大径化を進めるような風潮はない。

アウターローターの板厚は、薄いほうが軽くなるが、厚いほうがキャリパーのピストン突出量が減ることから、ブレーキング時の剛性感が増すなどのメリットもある。

ディスクの径や厚みの違いは重量差に直結し、各仕様に長所と短所がある。絶対的な正解は存在せず、トレンドが変化しがちだ。

基礎知識④:国産市販車への採用はホンダCB750フォアから

一般公道用の量産二輪車で油圧式ディスクを初採用したのは、’69年型のホンダCB750フォア。フロントのみに用いられ、シングルピストンのキャリパーをスイングするホルダーで保持する構造で、ディスクはステンレス製だが、ホールやスリットはデザインされていない。

実はそれ以前にも、MVアグスタが600GTでディスクブレーキを採用していたが、こちらは油圧式ではなく機械式。ただし、最初からダブルディスクだった。

ちなみに、ディスクブレーキが一気に普及したのは’70年代初頭からで、その初期はキャリパーがフロントフォーク前側に配置されていた。

基礎知識⑤:かつて存在していた個性派ディスクブレーキ

バイクのディスクブレーキは、半世紀以上の間に少しずつ進化を遂げてきた。その中で、他にはない個性的な構造もいくつか誕生している。

例えばリムオンディスクは、米国ビューエル社のXBシリーズに使われた方式。ホイールリムにディスクを装着することで、大径ディスクのデメリットをなくす狙いがあった。

ホンダが’81年のCBX400Fに初採用したインボードディスクは、ドラムブレーキとディスクブレーキの長所を両立させようとしたもの。ホイールハブ内に鋳鉄製のブレーキディスクがマウントされ、内周側からキャリパーが挟む構造だった。

基礎知識⑥:カスタムしやすいパーツでライテク向上にも役立つ

ブレーキディスクのグレードアップは、コントロール性や制動力の向上が期待でき、純正以上のスムーズかつ安定したブレーキングの実現につながりやすい。近年のスポーツモデルに使われるブレーキディスクも高性能だが、それでもやはり、アフターマーケット製品のほうが放熱性や軽さ、パッドクリーニング性などに優れることのほうが多い。

ハイエンドモデルは高価だが、求めやすい価格帯の製品も豊富。愛車のリフレッシュついでに、ブレーキディスクのカスタムを検討したい。

関連記事一覧