日本人初の快挙「下田 丈」SMXチャンピオン獲得

2023年、2024年SMX250ccシリーズを制したライバルのヘイデン・ディーガンは、下田丈への闘争心を露わにしてアグレッシブに仕掛けてきた。冷静かつスムーズな下田はディーガンのアタックを受けながらも確実にこなし、ついに日本人初となるSMXのタイトルを獲得したのだ

PHOTO/Honda

 AMAプロモトクロス第10戦ユナディラで250クラスを圧倒し、今季3度目の総合優勝を果たした下田丈。250総合ランキングは2位。好調ぶりが伝わり、「今年こそは現在AMA250クラスを席巻しているヘイデン・ディーガンを打ち破ってくれるのではないか」と期待を寄せていた日本人関係者やファンは少なくないだろう。

 迎えた9月6日開幕戦、悪天候の影響でレースプログラムが大幅に変更される状況の中、下田は好スタートを切り2番手まで浮上したところで転倒。追い上げて4位フィニッシュ、リーバイ・キッチンのペナルティにより繰り上げ3位を獲得した。

 9月13日第2戦は体調不良の中、モト1で2位フィニッシュ。モト2でも2位を守り総合優勝、ランキングトップとして、ディーガンに対して10ポイントの差をつけて最終戦へ。

 9月20日ラスベガス、運命のファイナルラウンド。下田はモト1でホールショットを奪い大きな勝利をものにする。追い詰められたディーガンは下田への敵対心を露わにし、言葉や態度でもプレッシャーを与えるが、すでにアメリカモトクロス界250トップとも言える経験豊富な下田は、軽く受け流す余裕を見せていた。

 最後の決戦、モト2で3位に入ればタイトル確定。しかしレースは大荒れ模様となり、下田は8番手まで順位を落としてしまう。その後4番手まで追い上げ、ディーガンがまさかのスローダウン。この時点で下田がトップに立つが、ディーガンは幾度も強引なブロック、Tボーンアタックを行い、ついに両者転倒。ディーガンは肩の負傷でDNF、下田は2位完走を果たして、日本人として初のAMAプロシリーズタイトルを獲得した。

 レース後の海外モトクロスファンの反響は凄まじく、ディーガンの対応や走りには批判が殺到。下田はまさにアメリカンヒーローのような扱いをされて賞賛されるという事態になった。アメリカを代表するトップライダーに対してさえも、卑劣な行いに対しては厳しい目を持つアメリカ人ならではの反応を、まざまざと見せられる状況でもあった。とはいえアグレッシブな戦いはモトクロスならではの醍醐味でもあり、ディーガンの強烈なヒールとしての個性でもある。この先さらに成長した下田とディーガンのバトルにも注目していきたいものだ。

 これで波に乗った下田はモトクロス・オブ・ネイションズでも躍動した。その模様は次のページで展開しよう!

下田 丈
(2002年5月16日生まれ・23歳)

2016年14歳で全米最大のアマチュアMX「ロレッタ・リン スーパーミニ2クラスチャンピオンを獲得。2019年にHonda Factory Connectionでプロデビュー、2020年はAMAスーパークロス250SX東地区でランキング3位、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。2021年にPro Circuit Kawasakiと契約し、日本人初の250SX東地区優勝、ランキング2位に。同年のAMAプロモトクロスでは日本人初の優勝を実現し、ランキング2位へ。この年の全日本近畿大会へのスポット参戦で世界の走りを披露し、話題になった。2024年からホンダファクトリーチーム「Team Honda HRC」に移籍。昨年は全日本関東大会で凱旋参戦、さらに進化した異次元の走りを展開しフィーバーを巻き起こした。

関連記事一覧