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【Thinking Time】⑫EVバイクの普及加速へ

*BikeJIN vol.220(2021年6月号)より抜粋

EVバイク普及に向けたバッテリー交換システムの標準化(共通仕様)が合意された
これにより、国内4社の電動バイクにはまったく同じバッテリーが
使えるようになり、街中のバッテリーステーションで気軽に交換するといった
使い方が現実味を帯びてきた。EVバイクの開発・普及が加速しそうだ!

バッテリーの仕様が決定! EVバイクの開発加速か?

3月26日、国内4メーカーによる「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」が、バッテリー交換システムの標準化(共通仕様)に合意したと発表した。

かつて、個社でEVバイクを開発し、自治体との実証実験などを繰り返してきた各メーカーは、充電時間、航続距離、コストといった大きな課題にぶつかり、開発そのものを停滞させていた。

そこで、2019年4月、EVバイク普及の障壁となっている大きな共通課題を改善するために、協調領域の活動としてコンソーシアムを設立したのだ。充電式乾電池のように規格・仕様が統一された交換式バッテリーと、そのインフラシステムの構想・開発で手を組んだ。2020年9月からは、自工会による交換式バッテリーの利便性や課題を検証するための実証実験「eやんOSAKA」も開始され、現在も継続中だが、予想以上に早く標準化の合意に達したようだ。

これには、各国ほか日本政府や東京都によるカーボンニュートラルに向けた動き、発言なども影響しているかもしれない。今後は、この共通仕様を基に交換式バッテリーの実物が開発、発表されることになるだろう。そこまで行けば、メーカー個社による車両開発や販売が始まり、バッテリーステーションが増えるにつれてEVバイク市場は活況を呈するはずだ。

なお、バッテリーステーションは、街中のコンビニ、学校、駅、駐車場などに設置される予定だ。こうしたシェアリング環境が整えば、EVバイクが電欠する前に充電済みバッテリーと交換でき、すぐにまた走り出せる。また、交換式バッテリーに、カートリッジ等を介することで、キャンプや屋外イベント、さらには災害発生時にも蓄電池として利用するといったマルチユースな構想も描かれている。脱炭素社会を目指す社会において身近な蓄電池としてシェアを拡大できれば、この共通仕様を採用したEVバイクも自ずと販売台数を増やすだろう。また、この共通仕様を海外に展開する構想もあり、日本発の国際規格として世界中の人々の電力利用を支えることもできる。今後のコンソーシアム、自工会の活躍に大いに期待したい。

交換式バッテリーの実証実験 「eやんOSAKA」で検証中

2020年9月から、自工会、大阪府、大阪大学の3者による交換式バッテリーの実証実験「eやんOSAKA」が大阪府北部で行われている。周辺のコンビニや2つのキャンパスにバッテリーステーションが設置され、大阪大学の学生と教員がEVバイクと交換式バッテリーを日々の生活に利用することで、その利便性や課題抽出の検証を行っている

国内4社のEVバイクが共通バッテリーを使用!
電欠を気にせずに走れるインフラ体制へ


交換式バッテリーが、充電式乾電池のように各社のバイクに使えれば、EVバイクの3つの課題「充電時間・航続距離・コスト」を改善できる。コンビニ、駅、郵便局など街中に設置されたバッテリーステーションでの交換を想定しているが、そうしたインフラサービスを誰が主体となって、どう設置を進めていくのかはこれからだ。おそらく、コンビニ等で始められているモバイルバッテリーのシェアリングのようにサブスクリプション(月額いくら)による会員制サービスが展開されるのではないか。

交換式バッテリーはバイク以外にも使える!
街中に多数設置しイベントや災害時にも活用

国内メーカー4社による「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」が標準化(共通仕様)に合意したことの最も大きな可能性が「交換式バッテリーの汎用性」だ。バッテリーシェアリングサービスの対象はEVバイクだけではない。充電・給電器に格納してのバッテリーの二次利用は、現状の発電機のように使え、キャンプやイベント時、さらには災害時にも電化製品や医療機器を動かすための電力として期待されている。マルチユース向けバッテリーとしての普及拡大はEVバイクの普及販売にもつながり、原付一種コミューターの復活の鍵をも握っている。

Writer 田中淳磨(輪)さん

二輪専門誌編集長を務めた後、二輪大手販売店、官庁系コンサル事務所への勤務を経て独立。三ない運動、駐車問題など二輪車利用環境問題のほか若年層施策、EV利活用、地域活性化にも取り組む
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