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タンデム・ロード〜地球一周ふたり旅を夢みて

幼少期、バイクと共に始まった冒険

物⼼つく頃からじーちゃんのカブの荷台に載っていました。

何処に⾏くにもじーちゃんとバイクと⼀緒。

そこから流れる景⾊が僕の初めての冒険の記憶です。

幼少期に⾒た⼊道雲とバイクの景⾊が今でも鮮明に覚えています。「バイク」と「冒険」そんなことが僕の中では密接に繋がっていました。
16歳になりすぐさま免許を取得し、友⼈の家の軒先に眠っていた廃⾞⼨前だったホンダのR&Pを仲間たちと整備しました。それが初めての相棒となりました。

R&Pとはひたすら、思い出の⼭道を⾛り周り、学校が終わるのが待ち遠しかった。授業中はノートの端に、バイクのパラパラ漫画なんかをずっと描いていました。

これまでに乗り継いだバイクはDucatiモンスター(S2R, 1100)、ムルティストラーダ1000、その頃から遠出をするようになり、徐々にキャンプやタンデムを意識し始めました。(現在はWR250R、セローといった、⼭道、林道を⾛れるバイクが中⼼になっています。)

映画の世界と、一人の女性との出会い

⼤⼈になり上京し映画制作の現場で働くようになった僕は、映像のCGの仕事をしていた「あゆみ」と出会いました。インドア派で、⼈⾒知りな⼥⼦です。

彼⼥にはファンタジーの世界を作りたいという夢がありました。激務に追われる現実との葛藤の⽇々。世界中を巡って、本物(リアル)のファンタジー世界を⾒てみたいという気持ちを抱いていました。世界にはきっとそんな場所があるはず・・・。

僕は疲弊する彼⼥をバイクの後ろに無理くり乗せるようになりました。タンデムして⽬前に広がる景⾊にあゆみは只々感動していました。「⼣⽇ってこんな⾊だったんだ・・・」

僕自身はバイクで世界を旅するロードムービーを創りたいという⽬標がありました。その為には「⾃分が旅をしなければ・・・」

お互いが⼈⽣の帰路に⽴っていました、どう⽣きていくのか・・・

そんな互いの⽬的が融合して、バイク1台で地球⼀周の旅に出発した僕たち。その約1年半にもわたるバイク旅の一部始終が今回ドキュメンタリー映画になりました。

冒険家ではない、⼈と関わるのが苦⼿な「あゆみ」が世界中の⼈達に助けられながら地球⼀周を⽬指し、成⻑しようともがく物語です。

映画「タンデム・ロード」では、あゆみの⽬線で物語を描いているので、ここでは僕から⾒たバイク旅のお話をさせて頂ければと思います。

旅の相棒 BMW R1200GSとの出会い

旅をする為に、なんといっても、まず考えたのが、相⽅となるバイクを探さなければなりません。

僕たちがバイクに求めたことは3つありました。

⼀つ⽬は「あゆみ」とのタンデム旅、⼆⼈乗りしやすいバイクであること。
⼆つ⽬がオフロードも⾛れること。(道なきみちを進むイメージだった。)
三つ⽬は荷物を沢⼭積載できること。僕⾃⾝の夢でもあった、バイクで世界を旅する映画を作りたいという想いがありました。そのためには、最低限の映像機材を積み込まなければなりませんでした。
(タンデムしているあゆみには後ろでカメラを回してもらう必要もありました)

バイク中古⾞検索サイトを検索する⽇々の中で6000キロしか⾛っていない2004年式100万円のBMW R1200GSを⼤阪で⾒つけました。

このバイク(GS)はユアンマクレガーが跨り世界⼀周をしたバイクで、僕たちはその映像を教科書のように何度も⾒ていました。

僕たちに新⾞のバイクを選んで買う予算はありません。バイクとの出会いも⼀期⼀会です。

そういった意味で2004年式のGSは僕たちにとって夢の形そのもの。

気づけば、⼤阪⾏きの⾼速バスの切符を⼿にしていました。

僕たちといったら、バイクスキルもなければ、英語だって中学⼀年⽣レベルです。仕事に追われ海外旅⾏すらまともにしたことがありませんでした。

BMWには「BMWモトラッド」なる専⾨ディーラーが世界中に点在するという話も聞いていました。GSの「メンテナンスフリー」という魅⼒的な⾔葉にも魅せられ、バイクにトラブルがあっても⾃分では解決できないので、バイク屋さんに駆け込めば何とかなるだろう、という安易な気持ちがありました。(実際にバイク旅に出発して世界中のモトラッドで助けてもらう事に。珍しく読みが当たった。)

⼤阪のバイク屋さんでGSのプラグ交換や簡単な整備の仕⽅を教わり、⼤阪から東京の⾃宅まで、旅の相棒となったR1200GSで下道を選び帰路につきました。

⼣暮れ時、⽬の前に広がるこの道が東京を越えて、世界と繋がっているのかもと旅が始まったことを感じました。

ドキュメンタリー映画「タンデムロード」2025年6月13日 全国ロードショー

映画監督 滑川将人さん
茨城県の山間で育ち、幼少期より祖父のバイクで自然の中を走る体験を通して「冒険」の感覚を育む。3歳のとき、祖父との遠出中にその死を目の当たりにし、一人で山道を歩いて帰った記憶は、映像表現の原風景となっている。
地元には映画館がなく、図書館のビデオブースで観た『スタンド・バイ・ミー』が映画制作を志すきっかけとなる。上京後、映像業界に入り、映画監督として活動を開始。
バイクとテントを携えた旅をライフワークとし、旅先で出会ったアユミと共に、バイクで世界を巡る旅をスタート。人生と風景が交差する瞬間を、映画を通じて描き続けている。

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