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【カタナ専門ショップ・ユニコーン⑧】オーナーは、どんな部品をストックしておくべきか? 

専門的二輪車の世界には道を突き詰める楽しさあり!
スズキ・カタナシリーズのスペシャリストとして活動する横浜市のユニコーンジャパン
その代表を務める池田隆さんは極めて豊富な経験と知識を持つ世界最高峰の“刀職人”だ

(BikeJINvol.239 2022年11月号より抜粋)

前回予告した、「純正部品はまだメーカーから新品購入できるうちにストックしておいても、まるで損することはない」という話。その理由はいくつかあるのですが、まずひとつは、純正部品は年々値上がりしているからです。

古い話では、かつてGSX1100Sカタナのサイドカバーがまだ5000 ~ 6000円だった時代に、ユニコーンのお客様には「割れる可能性もあるから、予備は持っておきましょう」と推奨していたことがありました。アドバイスに耳を傾けていただいた人たちからはとても感謝されました。というのも数年後、サイドカバーの価格は1万7000円くらいまで上昇したんです。

純正部品の価格は、上がることはあっても下がることはまずありません。部品にもよりますが、毎年3割ずつ価格が上昇しているイメージ。これに関して、メーカーに文句を言っても仕方がありません。固定資産税や保管費用などいろんな経費の絡みもありますし、そもそも責任期間を過ぎてもメーカーが部品を供給してくれることに感謝するべき。まあもっともホンダあたりは、人気がある旧車の部品再販などに力を入れ始めていて、スズキにも追従してほしいところではありますが……。

それはともかく、長く乗るために必要となりそうな純正部品は、どんどん高くなるからこそ早めに確保しておくべきです。 なんて話をすると、「でも結局、使わないかもしれないし……」なんてオーナーもいるのですが、自分がその愛車を手放すまで使わなかったとしても、保有していた部品は売れます。カタナシリーズのような人気絶版車であれば、ストックしていた部品を手放す人が現れることで、助かる人も必ずいます。

ユニコーンジャパンは、カタナの純正パーツに関してかなりの数をストックしていますが、そうは言っても1店舗では限界があります。オーナーが分散して、今後のメンテナンスやレストアで必要になりそうな部品をストックしておけば、いつかどこかで誰かが助かるというわけ。もちろんそれは、自分自身かも。だから相互に部品をストックしておくという気持ちは、旧車オーナーにとって大切なことだと思っています。

それに、先ほども触れたように純正部品の価格は値上がりする一方。廃番ともなれば、ネットオークションなどで恐ろしいほど高騰することも少なくありません。つまり部品のストックは、貯金と同じ。金銭的にも損することはあまりないんです。

では、どんな部品をストックしておくべきか? これはちょっと難しい判断だと思いますが、外装類なら立ちゴケ程度で破損する部品はストックしておく……なんてイメージが妥当でしょう。例えば1100カタナの場合、ジェネレーターカバーは立ちゴケでも割れることがあります。

GSX1100Sカタナのジェネレーターカバーは、写真のようにかなり張り出している。そして車重があるため、ちょっとした立ちゴケでも割れやすい

ちなみにユニコーンジャパンでは、1100カタナのジェネレーターカバーをリプレイスパーツとして製造・販売していますが、これもいつまであるか分かりません。その生産には金型が必要なのですが、金型がダメになれば新たに製作する必要があり、それにはとてもコストがかかります。将来的に需要が減ったときに、それでも金型を起こすか否かというのは難しい問題。もちろんエンドレスに必要とされるような商品なら再生産しますが、なかなかそうはいかないので……。

ユニコーンジャパンが製作しているGSX110Sカタナ用リプレイスパーツの一例。インシュレーターゴムも金型から製作しているが、こちらは純正部品よりも安くて高品質

つまり、どこかのショップがリプレイスパーツの生産に着手したからといって、旧車オーナーはその段階で部品供給に関して安心してはいけないということ。頼りになる部品は、いつまでも存在するとは限らないのです。

ユニコーンジャパンがかつて手がけたGSX1100Sカタナのコンプリート車。部品のストックが潤沢だからこそ、美しくて完調の中古車に仕上げられる
ユニコーンジャパン代表:池田隆さん
85年にスズキ専売店「神戸ユニコーン」を創業し、徐々にカタナシリーズのパーツを開発。94年に神戸から横浜に移転し、自社生産カタナの販売などで注目を集めてきた

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