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【第8回 】アウトドアMONOローグ「カップ」

BikeJIN2023年1月号(Vol.239)掲載

お気に入りのマグカップを持っていきたいのもやまやまだが
割れや欠けを考えると、やはり躊躇してしまう
野外用に作られたカップや器がちゃんとあって
彼らはしっかりその役目を果たしてくれる
「惚れる」に値する道具たちなのである

ストーブとケトルでお湯を沸かしてコーヒーやお茶を飲むにしても、クッカーで作った料理を食べるにしても、必要になるのはカップやボウルなどの器だ。

 家庭で使うような陶器や磁器でできたマグカップやお碗や茶碗は野外では破損や傷の心配もあって、あまりオススメできない。野外用の器たちには、きちんとそれなりの理由があるのだ。

 プラスチック製の優れた野外用食器もたくさんあるのだが、僕がプラスチックの器をあまり使わない理由は油切れが悪いためだ。プラスチックは石油で作られているから親油性が高く、油汚れが落ちにくい。家庭ではお湯と洗剤を使って簡単に汚れを落とせるけれど、キャンプではあまり洗剤を使いたくないのだ。キャンプ場の洗い場の排水がきちんと処されていないことが実は多いからである。お湯の出る洗い場を持つキャンプ場は少ないからなおさらだ。キャンプ場以外の場所でキャンプをする際には、さらに気を使わなくてはいけなくなる。

 さて、野外用のカップで最も有名なものはシェラカップだろう。アメリカの自然保護団体シエラクラブが会員のために配布したものが始まりで、ステンレス製でワイヤーハンドルが付けられている。直接火にかけることもできるから小型のクッカーとしての使用も可能だ。現在はさまざまなメーカーが生産しているが、基本的な形状とサイズは同じなのでスタッキングが可能で、複数のシェラカップをピッタリ重ねて収納できる。耐久性、汎用性、収納性の三拍子揃った逸品だ。

 ロッキーカップはシェラカップの派生型とも言えるモデルで、底の部分の直径が広く取られており、安定性が高くなり容量も多い。満水容量で約US1パイント(473㏄)というのが基本で、これは調理の際のメジャーカップとしての意味もある。とは言ってもアメリカと違って、日本ではパイントを単位として調理する習慣はないのだけれど。

 木製のカップはスタッキングはできないけれど、金属製食器にはない温かみがあって僕は好きだ。保温性断熱性も高い。木製のカップで有名なものでは北欧の伝統的な器で「ククサ」と呼ばれるものがある。独特のフォルムで人気が高く、本来はシラカバのコブから削り出して作られており、塗装はせずに濃い塩水で煮込むことで木の繊維に目止めをするので、使い始めはコーヒーがしょっぱい、使い込むとワインやコーヒーなどの色が染み込むなどの特徴がある。日本のキャンプシーンでも評判になって今ではシラカバ以外の素材で作られたもの、ウレタン塗装が施されたものも多く出回っているが、本物は結構いい値段である。

 削り出しが難しい内側があらかじめ掘り込まれたククサの自作キットもあり、ナイフとサンドペーパーを使ってキャンプで作るのも一興だ。本来ククサはプレゼントとしてあげるもので、自分で自分のためには作らないらしいのだが。

シェラカップとロッキーカップはスタッキング収納が可能。でもこれは増えすぎかも。
左がシエラクラブのオリジナルシェラカップ。右はプリムスのエクスカイザーチタンシェラカップ。現在はさまざまなメーカーがチタン製シェラカップを製造しているが、エクスカイザーが世界初。チタン製の器は軽いだけでなく、金属臭がしないのがいい。
BikeJINのイベントでもらったロゴ入りのステンレス製ロッキーカップ。ハンドルにスプーンなどがかけておける工夫がなされている。
スノーピークのスタッキングマグ雪峰。入れ子式に収納が可能。真空二重構造なので保温性と断熱性が非常に高い。冷めにくいだけでなく、持つ手が熱くならない。
キットを使って自作したり、市販品を自分好みにカスタムできるククサ。濃い色の方は岡山在住の器作家、仁城逸景さんに頼んで漆塗りにしてもらった。竹は節を残して輪切りにするだけで器にできる優れた素材。ただし、カビが生えやすいので使い終わったらしっかり乾燥させる必要がある。

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