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BikeJIN

【Thinking Time】~バイクの今を読み解く~
③埼玉での、三ない運動廃止&交通安全教育

*BikeJIN vol.213(2020年11月号)より抜粋


埼玉県が免許取得者、バイク乗車中の生徒を対象にした交通安全講習を開催している。
学校に隠れて乗っていた子、やんちゃな子にも教育を届けたいという思いは、
検討委員会での白熱した議論から色あせることがない。

三ない運動をやめて交通安全教育へ転換!

埼玉県は教育委員会主催による「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会(2017〜18年)」を経て指導要項を改訂し、三ない運動を撤廃した。保護者同意による学校への届け出制となり、原付に限らずバイクの免許が取得できるようになったが、県主催による安全運転講習への参加を積極的に促している。(秩父エリアだけは以前から条件付きでバイク通学が許可されてきた)。
 

その条件のうちの一つが、年に1回、地域ごとに開催されている交通安全講習に参加することだ。厳密に言うと強制力まではないが、講習会に参加したことは、教育委員会から各学校に報告されることになっており、生徒もそれを分かって参加している。
 こうすることで、講習会の場には、それまで隠れて乗っていたような少しやんちゃな子たちも集まっている。中には不正改造と取られても仕方のないような車両で来場する子もいるが、白バイ隊員らがこと細かにダメ出しをすることで、注意喚起や啓発、警告の場としても機能している。
 

筆者は昨年からこの講習会に足を運んでいるが、参加生徒の多くは、今どきのスマートでおとなしい印象を受ける子供たちだ。集合時間も守るし、講師の話も真面目に聞く。一方で、髪を染め、ピアスを開けているような子たちは講義中に勝手にしゃべり出すなんてこともあったが、教室を出ていくようなことはない。むしろ、そういう子たちに限って講師の質問によく答えるし、心肺蘇生などの体験講習では自ら率先してやりたがるので講習がテンポよく進んでいく。

検討委員会で焦点となったのは、そういうやんちゃな子たちにまで交通安全教育を届けるにはどうしたらよいかということだ。学校に隠して免許を取り、バイクを乗り回しているような子たちをそのままアウトサイダーとして除け者にするわけにはいかない。
 県内の高校生が、年に1人、2人とバイク事故で亡くなっている事実に目をつぶっていいはずがない。彼らも含めて、免許とバイクが必要なすべての子に交通安全教育を届けるためにはどうすべきか。この点について、9回にも及んだ会議の中で排除されなかったことが埼玉県における検討委員会が賞賛されるべき理由のひとつだ。
 

講習会に来ているやんちゃなバイクを見てみれば、検討委員会が出した答えは、今のところ正しかった。今後は、有識者によるモニタリング組織委員会を通して、この取り組みが生徒の意識や行動をどう変えていくのかについて、しっかり追跡して見ていくことになっている。

高校生向け講習会の内容


講習会は、実技、座学を問わず、埼玉県警察本部が全面協力している。冒頭では胸部プロテクターの必要性とヘルメットのあご紐をしっかり締めることの重要性について説明がある。

<実技>
~原チャリからヨンヒャクまで、地域の高校生が運転技能を磨いた~

講習会の内容は、開講式の後の準備体操に続いて、“ブタと燃料”といったバイクの日常点検、乗車姿勢と続き、慣熟走行の後で、ブレーキング、コーナリング、バランス走行といった種目に挑戦していくもの。中には、坂道レムニーのようにあえて危ないことを体験して学ぼうという種目もある

低速千鳥は車体を傾けずにハンドルで曲がる難しい種目。最後までスムーズにクリアできた生徒は数人しかいなかった

定速旋回による限界速度の体験。曲がるための運転技術がひと目で分かる種目だ。オーバーランを体験することで減速の大切さを知る

安全運転大会でも難しいとされる「坂道レムニー」(8の字走行)を設置。坂道でのUターンの危険性を体験してもらうための種目

<座学>
~「バイクに乗ること」とは? 交通事故にも向き合う講習~


教習所の中では埼玉県警察本部による講義を受ける。バイクに乗ることのメリットとデメリット、どういう状況だと事故に遭いやすいのか、事故に遭遇した場合はどう対処しなければならないのかなど実践的だ

救急救命法は教習所の担当職員から教わる。訓練人形を使って心肺蘇生を練習したり、AEDの起動も実際に体験できる内容で、生徒は真剣そのもの

免許は取ったけどバイクには乗っていない、今日は何らかの理由で乗ってこれなかったという生徒は装備品から運転技能までと幅広く扱う座学を受ける

次の記事では、コロナ禍に焦点を当て、通勤・通学といった日常的にバイクを使っている人たちの需要について考える。

Writer 田中淳磨(輪)さん

二輪専門誌編集長を務めた後、二輪大手販売店、官庁系コンサル事務所への勤務を経て独立。三ない運動、駐車問題など二輪車利用環境問題のほか若年層施策、EV利活用、地域活性化にも取り組む
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