[憧れの海外ツーリング]南米バイク放浪記⑬クスコ療養から始まる秘境ルートとケントンの帰還物語

ペルーでまさかの食中毒…からの快復。そして再び動き出す南米横断旅。今回はヒッピーが集う町・ピサックでの自由な日々、アンデス越えで出会った“誰もいない絶景”、そして旅の締めくくりとなるパラグアイへの決意まで、川田さんのリアルなバイク旅が綴られます
BikeJIN2025年4月号 Vol.266掲載
ある場所で出会った奇跡の絶景
みなさんこんにちは。ペルー入国後、体調絶不調の川田です。『黄色ブドウ球菌』という聞き慣れない食中毒により、クスコで一週間程療養する事になりましたが、国際病院で処方された薬の効果か、徐々に体調が回復していきクスコの町を散歩出来るくらいになりました。
さてさて、そろそろこの先の旅程をハッキリさせないといけない時期に差し掛かってきました。行き当たりばったりがモットーの私の旅ですが、この旅の結びを決める時です。いくつかの選択肢がある中、私が決めたルートはペルーを東に走りアンデス山脈を超え、ブラジルを南下してパラグアイを目指すルート。
理由は、私のバイクのブランドである『ケントン』はパラグアイオリジナルのメーカーの為、原則他国での売却が出来ません。売りたければパラグアイまで戻る必要があります。元々、バイバック(バイクを現地で調達・売却する方法)が理想だと思っていたので、ある意味自然な成り行きと言えるでしょう。
さて、私は体調が良くなりクスコを出発。次の町は『ピサック』という、ヒッピーと呼ばれる人々が集まる町です。ある意味世捨て人みたいな人達のコミュニティは、いい意味で常識が通じなく、「あぁ、こんな生き方もあるんだ」と、インスパイアを受ける事もあるので、私は結構好きだったりします。宿で仲良くなったアルゼンチンの子に「そのバイクでどっか連れてよ」と言われ、後ろに乗っけて遊びに行ったり、宿でボケっと一日過ごしてみたり、夜は焚き火のパーティに行ったりと彼らに混じって、ピサックでの生活を満喫する事が出来ました。
2週間程でピサック出発。次の目的地はブラジルとの国境近くの町『プエルト・マルドナド』。標高約5000mの峠越えです。いつもの如く、道草を食いながらチンタラ進んで行きます。山頂の手前に差し掛かった時、ふとマップを見ると近くの山に湖があるようです。
予定には無かったけど、寄ってみる事にして山道を進んで行くと、そこにはとてつもない絶景が待っていました。うっすら雪化粧被るゴリゴリの山肌に、絵の具をそのまま垂らした様なターコイズブルーの湖。しかもその場にいるのは私だけ。一応観光地ではあるようですが、僻地過ぎて一般的な旅行者からは見向きもされないのでしょう。が、私が求めていたものは正にこれ。誰もが知ってる観光地へ行くのも楽しいですが、この様な秘境と呼ばれる場所を探し出し、誰にも邪魔されずその景色を独り占めする。これ以上、バイク旅でアドレナリンが止まらなくなる瞬間はありません。ウユニ塩湖を走った時以上の興奮を覚えました。
こういった感動を味わえるのもあと少しだと考えると、やはり少し寂しさが込み上げてきますね……。
さて、次回はプエルト・マルドナドからブラジル入国までお話し出来たらと思います。またもやトラブルスタートになるんですが……。どうかお楽しみに♪


観光客がごった返す『マチュピチュ』には興味が沸かず、パスしてやってきたピサック。観光客で溢れる事なく、のんびり過ごせた事を考えると、マチュピチュを飛ばしてピサックに来たのは英断だったと言える

ボリビアへは日本人が年間に滞在出来る90日を既に使い果たした為入国出来ず、一度走ったアルゼンチン北部を再び走るのは嫌だった。その結果、この様なルートに