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その時銘品は生まれた(Vol.2)

ライダー同士で通話したり、音楽やナビ音声を聞ける
インカム(インターカム)は今では当たり前の装備
中でもサイン・ハウスの「B+COM(ビーコム)」は
日本メーカー初のブルートゥースインカムであり、大ヒット
商品でもある。しかし発売当初は革新的すぎて……

インカム? ペアリング? 製品の説明が大変だった!

「当時の代表はバイクで営業に出かけていたのですが、画板を首から下げてそこにナビを置いていたんです(笑)。もっと便利に使いたいと思い立ち、2006年にナビ用のマウントを開発しました。

そして今度は〝走りながらナビの音声が聞けたり電話に出られたら、もっと便利になる〞と考え、08年に初代ビーコムのSB203が誕生したんです」と語るのは、サイン・ハウス広報の川村優子さんだ。

 08年当時は、初代iPhoneこそ存在したが、スマホは一般的ではない時代。そもそも「インターコム」「ブルートゥース(BT)」「ペアリング」などの単語も浸透していない。

そんな中、日本メーカー初のBTインカムであるビーコムが発売されたのだから、いかに時代を先取りしていたか分かる。

初代のSB203は、通話距離100m、通話時間は4時間で、マイクと本体が一体式。ベースも分離できなかった。ユーザーの声を拾って進化を重ね、現行のSB6Xは右頁の通り圧倒的な性能と使い勝手を誇る! しかし、

「当時はお客様にどんな商品なのか伝えるのが難しかったですね」

 開発では「バイク用として使える性能」に苦労した。人の声は拾うが他の音を拾わないマイクや、直感で操作できるボタン配置、厚手グローブでもきちんと操作できるスイッチなどなど……。

 社員はほぼ全員がライダーで、開発も兼務している。テストを重ねることで、最新版にまで継続される3ボタンと配置が決定した。

 発売後、初の国産インカムとして話題になり、アマチュア無線を搭載していたライダーに人気が出たものの、普及には程遠かった。

09年、さまざまな意見を反映したSB213がデビュー。特筆すべきは「アップデート機能」だ。今では当たり前だが、業界では初。

「電子製品は出せば終わりじゃない」という社員の意見を採り入れさまざまな機種のペアリングなどに柔軟に対応することが狙いだった。

徐々に売れ出し、「バイクに乗って話せるのはこんなに便利なんだ!」と感銘を受ける人が続出してきた。

 11年にはデータ転送速度や通話距離を大幅に向上したS B 2 1 3EVO、そして13年には爆発的ヒットとなるSB4Xが登場した。

「防滴から防水設計となり、チェーン接続で4人同時通話が可能になったのが大きかったです」

4Xでインカムを初めて買う人も増えた。以降は、音楽を聞きながら喋れる「聴きトーク」を採用した。SB5Xが15年に、次世代通話方式のB+LINKで簡単にグループ通話できる現行のSB6Xが17年にリリース。

一方でシンプルな機能を求める声に応え、6Xの基本機能を抑えつつ、控えめな価格としたONEを20年に追加。

 今ではインカムの代表格として認知されるビーコムだが、ヒットの理由をどう分析しているのか

「初代からずっとこだわってきた〝音質〞でしょうか。単純な音の良さではなく、バイクで走った状態できちんと会話が成り立つのかを大事にしています」

 確かにビーコムは音質も良く、走行風で会話が聞こえないといったトラブルも聞かない。

 またサポート体制も大きい。ビーコムでは説明書がていねいで、最近ではユーチューブでの使い方を解説する動画の製作にも力を入れている。日本の企業による日本人向けの心配りがうれしい。

 だが、それ以上に「一番大きいのは用品店さんの力かと思います」と川村さん。「いくら私達がいいといっても製品は売れません。用品店さんが使って、面白いと思っていただいたことが大きい」

 そしてビーコムの特色である、フェイスプレートと呼ばれる着せ替えカバーは、初代から販売され続けている。「5〜6色あるので、正直売れない色もあるのですが、やめないのは、〝バイクって楽しいよね〞という遊び心をお客様にも持ってほしいから。

バイクの色と一緒だったら嬉しいじゃないですか(笑)。それに自信がある製品なので電子パーツとはいえ、愛着を持ってほしいんです」。

 このように深いバイク愛と製品にかける情熱が溢れている。ビーコムがヒットした理由はさまざまにあるが、これこそが逸品に成長した理由では、と筆者は想像する。

BikeJIN 2022年1月号 Vol.227掲載

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