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ハーレー和尚のバイク説法「韋駄天(いだてん)」

*2023年3月号から抜粋

バイク寺として親しまれる大阪府能勢町にある「妙見宗総本山 本瀧寺」の執事長。40歳の時に大型二輪免許を取得。ショベルに乗るハーレー和尚として、バイク講話など交通安全普及に努める

本瀧寺のシュウケンです。お正月はどのように過ごされたでしょうか。オセチやお雑煮など食べ過ぎてはいないでしょうか。お正月のオセチやお雑煮、ツーリング先で食べる現地の美味しい食べ物。この食べるという行為は、人が生きる上で欠かせない、とても大切なことです。最近ではSNSなどでもたくさんのお店の美味しそうな料理の写真を見かけます。これらの美味しそうな食べ物の写真を見ているだけで、なにか幸せな気分になります。しかし、一方で写真を撮ることに夢中になって、肝心の食べ物にあまり手を付けずに帰る人がごく一部ですがいらっしゃると聞きます。有難いことに当寺のカフェに来られる人の中には、そういった行為は見受けられません。せっかくのご馳走、そのような話を聞くと、少し悲しい気持ちになります。

土日祝など多くのライダーが訪れる境内にあるカフェ「ほんたき寺巣」。ほんたき薬膳カレー(1250円)などの料理が味わえる

足が速い人のことを『韋駄天』と例えることがあります。韋駄天は仏教の守護神の一人で、お釈迦さまが亡くなられた時に、仏舎利(ぶっしゃり※お釈迦様の遺骨)を盗んで逃げた鬼を追いかけて捕まえたと言われます。瞬時に何万㎞も走る俊足から、足が速い=韋駄天と言われるようになりました。じつは皆さんが食事の時に言う『ご馳走様』は、この韋駄天が由来しています。韋駄天はお釈迦様や修行僧のために、方々を駆け巡って食物をかけ集めたとされています。ご馳走様の“馳走”は、「速く走る」という意味で、そこから“ご馳走”は、おもてなしの食事そのもの。そして、食事を用意してくれた方に感謝の意味を込めて、ご馳走様と言うようになったと言われています。諸説ありますが、食べる前の『いただきます』も、命を捧げてくれた動植物などの生き物、またそれらを用意してくれた人への感謝と敬意が込められているのです。

元々ヒンドゥー教の神で、シヴァ神の息子の韋駄天。仏教では仏法と寺院を護る守護神として信仰されている。健脚のご利益や、仏舎利を取り戻した逸話から盗難、火難などの災い除けの神様としても親しまれる。また釈迦や僧侶のために食料をかけ集めたことから、寺院の厨房に祀られることも多いという

『行ってきます』『ただいま』も同じです。皆さんが出かけられる時や帰宅した時に、多くの人は無意識というか、自然に口から出ていると思います。しかし、家族や友人たちはもちろん、ツーリング先で食べる食事を用意してくれる人、安全に安心して走れるために道路などを整備してくれている人。もっと言えば、貴方が乗っているバイクを作ってくれた人など、私たちのバイクライフは、多くの人に支えられています。

以前、私の知り合いが、このようなことを言っていました。「感謝して食事をするようになってから、今まで以上に食べ物を美味しく感じるようになりました」。 出発や帰宅の時、周りに家族や友人たちがいなくても構いません。心の中でつぶやくだけでも大大丈夫です。感謝を込めて『行ってきます』、そして『ただいま』。今まで以上にバイクを楽しく感じるようになるかもしれません。


合掌

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