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Honda PCX ELECTRICのシェアリングサービスの舞台が宮古島になったわけとは……

ホンダが3月6日から、PCX ELECTRICを使用したシェアリングサービスを開始しました。

内容は、ホンダがソフトバンクと連携し、パーソナルモビリティーのレンタル事業である「宮古カレン(沖縄県 宮古島市)」にPCX ELECTRICを提供し、その車両でカレン宮古がレンタルサービスを行うというものです。

貸し出される車両にはソフトバンクの移動体通信網に接続する通信ユニットが搭載されていて、車両の位置情報やバッテリ―残量などの各種利用状況がクラウドに送信され、リアルタイムで情報の収集・分析といった車両管理が行われます。

このシェアリンサービスの詳細については、宮古カレンのウェブサイトを参照していただくことにして、ホンダが昨年11月末のPCX ELECTRIC発表時に表明していたPCX ELECTRICを使用したシェアリングサービスの実証実験場所になぜ宮古島を選んだかを考えてみます。

電動スクーターのキモはバッテリー容量。もしバッテリー残量がゼロになったら……

ホンダが満を持して発表・発売したPCX ELECTRICは、ご存知のように一般ユーザーへの販売はなく、あくまでも官公庁や個人事業主を含む法人向けのリース販売という形態が取られています。この形態を採用した大きな理由は、電動スクーターのキモであるバッテリー(ホンダでの呼称はモバイルパワーパックで、1台につき2個搭載しています)の容量、つまりフル充電状態で何km走行可能かということで、PCX ELECTRICは約41~50kmと発表されています。

50kmも走るのなら十分、実用に耐えられるように思いますが、一般公道には渋滞や急な坂道などさまざまなシチュエーションが待ち構えています。また、ライダーの運転操作も千差万別で、いわゆる燃費のいい走りをする人と、燃費の悪い乗り方をする人もいます。

ですから、あと10km走行可能とインジケーターに表示されていても、そこから想定外のシチュエーションを走ることになって、10kmに満たないポイントでバッテリー切れになることも十分考えられるのです。

ガソリンスタンドというインフラが整備されている従来のスクーターなら、多少押してでも給油できる場所まで到達できるかもしれませんが、専用バッテリーを搭載するPCX ELECTRICのような電動スクーターはそうはいきません。バッテリー切れはかなり深刻な問題で、充電できる場所が見つかったとしても、PCX ELECTRICの場合はバッテリー容量ゼロの状態から満充電までは約6時間。ガソリンスタンドで数分で給油ができるこれまでのスクーターとはまったく異なるのです。このあたりの事情は、TV東京で放映中の「出川哲郎の充電させてもらえませんか?」をご覧になったことがある方ならお分かりでしょう。

 

開発テストで想定した以上の使い方をされる可能性もあるわけです

つまり、開発段階であらゆるテストを繰り返して市販化を実用化したにしても、一般道、そして一般ライダーが相手ではテストには現れなかった想定外の事態がPCX ELECTRICを含む電動スクーターを待ち受けているといっても過言ではないのです。ですから、使用用途やルート、使う人もさまざまで、官公庁や企業などのビジネスユースとは違い使用状況も管理できない一般ユーザーに販売するのは時期尚早という判断になっているわけです。

上記の理由などから、ホンダは今回のシェアリングサービスの実証実験場所として宮古島という離島を選択したのでしょう。

小さな離島ならバッテリー交換場所も設置しやすく、走行データも取得しやすい

移動範囲の限られている離島なら、フル充電状態のバッテリーに交換できる場所を各所に設ければ、バッテリー切れで走行不能になる可能性はかなり低減されますし、貸出側はトラブルの可能性が低い状態で安心して走行状況のデータ取得が行えます。そしてホンダは、ここで得られたデータをもとに、電動スクーターの開発をさらに推し進めていくことが可能になるというわけです。

累計販売台数が10万台以上という、電動スクーターで先行している台湾のgogoroというメーカーがあります(現在、石垣島でPCX ELECTRICと同様のシェアリングサービスを実施中)。gogoroの成功の背景には、国土の狭い台湾だから1回の移動距離も少なく、さらにはバッテリーの交換場所や充電場所といった充電インフラを整備しやすいという事情があります。

つまり、電気自動車も同じですが、電気を蓄えたバッテリーでモーターを駆動させる電動車は、常に充電インフラとセットでユーザーに提供できなければ真の実用化とは言えないのです。

車体が大きくて、多少重くなってもそれほどの支障がなく大量のバッテリーが搭載できるクルマに対し、車体が小さく、車両重量が走行性能にダイレクトに響いてしまうバイクの場合は、バッテリーの大きさ・重さと容量=走行距離はずっとシビアな問題です。なので、gogoroもPCX ELECTRICも、容量が少なくなったバッテリーを充電ステーションにある満充電状態のバッテリーと交換するという手法を採用したわけです。

東西6km、南北4.3kmという狭い宮古島のような場所だから、電動スクーターの実証実験が行いやすいのだ

PCX ELECTRICに2個搭載されるモバイルパワーパックは、専用充電器で4時間で満充電される

石垣島でレンタルシェアサービスを行っているgogoroの充電ステーション。太陽光発電パネルを備えるところもある

2019年中にホンダはPCX ELECTRICのシェアリングサービスを首都圏でも開始する予定

ホンダは、宮古島に続いて、今年中には首都圏でもPCX ELECTRICのシェアリングサービスを行う予定だと発表しました。また、一般ユーザーを対象にしたPCX ELECTRICのモニター募集も現在、行われています。

いよいよ身近になりそうな電動スクーター/バイクについては、今後も折に触れてレポートしたいと思います。

Nom エイ出版社バイク誌プロデューサー/ジャンケン魔人

BikeJIN、RIDERS CLUB、DUCATI Magazine、BMW BOXER Journal(現BMW Motorrad Journal)などエイ出版社発行のバイク誌の編集長を歴任。現在は、趣味誌を中心にエイ出版社発行の媒体を統括